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10 Y(カネカ)鐘淵化学工業 のカネクロール400の供給に当たっての危険性の警告状況と油症被害への対応
(1)カネクロール400をXに供給するに当たっての危険性の警告状況 Yは、1954年に日本で最初に「カネクロール」という商品名でPCBの製造を 開始し、1957年ころから熱媒体用途の製品として生産・販売を拡充していった。 しかし、PCBの毒性については、労働科学研究所の野村茂元熊本大学医学部公衆 衛生学講座教授が、PCBの動物実験により、極めて激しい中性脂肪変性を起こして 死に至ることや、PCBが皮膚疾患を起こすこと、また、それにとどまらず、PCB が皮膚を通じて体内に入り込み、肺、腎臓、副腎に一定の変化を起こすことを究明し、 このような研究成果を労働科学研究所発行の「労働科学」1949年11月10日号 に発表していた。また、同人は、1953年ころ、科学工業協会安全衛生委員会に提 出した「有害な科学物質一覧表」にPCBを挙げ、その中でPCBを体内に取り込む と肝臓障害や塩素ニキビが起きることを指摘していた。 カネカは、日本で他の企業に先立ってPCBの生産を開始したものであるが、PCBを 食品の熱媒体用として製品化するに当たり、それが人体に危険を及ぼすおそれの高い 分野であるにもかかわらず、独自に動物実験を行ってその毒性の程度や生体に対する 有害性を確かめたり、又は他の研究機関に調査を委託したりするなどしてその安全性 を確認したという事実は認められない。 また、カネカがXにカネクロール400を販売するに当たって、PCBの危険性につい
て周知徹底を図っていたという事実も認められない。Yのカネクロール400のカタ ログには、「カネクロールは塩素化合物として若干の毒性をもっていますが、実用上ほ とんど問題となりません」「皮膚に付着した時は石鹸洗剤で洗って下さい。もし付着し た液がとれ難い時は、普通の火傷の手当で結構です。」「カネクロールの大量の蒸気に 長時間曝露され、吸気することは有害です。カネクロールの触媒装置は普通密閉型で、 作業員がカネクロールの蒸気に触れる機会はほとんどなく、全く安全であります。」と いった記載がなされている程度であった。 (2)油症被害への対応
前記のとおり、1987年3月20日、最高裁において、原告とYとの間で、上告 審係属中の二つの事件に下級審継続中の全ての訴訟の原告が利害関係人として参加し た全訴訟一括和解方式による和解が成立した。 最高裁の和解成立時までに、Yは合計約86億円を支払っていた。その内訳は、① 一連のカネミ油症事件に関する訴訟の仮払仮処分、下級審の判決に基づく仮執行によ る約77億円、②1978年7月の確認書に基づく660人の未訴訟油症被害者への 見舞金8億5800万円である。 カネミ油症事件に関するYの支払総額は約105億円となっている。なお、仮執行 の金額が見舞金を超えている場合で、本来Yに対して返還されるべき金額は和解条項 に基づく計算上約48億円となっているが、返還はされていない。 他方、カネカが和解後に認定された油症被害者に対し、和解した者と同様に支払措置を 講じたという事実は認められない。
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