「愛に生きる」

愛をメッセージにした物語

「愛に生きる」後編

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 「あとがき」

 小説「愛に生きる」を最後までご愛読いただき心から感謝を申し上げます。

この物語のテーマは「愛」ですが、読者の方から、まだ「愛」について何も語っていないぞと、お叱り

の声も聞こえてきそうな気もしますが、もしそうであれば、読者の皆様に素直にお詫びを申しあげます。
   
 さて、物語の中の登場人物に、ひときわ異彩を放った菊江のことを、もう少し書き加えてもよかったの

では、という思いもありましたが、ここでは夫婦の愛だけに焦点をあてることにしました。菊江のこと

は、また別の短編か何か他の形で発表ができればいいなと思っているところです。

 それとも、またいつの日か「愛に生きる」の続編を書く意欲が、沸々と湧いてくるようなことがありま

したら、またその時はブログの中で続編として登場させたいと思います。その時を楽しみにしていただけ

れ ば幸いにおもいます。

 読者の皆様には、拙文にかくも長きに亘っておつき合い下さったことに、心よりお礼を申し上げて筆を

おくことにします。                                                                                                                                                                          筆者 eijirou
















 

  

 人は生まれ出た生活環境によって、幸、不幸が左右すると言われているが、決して肯定も否定もしな

い。かりに生まれ育った家庭環境が良かったとしても、後年、その人の生き方が粗末であったら、愛の無

い渇いた家庭環境が現出されるであろう。


またその反対に栄治のように、けっして家庭環境が決して良いとはいえない中で育ち、またその後も、決

して生きやすい人生が待っているわけでもなかったが、美子という良き配偶者を得、その後の紆余曲折を

のりこえ、『美子をどうしたら喜ばせることができるか』という一課だけを、変わることなく守り通した

ことで、幸福の道程へと、大きくカーブを描き、運命を変えていくことが出来たのではないだろうか。

 
 人は長い人生の中で、幾多の荒波に巻き込まれるかもしれない。それでも、幸福も不幸も自らの生き方

しだいで、如何ようにも運命を変えていける可能性があるということ。また、創りだしていくことが可能

であるということを、たえず希望をもって、生きぬいていくことが大切だと思う。

 
 筆者自身、栄治とさほど変わらぬ人生を生きてきたが、文学を生きる糧として、また道標にすること

で、『愛に生きる』という炎を、心の中にいつも絶やさずに、灯しつづけてこられたのではないか、と、

そう作者は信じているが、さて読者のみなさんはどう思われるであろうか。           完

 

 
 それからの栄治は、『美子に悲しい思いを二度とさせない』という考えを、積極的にもう一段進めて、

『どうしたら美子を喜ばせることができるか』という風に、考え方を発展させていった。具体的には、美

子は大変な肩凝り性だったこともあり、あんまやマッサージを大層喜んだのである。そこで栄治は、就寝

前のくつろいだ時間になると、率先してマッサージをしてあげることにしていた。

 
 そんなある夜のこと、栄治は美子の肩こりをほぐしている自分の手を眺めて、つくづく思うのだった。

 
 ほんの数年前まで、美子に対して暴力をふるっていた同じ手が、今は美子を喜ばすために使っている。

 
 同じ手が、かくも違う手に生まれ変わるものなのだと、感慨深げに手を眺めるのだった。こうして栄治

は美子の喜ぶ顔を見ることができるようになっていた。

 
 マッサージといえば、栄治が思い出すエピソードがある。それはとある日のこと、仕事でクタクタに疲

れて家路についた栄治が、――そうだ、きょうは、美子にたのんで、肩揉みをしてもらおうと思い、その

時を楽しみにしていた。すると、その前に美子のほうから、

「あぁ、何だかきょうはいつもより肩が張っているわ、お父さんちょっとお願いできますか」と言いなが

ら、自分で自分の肩を揉む仕草をしたので、栄治は自分の方から「ちょっと肩を揉んでくれないか」とは

言いだせなくなり、その言葉をグッと飲み込んで、美子のマッサージを優先したのだった。

 
 いつものようにマッサージが終わると、美子が、「あぁ、何て気持ちがいいのでしょう、お父さんいつ

も有り難う」と言って、ニッコリと微笑むのだった。そんな嬉しそうな笑顔を見ると、栄治までつい嬉し

くなって、自分の肩こりのことなど、どこかへ吹き飛んでしまいそうなほど、喜びと幸福感で満たされる

のだった。


 その時、栄治は気づいたのである。そうだ、愛とは求めるものではなく、与えることなのだと。与える

という行為の中に、愛という限り無い力が生まれてくるのだということに。                                                                                                        つづく

 

 それから穏やかな歳月が二年ほど経ったころ、長男の正太が三歳の誕生日を迎えて間もなく、栄治たち

夫婦に女の子が授かった。ふたりにとって第二子誕生は相当な喜びとなった。

 
 二人目ということもあり、栄治の中にも漸く父親らしい感情が育ちつつあった。長男を育てていた時

は、膝に子どもを抱いていても、なんとも落ちつきがなく、まだ親として子どもとどう向き合い、どう接

してよいか分からないほどだった。

 
 それは、栄治自身が小さい時に、親から愛情をもって、しっかりと抱かれた経験がないことが原因だろ

うと思われる。それでも、新たに親子が触れ合う中で、しっかりと愛情を育てていく努力がなされれ

ば、自然と情愛も芽生え、良い親子関係が醸成されていくのであろう。栄治の子どもを見る眼を見ても、

徐々にではあるが、優しい眼差しが増えているように見えた。

 
 そして栄治は、美子に対して、懺悔の気持ちを胸に秘め、この幾年かを努めてきたことで、幾らかの贖

罪を果たしたであろう。と、そんな思いが頭をもたげてきた頃に、DVというものは、そんな生やさしい

ものではないということを、あらためて思い知る事となる。

 
 それは、ある日のこと、何気なく美子の後ろにあるものを取ろうとして手を伸ばした時に、美子が反射

的に手で頭を庇う動作をしたのだった。それを見た栄治は「ハッ」と、驚き、

――自分のしてきた事が、この二年程のことで許してもらおうと考えているのは、とんでもない思い違い

であると悟ることとなった。


 美子への贖罪は、たった今始まったばかりなのだ。これから一生かけて償う覚悟をもたなければならな

い、――そう栄治は強く心に刻みつけ、二度と甘い考えを起こさないようにと、自分を戒めるのだった。                                

                                            つづく

 

 
 「夜明け」

 
 ふりだし塾が解散してから数年もすると、A市周辺に居住していた栄治の仲間たちも、一人減り二人減

りしてどんどん寂しくなっていった。小川の率いていた小さな共同体も、一時、花の栽培を手がけていた

が、どんなに丹精を込めて栽培した草花も、市場で流通する商品になるまでには、なかなかハードルも高

く、容易ではなかった。


 せっかく苦心して育てた草花を、花の競り市場に出品しても、まったく買い手がつかない有様で、持ち

帰ることの方が多かった。かりに買い手がついたとしても、それは捨て値同然の値段にしかならなくて、

いつも肩を落として帰るしかなかった。それでも小川は二年間は歯を食いしばって踏ん張っていた。


だが、資金が底をつくようになってくると、やむなく花の栽培に見切りをつけざるをえなくなってきた。

それに伴なうように共同体のほうも、刀折れ矢尽きるようにして、とうとう解散するに至ってしまったの

だ。

 
 気がつくと、A市に在住している者は、栄治たちを除くと他には誰もいなくなってしまった。まさに

『兵(うわもの)どもが夢のあと』となっていた。元の仲間たちは、それぞれの新天地を求めて、全国各

地へと散らばって行き、ある者は九州へ、またある者は北海道へと渡って行った。栄治の高校時代からの

親友の浜野も、信州の松本へと安住の地を求めて転出していった。

 
 後に残された栄治たち夫婦は、仲間と別れることに一抹の寂しさがあったが、そのころの栄治は、夜が

明けるように新しく生まれ変わって、美子との愛情を一から築くことに全力をそそいでいたので、悲しい

はずの仲間との別離も、一過性のものに終わらせることができたようだった。

 
 また栄治は、理想の共同体とは、何よりも夫婦という最小の単位が基本ではないだろうか、ということ

に思いが至り、それには先ず夫婦生活を、こころ豊かに大切に育てていくことが大事だと考えるようにな

り、

――そうだ、これからはいつ如何なるときも、愛情いっぱいに相手を思いやり、何より二度とふたたび、

美子に悲しい想いだけはさせることのないように・・・栄治はそう心につよく誓っていた。これは簡単な

ようだが、ついうっかりすると人間は惰性に流されて忘れてしまう。そして、知らず知らずのうちに相手

の人格まで軽視してしまうのではないだろうか。栄治はそうならないようにと、しっかり心の奥深くに留

めておこうと思うのだった。                               つづく

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