「愛に生きる」

愛をメッセージにした物語

「愛に生きる」前編

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皆さん、こんにちは、いよいよ「愛に生きる」後編を再開したいと思います。週明けの15日にUP出

来ればと願っているところです。

 さて、今月の6日〜8日の3日間にわたり、埼玉県の比企郡武蔵嵐山にあります、国立女性会館に於き

まして、良識派作家と位置づけられている、芹沢光治良氏の「生誕111年」の催しがありましたので行

ってきました。

 全国から、大勢のファンが集い大変な盛況ぶりでした。芹沢文学は一般にはあまり知られてはいない

ようですが、全国に熱心な愛読者があり、北海道から、九州までの各地で読書会が催されているという、

ちょっと稀有な作家です。代表作に「人間の運命」があり、日本人では最初に大河小説を手がけた作家

(エクリバン)として名を残しています。

 2日目には、音楽に造詣の深かった芹沢氏のお孫さん二人によるバイオリンコンサートや、作家の加賀

乙彦氏による芹沢氏のもう一つの代表作「パリに死す」についての文芸講演会などもあり、盛り沢山な内

容でした。こうして、どっぷりと文学に浸った数日をすごしましたので、何となく気が漲っています。

 この気持ちを持続させたまま、再開できればと思っていますので、ご期待ください!         
        
                                         Eijirou

 
 
 あとがき

 
 栄治少年の十五歳の春までを書き終えたところで、前編にあたる『少年編』として一旦筆を置くことに

しました。それは親の介護と仕事に専念するためです。これまで愛読してくださった皆様には、心より深

く感謝を申し上げます。また、いずれ復帰をして、主題になっている「愛」を後編の『青春編』で描けら

れたらと願っています。描ききれるかどうかは、著者のこれからの精進にかかっております。

 
 さて、この小説を書こうと思いたちましたのは、人生の晩年を迎えるにあたって、それまで漠然と思い

えがいていた「愛」というものが、ようやく象(かたち)として見えだしてきたので、それを何とか文章

にして残しておきたいと思ったからです。


 しかし、いざ書きはじめてみると、愛にもいろいろあるのだなあと、今さらながら気づかされました。

イエス・キリストやマザーテレサや仏陀などの、あの崇高な絶対的(普遍的)な愛から、本作品にも登場

する、菊江のような偏愛まで入れると実にたくさんの愛があることを知りました。その他にも、愛と名の

つくものを数えあげたらいっぱい出てきました。慈愛、博愛、親愛、友愛、溺愛、渇愛、情愛、盲愛、自

己愛、愛憎、人類愛(人間愛)家族愛、等など、少しあげただけでもこんなにもあったのです。


 先にあげたイエス・キリストのような、まったく利害のない他人に、愛を与えるという高次元の絶対愛

などは、なかなか普通一般の凡人には真似ようとしても真似の出来るものではないと思いますが、みなさ

んはいかが思われますか、そういった意味で本書の題名も、「愛に生きる」でなく「栄治の愛に生きる」

としなくてはいけないのかもしれません・・・が、あまり難しく考えると先に進まなくなるといけません

ので、これからもこの流れのまま続けていこうと思っています。   


 栄治の少年時代は、山あり谷ありの起伏の激しい人生でありましたが、はたして『後編』での栄治はど

のように人生を転回していくのでしょうか、読者の期待を裏切ることのないよう、これから先の物語りに

も、ますます磨きをかけて面白いものにしていきたいと願っている今日このごろです。               
                                       
                                        筆者 eijirou

愛に生きる 50

 

 そんな中、卒業の日が近づいているにも拘らず、いまだ栄治一人だけが、就職先が決まらずにいた。そ

れは、行政の窓口を通さずに直接施設に入所したことが、ここに来て弊害となって出てきたようだ。就職

先を斡旋するサポートがどこからも受けられないのだ。こうした場合、本来は個人で探さなくてはならな

いのだが、それはとても困難なことで、やはりこの時も山田が必死になって奔走し、以前に卒業生がお世

話になった事のある所へ無理に頼み込んで、ようやくの思いでやっと就職口が確保出来たのであった。

 しかし、栄治はそんな山田指導員の額に汗したことも知らぬまま、自立を目指し未来を夢見て勇躍飛び

立とうとしていた。今年も職員たちのおかげで十二名のうち男子七名は、県内や大阪府内にある中小企業

や個人経営の職場へ就労することが決まった。

 そして男子全員が夜は定時制の高校に通うという選択をしたことで、その受験にも備えなければならな

かった。女子は五名の内一名は裕福な家庭に女中(お手伝い)として働きに行く他は、やはり、中小企業

や小さな商店に就職することが決まっていた。

 そんな慌ただしい中、卒業生たちは残り少なくなってきた施設での生活のこと。また、これまでの楽し

かった事、辛かった事、一つひとつを胸に繰りひろげて感傷にひたりながら回想するのだった。

 栄治にとっては二年足らずの短い生活であったが、他では味わえぬ貴重な体験ができたことに秘かに感

謝していた。もし、あのまま施設に入らず、弟とふたりで町の中をふらついていたら、今頃はどうなって

いただろうか。そう思うとたまらなく背筋が寒くなってくるのをおぼえた。

『養児院』に一人残ることになった弟の幸三は、小学生最後の年を迎えようとしていた。成績のほうも今

ではクラスで中の上ぐらいに位置し、これからも、ますます学力が伸びていきそうな勢いであった。そん

な幸三を、栄治は頼もしく眺めていた。幸三自身も今が一番の勉強の伸び盛りで、学ぶことの楽しさを感

じながら、元気溌剌と生きていた。              
                                 「愛に生きる」 前編  了

愛に生きる 49

 

 「旅立ち」

 中学校の卒業の時期が近づいてくると、養児院も、急にあわただしくなってくる。それは、義務教育を

終えると子どもたちは施設を出て行かなくてはならないので、その子どもの身元の引き受け先が必要にな

ってくるからだった。保護者捜しと併せて、子どもたちの就職先の確保や、あるいは進学の世話などで、

職員はそれは超多忙の日々が続くのである。

 中でも居所が分からない親捜しが困難を極めるのだが、それまで八方手を尽くしてどう捜しても分から

なかった親が、どういう訳か卒業間じかになってくると、ヒョイと名乗り出てくることがよくあった。こ

の現象を、既に卒業した先輩たちの間では噂になっていて、それは、しばしば職員たちの口の端々にも上

っていたことだった。

 栄治の一級上の先輩が昨年の卒業前に、後輩たちに次のように語っていた。

「みんなよう聞くんや、卒業が近づいて来ると、名乗り出てくる親がいるけど、それは決してお前たちに

会いたくて出てくるばかりではないんや、お前らを働かせ、その給料の上前をはねて、お前らを食いもの

にする為に、出て来る親もおるんや、それまでどんなに捜しても出て来んかったのが、お金を稼げる頃に

なると途端に姿を現すのがその証拠や、これまで幾人もの先輩が言うてきたことやから、間違いないや

ろ。そやからお前らもそんな親と判ったら、気をつけなあかんぞ・・・」と言うものである。こう言っ

た噂は山田も聞いて知っていた。

 なんとおぞましい親がいるのだろうか。子どもの養育を果たさないばかりか、わが子を食いものにする

とは、まるで人間の皮を着た鬼か悪魔のようである。 

 毎年、申し送りのように聞いてよく判っているにも拘らず、親の愛に飢えている子どもたちは、それで

も親が出現してくると、嬉々としてその後にくっ付いて行ってしまうのだ。 

 それは、子どもの時に、しっかりと愛情を受けて育っていないと、心に満たされない想いが募り、いつ

までも愛を求めて彷徨するのを本能的に恐れているからではないだろうか、これは理屈ではなく、子が一

途に親を求めるのは、生きるための術で、我が身を守るための、やむにやまれぬ行為なのだ。人は愛され

るという体験を得ることで、求める愛から、与える愛へと階段を上るように成長していくのではないだろ

うか・・・山田はぼんやりとそんな感慨にとらわれるのだった。

 今年卒業して行く十二名の若者たちの未来に、どの様な運命が待ち受けていようとも、常に温かい太陽

の日差しが、誰へだてなく降りそそぐようにと祈らずにはおられなかった。          つづく

愛に生きる 48

 

 あろうことか、その残されていた靴跡とは、養児院の、それも中学生だけが履いている特殊な運動靴で

あることが判り、警察は児童相談所とも密に連携を取りながら、慎重に調査を進めた。その結果、間もな

く顔に引っかき傷の残る少年Mを割り出し、やがて少年Mの自供から事件の実行犯と断定され、少年Mの

身柄を保護したのだった。そして、少年法に基づいて教護院(のちに少年自立支援施設と名称が変更)へ

と、速やかに送致された。

 養児院では、少年Mが、何ゆえこんな取り返しのつかない大事件を犯したのか、まさに驚天動地で、誰

もが、まるで自分が犯した罪のように感じて、職員もしばらく仕事が手につかなかった。

とくに当時、赴任してまだ日も浅い山田指導員は、たいへん動揺し児童教育の困難さを肌で痛感した。 

養児院の子ども達ともこれからどう接すればいいのか、また、どう指導していけばいいのか、いろいろ頭

を悩まし、そして考えた。山田はこの事件を、M少年が母親への思慕を渇望するあまり、女性に対し歪ん

だかたちで噴出したのではないかと疑ったのだった。

 また、愛に飢え、愛を渇望するあまりの、衝動的な犯行ではなかったろうかとも考えた。やはり、親の

愛を知らないで育った子どもは、どこかに欠陥を宿しているのだろうか、それとも、本人の資質だけの問

題なのだろうか、まだ若い山田には、到てい答えの出せる筈もなかった。精神医学の専門家の胸を叩い

て、問い質してみたいと心底思うのだった。

 しかし、何びとといえ少年Mの心の深層まで

は解かるはずもないことである。山田にとってこの事件は、いつまでも澱のように心の底に重く残ったこ

とはたしかだ。それでも、自分の本分は、厳しい中にも愛情をもって子どもたちに接すること、そして、

いつも本気で真剣に子どもたちと向き合うということを、この事件をとおして学んだことだった―

栄治も後に先輩たちからこの事件の話を聞き、いつまでも心に残り、印象として強く刻み込まれた。

                                            つづく

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