林誠司 俳句オデッセイ

「本当に凄い俳句」〜水原秋桜子、長谷川かな女、長谷川秋子作品追加

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柿  井上弘美

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(京都嵯峨野 落柿舎)


てのひらに残つてゐたる柿の冷     井上弘美  


「汀」主宰。
1953年京都府生まれ。
句集『あをぞら』(俳人協会新人賞)、『汀』ほか。

女性俳人には、石田波郷系というか、波郷を敬愛する優秀な人が多い。
大石悦子さんや石田郷子さんとか…。
井上さんもその一人。
句の姿もすっきりしていて、それでいて鋭い。
句の姿がすっきりしている…、というのは、韻文精神を大事にした波郷のよき影響だろう。
主宰誌「汀」創刊5周年を機に、今、仲間と共に、波郷の全句集から、一句一句精読している、という。

掲句。
京都を基盤にしている作者を思えば、この「柿」が実に魅力的である。
嵯峨野の柿かな、などと考える。
嵯峨野には、芭蕉が晩年を過ごした「落柿舎」がある。
(まあ、そこまで考える必要はないが…。)

柿は体を冷やす、という。
有名なエピソードで、真偽は定かではないが、関ケ原で敗れ、囚われの身となった石田三成が、処刑の直前、水を所望した、という。
監視の者が、

水はないが、柿がある。

と言うと、三成は、

柿は、体を冷やし、お腹を壊すことがあるから、いらない。

と答えた。
監視の者は、

これから死ぬ人間が体調を気にしてどうする!

と笑った。
それに対し、

志ある者は眼前に死を控えていても、最期の瞬間まで体を大切にし、一生懸命生きるべきなのだ。

と答えた、という。

柿は表面も冷たい。
てのひらに残っている「柿の冷」はどこか生きるものの悲しみへと通じているように思える。

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