林誠司 俳句オデッセイ

「本当に凄い俳句」〜水原秋桜子、長谷川かな女、長谷川秋子作品追加

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【原 文】
尾花沢に清風(せいふう)という者を尋(たず)ぬ。
かれは富める者なれども、志(こころざし)卑(いや)しからず。
都にもをりをり通ひて、さすがに旅の情をも知りたれば、日ごろとどめて、長途(ちょうと)のいたはり、さまざまにもてなしはべる

涼しさをわが宿にしてねまるなり
這ひ出でよ飼屋(かいや)が下の蟾(ひき)の声
眉掃きを俤(おもかげ)にして紅粉(べに)の花
蚕(こ)飼ひする人は古代の姿かな    曽良

【意 訳】
尾花沢で清風という者を訪ねる。
彼は大変なお金持ちではあるが、金持ちにありがちな心の卑しい者ではない。
都にもたびたび出かけているので、旅の情もわきまえていて、幾日もわれわれをひき留め、長旅の労のねぎらいにと、あれこれもてなしてくれる。

涼しさをわが宿にしてねまるなり
―ご厚意に甘え、みちのく尾花沢の涼風渡る座敷を、わが旅の宿とし、ゆ
っくり過ごさせていただきます。

這ひ出でよ飼屋が下の蟾の声
―蚕飼小屋の床下で、『万葉集』の歌(※)さながらに蟾蜍が鳴いている
。蟾蜍よ、そんな暗い所で鳴いていないで、ここへ這い出しておいで。
※参考〜『万葉集』
朝霞鹿火屋が下に鳴くかはづ声だに聞かばあれ恋ひめやも
朝霞香火屋が下の鳴きかはづしのひつつありと告げむ児もがも

眉掃きを俤にして紅粉の花
―女性の眉掃きに使う刷毛にも見える、みちのくの紅粉の花よ。いかにも
、都の美しい女性たちの唇を彩る花にふさわしい。

蚕飼ひする人は古代の姿かな        曽良
―この地の人々が、フグミ(「もんぺ」に似たズボン)を履いて蚕飼をす
る姿は、質朴清楚で、古代の蚕飼もきっとこんな感じだったのだろう、と思えてくる。


○尾花沢…山形県尾花沢市
○清風…紅花問屋主人。芭蕉とは貞享二年(1685)、江戸で知り合っ
て以来、交友があった。
      
   

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