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http://mbs.jp/voice/special/200505/0512_1.shtml「運転士にも…“JRタコ足営業”とは」 2005/05/12 放送
JR西日本の社員らがやゆをこめて「タコ足営業」と呼ぶ営業活動の実態に迫ります。
国鉄の分割民営化から18年、JRは収益を上げるため、レジャー全般に事業の手を広げる一方ですが、VOICEの取材で、現場の運転士たちにも課せられているある営業ノルマの存在が浮かびあがってきました。
果たして「タコ足営業」の中身とは?
経営目標の第一に、「安全」よりも「稼ぐ」を掲げているJR西日本大阪支社。
収益重視の掛け声の下で、すべての社員にある使命が課せられました。
「レインボーオペレーション」です。
<大阪支社の運転士>
「レインボーオペレーション…増収活動なんですけども。運転士でも1年間のノルマが決まっていまして、そのノルマを達成するように。切符を買ってもらう努力をしろと…職場の中では『増収、増収』、『増収をしろ』と言われます」
「レインボーオペレーション」=「増収」とは…
新幹線のカルテット切符やパックツアーなど、JRの関連商品を社員自らが販売することを指します。
売り上げ目標は、一人あたり年間30万円前後。
これが事実上のノルマとして運転士らにも課せられているというのです。
ところが…。
<大阪支社運転士>
「あまり人に売れるような商品ではありませんね。自分が行って、嫁さん子どもを連れて行くのが関の山ですね。カニの1泊旅行とか行くんですけど、その時にやっぱり鉢合わせになるのが隣の車掌区であったり、隣の駅の方であったり…1両がJR社員が乗ってるのが多々あります。タコ足以外のものではないですよ、増収なんていうのは」
タコ足。
ノルマを達成するため自腹を切って商品を買うことを、社員たちは自らの足を食べるタコにたとえて、「タコ足営業」とやゆします。
「タコ足」に走るのは、ノルマを達成できなければ、上司から厳しく追及されるためだといいます。
<建交労・藤本健司書記長>
「『どうすんねん、コレ』と。『どうやって埋めてくんねん』と。『お前2月まで目標に10万足らんやないか。あと1ヵ月しかないのに、どうすんねん』と(上司から)詰められますよね」
1年中続けられる「増収活動」。
もちろんあの日も、各地で増収活動が行われていました。
<JR西日本の会見>
「4月25日当日でありますけども、支社長杯のゴルフをしてたと…クラブハウスでテレビを見て知ったわけでありますけども、結果的にはプレーを継続したということであります」
脱線事故当日。
神戸支社の社員19人がゴルフコンペを行っていたことが問題となりました。
このゴルフも、実は、ノルマを達成するため、社員が自腹でJRの商品である「ゴルフパック」を買う「増収」の一環だったのです。
<神戸支社の担当者>
「『駅長おすすめ駅プラン』。というのも、『ゴルフ日帰りエクスプレス』というのがあるんです」
(Q・これはいわゆる増収にあたるものですよね?)
<神戸支社の担当者>
「そうですね、増収にあたるのはあたります」
事故2日後に、大阪支社宮原総合運転所の社員が参加した懇親ゴルフも同じく「増収」。
さらに…
<建交労・藤本健司書記長>
「これ時刻表見てもうたらね、旅館名載ってるでしょ。これJR提携旅館ですわ。この旅館のクーポンっていうのは駅で買えるんですわ。買ったら増収になるんですよ」
事故後に行われた懇親会や送別会も、ほとんどが増収ではないかというのです。
そして奈良・王寺駅。
事故から5日後に決行された「愛知万博日帰りツアー」も、増収のために駅独自で企画したものでした。
<建交労・藤本健司書記長>
「愛知万博ツアーと。実際にはお客さん3名しか参加しなかって、社員が7名参加してますから…」
やはりこれも「タコ足」営業だったのか?
(Q・これってレインボーオペレーションで皆さん行かれた?)
<王寺駅駅員>
「すべて本社広報室になりますので…私どもからお答えすることはできないので…」
(Q・なぜキャンセルしなかった?)
<大阪支社の運転士>
「やはりノルマが何十万とありますので、1つやめた場合、またそこに休みを取って行かないといけないということで、1つでもキャンセルするとノルマが達成できなくなるっていう負担があったと思います」
そればかりか、「増収」はミスをした運転士のペナルティにも盛り込まれているといいます。
<大阪支社の運転士>
「事故起こして(再び)乗るときに、『私は増収目的を何本』、あとは『会社の増収旅行に参加します』と書けと言われるんです。それを言わない限りは乗れないわけです」
大阪支社では、「稼ぐ」を掲げた現支社長になって以降、増収目標が1人年間30万円から40万円に引き上げられました。
行き過ぎた収益重視ではなかったか。
取材を申し込んだのですが…
(Q・去年は30万だったのが10万円上がったのは何か理由があるのですか?)
<大阪支社広報>
「そういう話は全て本社広報の方になりますので…」
JR西日本は「レインボーオペレーションは確かに増収活動だが、ノルマではない」とコメントしています。
死亡した高見隆二郎運転士にももちろん年間30万円の増収は課せられていました。
そして、ふだんから倹約していたようだったと同僚の運転士は話します。
<同僚の運転士>
「いつもね、白いおにぎりを2個持ってくる。それを食べて仕事に行く。『お金貯めてるんだな』と…三角おにぎりをサランラップに包んで2個。それだけしか食べなかったっていうイメージはありますけどね」
収益重視の風土の中、高見運転手はどんな気持ちで運転を続けていたのでしょうか。
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