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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050429-00000052-mai-soci
兵庫県尼崎市のJR福知山線脱線事故では、治療が求められる緊急性に応じて負傷者を選別する「トリアージ」や、阪神大震災で多発した「クラッシュ症候群」を防ぐ治療が、組織的に実施された。過去の教訓を踏まえた災害医療での救命・救助活動が本格的に展開された。
「ドクターカーを派遣してほしい」。災害時の医療体制の調整を担う兵庫県災害医療センター(神戸市)に、尼崎市消防局から要請があったのは、事故から17分後の午前9時35分。既に同センターも派遣準備を始めており、医師、看護師、救命士の3人からなるチームを2隊派遣した。同センターは、現場に近い大規模病院や隣接する大阪府内の病院にも派遣を求め、計10台以上のドクターカーが駆け付けた。
日本赤十字社は独自のネットワークを活用し、兵庫県と大阪府支部の医療隊5チームを派遣。済生会滋賀県病院(滋賀県栗東市)は自主判断で、災害医療の経験がある医師ら5人のチームを正午ごろ送った。
現地に医師が20人以上集まったため、トリアージを3カ所で実施。重症者には赤いタグをつけるが、医師が多かったため、その患者の中からさらに最優先の人を選ぶことが可能になったという。小澤修一・同センター長は「国内の集団災害で、トリアージが相当のレベルで機能したのは初めてではないか」と話す。
重症者の搬送にはヘリコプターも活用された。兵庫県や大阪府などの防災ヘリで、事故当日の25日に10人が集中治療室(ICU)などを備えた病院にピストン輸送された。阪神大震災では発生初日に1人しか運べず、機能不備が批判された。
今回は、震災で注目されたクラッシュ症候群を念頭に置いた治療も展開された。同症候群は、強い圧迫などで心臓障害、急性腎不全などを起こす。破損した車体にはさまれ、救出に時間がかかった負傷者には、水分を多く与えたり点滴を行うなどした。
また、26日未明から早朝にかけて救出された1両目の3人には、済生会滋賀県病院の医師らが、がれきの下に潜り込んで、水を飲ませるなど救出まで懸命の治療を続けた。救急医療の専門家は「現場近くの医療機関は阪神大震災の被災地にあり、その経験からクラッシュ症候群を意識した治療を初期から展開できた」と指摘する。【宇城昇】
【トリアージ】大規模災害が発生した際、医師が現場で負傷者のけがの程度を判別し、治療や後方施設への搬送の優先順位を決めること。米国で、戦争や災害から確立された救急医療の概念。混乱した事故現場で重症者を優先して発見、治療し、生存率を高めるのが狙い。「選別」という意味のフランス語が語源。
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