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星子たちの乗った東北新幹線「はやて」、すごい速さで終点の八戸に到着、そこで、連絡している快速列車「しもきた」に乗り換える。列車は、東北本線経由で大湊線へ入り、一路、北を目指して走っていく。
途中、車窓の左手には陸奥湾が真っ青に澄んだ海面をいっぱいに広げている。かなたにかすんで見えるのは津軽半島、そして、列車のゆくてには下北半島。マサカリみたいなかたちの地形が特徴だよね。その下北半島のこんもりと聳える山並みの中に、目指す恐山がある。
いつものいい恋さがしの一人旅だったら、車窓に広がるみちのくの初秋の景色をじっくりと味わうところだけど、今回はとてもそんな気分じゃない。
デスマドンナという魔女と戦いにいった宙太さん、はたして、無事かしら。デスマドンナは、ほーりゅうの超能力も通じない恐ろしい魔女らしい。いくら、宙太が優秀な刑事でも、歯の立つ相手ではなさそうだ。だから、ほーりゅう、宙太を少しでも手助けしようと、恐山へ向かおうとした。
ほーりゅうが星子たちを襲ったのも、宙太の後を追うのは危険だから、力づくでとめようとしたわけだ。
でも、とめようとしても、星子に通じるはずがない。ほーりゅうにも、それがよくわかったらしい。
「宙太さんは、私たちより半日ほど先に恐山に着いているんでしょ。もしかして、もう、間に合わないんじゃ……」
星子、不安そうにいった。すると、春之助、
「大丈夫よ、星子ちゃん。宙太さんはね、殺されたって死ぬようなオトコじゃないから。たとえ、地球が滅びても、自分だけは、づうづうしく生き延びるわ。きっとね」
なんか、自分にいい聞かせているみたい。ほんとは、春ちゃんもすごく不安なんだ。
ほーりゅうも同じなんだよね、さっきから黙りこくったまま。顔は不安と緊張でこわばっている。
やがて、列車は下北の駅に到着。駅は小さいけど、下北の町は思ったより都会っぽい。早速、レンタカーを借りて、いざ、恐山へ。ハンドルを握る春之助、気持ちがはやるのか、飛ばすことったら。まるでもう、レースみたいだ。
でもって、舗装された山道を登ると、ものの三十分ほどで恐山に着いた。
――死者の霊がさまよう、霊山……恐山……。
夕暮れ時ということもあって、いかにも、そんなおどろおどろしい雰囲気があたりに漂っている。
不気味に静まりかえる湖のほとりには、山肌がむきだしになった斜面が広がり、そこかしこに灯篭や卒塔婆が立ち並び、強い硫黄の匂いがあたり一帯に立ち込めている。
湖の手前には素朴な造りのお寺があって、温泉もあるんだよね。でも、いくら、星子、温泉好きでも、とても入るような気分じゃない。
それでなくても、荒涼とした風景なのに、夕暮れ時とあって、人影もまばらだ。お祭りの時は、大勢の人が参拝にきて、イタコさんの口寄せで、死んだ人の魂を呼んで貰うんだって。
星子、今までは、ただのお祭りの行事のように思っていたけど、どうも、そうじゃないらしい。ほーりゅう、何か感じるのか、緊張した顔であたりへ目を配っている。
ううん、ゴンベエもよ。いつもは大きな顔をしているくせに、今回は怯えたように、リュックの中で体をちじめている。
「ほんとに、気味が悪いわね……」
春之助、ブルッと身震いしながら、いった。
「宙太さん、どこにいるのかしら……ケータイ、かけてみる?」
「だめよっ」
星子、春之助を制した。
「もしかすると、魔女と戦っている最中かもよ。気が散ったりしたら、どうするのっ」
そう、この恐山のどこかで、すでに、戦いがはじまっているのかも……。
星子、焦りと不安の顔で、歩いていった。
と、前方の岩陰に倒れている人影が……ハッとなって近づいて見ると、なんと、宙太じゃないですか。
「ちゅ、宙太さんっ」
星子、転げるように宙太に駆け寄った。
宙太、ぐったりとして、目を閉じたままだ。あとから駆けつけた春之助やほーりゅう、愕然と立ちすくんでいる。
「宙太さん、しっかり! しっかりして!」
星子が懸命に声をかけると、宙太、かすかに目を開いた。
「……星子さん……もう……もう、ダメだ……」
「そんな! しっかりしてよ!」
星子、涙ぐんで、宙太の肩をゆすった。
宙太のいない人生なんて、考えられない。宙太が死んだら、生きていけない。今までずっと宙太に突っ張ってきたけど、宙太なしでは生きていけない星子だった。
「……星子さん、頼みが……」
ふと、宙太、うわごとのようにいった。
「え? なぁに?」
「……僕に、キッスを……」
「えっ」
「……これでもう、君とはお別れだ……最後にキッスを……頼む……」
「……宙太さん……」
星子、あふれる涙をぬぐうと、宙太に顔を近づけた。
(つづく)
追伸 猛暑の八月も、今日で終わり。今日も番外編に付き合ってくれて、有難うござい ます。予定では今月中に終わらせるつもりでしたが、ちょっと、長引いてしまっ たようです。あと一回だけ、付き合ってください。よろしく!
それにしても、宙太との悲しい別れのキッスが待っていたとは、はたして、星子 の運命やいかに……。
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やっと会えたと思ったら宙太さんが!!
星子さんのkissで100人力パワーが出せるかも!!
2007/9/1(土) 午前 6:34 [ con-nature ]
星子さん、二度目になります恐山ですね〜。そこでついに決戦と思いきや、宙太さん〜! クライマックスが気になります〜!!
2007/9/2(日) 午後 10:21