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――あの人が、乙女さんの恋人の茜さん……。
乙女が茫然とした顔で見つめるのも、無理はない。探し求めていた恋人に、こんな所で偶然逢えるなんて。しかも、これから自分が殺そうとする男の奥さんだったなんて……。
運命の神様は気まぐれでイタズラ好きだっていうけど、ここまで、ひどいことをするとは、あんまりじゃないの。
それはともかく、この先、乙女がどうするかだ。いくら殺しが仕事とはいえ、愛する茜の目の前で、その夫を殺せるだろうか。
ううん、出来るわけがない。乙女さんは、そんな冷酷な人じゃない。
星子、祈るように見つめた。
その祈りが通じたのか、乙女、ナイフを振りかざした手を下ろした。
よかった!
星子、ホッとなった。宙太とマサルも、やれやれという顔で、構えた拳銃をホルダーに戻した。
でも、運命の神様は、あくまで、気まぐれだった。
乙女が茫然とした足取りでその場から離れかけた時、丁度、走ってきた幼い子供が乙女にぶつかった。
その瞬間、乙女の手からナイフがはじけとんで、敷石の上に音を立てて落ちると、丁度、立ち去りかけた茜の夫とサングラスの男の近くへ転がった。
「!……」
茜の夫とサングラスの男、キッとなると、乙女に鋭い視線を向けた。
すかさずサングラスの男、茜の夫を背中にかばうと、
「なんだ、貴様!」
と、ドスをきかせた声で叫んだ。
その凄みのある態度を見て、宙太、
「あいつ、プロのボディガードだな」
と、つぶやいた。
「ボディガード?」
「うん、どうやら、雇い主はただの画家じゃない。犯罪組織に関係がありそうだぜ」
「う、うそーっ」
「ボクチャン、だてに刑事やっていないから。この鼻、百万ドルだぜ」
宙太、マジメな顔で鼻をヒクヒクさせた。
星子、またまた、ショック。でも、茫然としている時間はなかった。
乙女、あわてて立ち去ろうとしたけど、その前方に別のボディガードが二人、サッと立ち塞がった。
「一緒にこい!」
二人のガードマン、乙女を挟むようにして両腕を掴んだ。
一瞬、乙女の体がスーッと浮かんだ。と、次の瞬間、強烈な蹴りが二人のわき腹に叩き込まれて、二人はたまらずにその場にうずくまった。
「やるぅ!」
宙太、目を見張った。
星子も、びっくりだ。乙女のきゃしゃな体からは考えられないような強さだった。
乙女、ひらりと体を反転させて、出口の方へ向かいかけた。
と、その背中に、
「待って!」
茜の声が、はじけるように聞こえてきた。
乙女、ハッと立ち止まって振り向いた。
茜が乙女の姿に気づいて、声をかけたのだ。
「涼さん……あんたね! 涼さんっ!」
茜、ふるえ声で叫ぶと、乙女のほうへ走り出した。
だが、すかさず、茜の夫が茜を抱きとめた。
「は、離して!……」
茜、激しくもがいた。
乙女、思わず戻りかけたが、気持ちを振り払うように体を翻した。
そのあとを、ボディガード達が猛然と追い、さらに、マサルもあとを追って走り去った。
「涼さんっ……涼さん……」
茜の泣き叫ぶ声が、虚しく散った。
星子、放心したように、その場に立ちつくしていた。
……涼さん……茜は、乙女のことをそう呼んだ。
乙女の本名は、涼……乙女は、星子の初恋の人、疾風涼だった……。
(つづく)
追記 風邪のほう、治り具合はイマイチですが、ガンバリます! 皆さんも、気候の変化には、くれぐれもご注意くださいね。
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やはり星子さんの初恋の相手でしたか〜! 彼と茜さんの今後も気になるし、彼が何故殺し屋にって所も気になりますネ〜。続きが楽しみです〜♪
まだ体調がいまいちなのですネ〜。ご自愛くださいませ〜!
2007/10/9(火) 午後 10:29
体調気をつけてくださいね。
続き楽しみです♪
2007/10/9(火) 午後 10:45 [ ミミ ]
先生お加減はどうでしょうか?
風邪は万病の元です。くれぐれもご自愛下さい。
お話の続き楽しみにしています。
2007/10/9(火) 午後 11:00 [ ari*ru*97*11*1 ]
続きを拝読できて嬉しいのと、先生のお体が心配なのと両方です!
ご自愛なさってくださいね。
2007/10/9(火) 午後 11:10 [ and*nte**7 ]
涼さん、電車の中で一緒だっただけじゃ星子さんのこと覚えていないかな?
初恋の相手だし複雑だろうけど、星子さん茜さんと涼さんに力を貸してあげて!
先生、今回も盛り上がってますね(^^)。楽しいお話だけでなく、私たちの体調まで気遣ってくださってありがとうございました。
2007/10/10(水) 午前 3:32 [ のりぷこ ]