星子&宙太yyy

ファンの集う癒しの小部屋です。

新星子一人旅「長崎恋旅は魔女特急

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「……」
 星子、唇が震えるのが、自分でもわかる。それほど、涼の顔には凄みがあった。
 でも、じきに、その顔はもとの柔和な涼に戻った。
「ごめん、君をおどかすつもりはなかった。堪忍してくれ」
「涼くん……」
「こんなふうにあっさり謝るようじゃ、やっぱり、俺は殺し屋としては半人前だな」
 涼、自嘲するように、顔をゆがめた。
「半人前って?」
「まだ、一人も殺していないってことさ」
「えっ」
「今までに二度も仕事をしくじってね、今度は三度目の正直、もし、失敗したら、オレの命は……組織の掟だってさ」
「!……」
 星子、ブルッと身震いした。
「どうして……ね、どうして、そんな恐いことを……」
「仕方なかったんだ。親父のことで、仲間に借りがあったし……」
「お父さんのことで?」
「オレの親父、建設会社で計理のサラリーマンやっていたんだ。出世とは縁のない、真面目だけが取り得の、いい親父だった。でも、上司の公金横領の罪を着せられ、その挙句、自殺に見せかけて殺されたんだ!」
 涼、歯噛みしたあと、はなしを続けた。
「ところが、上司は知らん顔で、自分は重役に出世さ。オレ、なんとか、親父の仇を取ってやりたかったけど、顔を知られているし、近づけなかった。そんな或る日、オレのバイク仲間が、代わりにやってやるって……」
「代わりに?」
「オレ、頭に血がのぼっていたし、つい、頼んでしまったんだ。でも、それは、ワナだった……」
「ワナ?」
「うん、奴はオレの仇をうったあとで、自分の仲間になれって。奴は麻薬の密売組織の人間で、裏切り者や邪魔者の始末をする仕事をしていたんだ。もちろん、オレはことわった。でも、いうことをきかないと、オレを殺すって……」
「そんな!」
「オレ、もう、ヤケになっていたし、組織に入ったんだ。でも、さっきいったように、二度も仕事に失敗してさ、今度の仕事が最後の……」
「でも、ターゲットのそばには、茜さんがいたってわけね」
「うん、まさか、あいつの奥さんだっただったなんて……」
 涼、溜息をついた。
「これで、もう、おしまいだな、オレが殺し屋で、しかも、自分の夫を狙っていたんだから……許せるわけがないよな……」
「涼くん……」
 そう、常識で考えれば、そのとおりだ。でも、恋の世界は常識では割り切れない。星子自身が、そんな恋をしてきたことだしね。
「それでも、いいの?」
 星子、涼をみつめた。
「ん?」
「おしまいでいいの、茜さんとのこと? ね、涼くん?」
「……」
「愛しているんでしょ? 好きなんでしょ? ね、答えて!」
「ああ、好きだ、愛しているさ、もちろん!」
 涼の目に、キラッと涙が光った。
「オレ、もしかしたら、茜さんがここへくるんじゃないか……ラストランの『さくら』に乗る約束を思い出して、ここへきてくれるんじゃないかって、そう思って、きてみたんだ……」
 やっぱり、星子の思ったとおりだった。
「でも、そんなこと、有り得ないよ。茜さんが、ここへくるわけが……絶対に、ないさ……絶対に……」
 涼、うなだれると、コートのポケットに手を突っ込み、何やら取り出した。
 二枚の切符だ。
「ラストラン『さくら』の切符さ。東京で買っておいたんだ……二人で乗るためにね」
「!……」
「でも、もう、この切符は使えない。ラストラン『さくら』がこの長崎を発車したのは、二年も前のことだ。今じゃ、ただの紙切れさ。もう、二度と『さくら』は、こないんだ。茜さんも、こないさ……二度と……」
 涼の目から、涙がぽろっと落ちた。その顔を見つめながら、星子、いった。
「ううん、くるわよ!」
「え?」
「茜さん、きっと、ここへくるわ! わたしには、わかるんだから!」
カンというか、恋する女の子のね。茜は、絶対にここへくる、という確信がこみ上げてくる。
「でも……」
 いいかけた涼の顔が、サッとこわばった。
 どうしたんだろう、と、振り向いた星子の前に、ヌッと人影が……宙太、だった。
「!……」




追記  皆様、よい週末をおすごしのことと思います。昨日の「肉体の悪魔」ですけどね、原作はフランスの天才作家ラディゲの処女作、なんと、十七歳の時の作品とか。でも、ラデイゲ自身は、僅か、21歳で亡くなったとか。ま、機会があったら、是非,読んで下さい。内容は、17歳の高校生と人妻の許されない恋が、第一次大戦を背景に展開する……というものです。
 許されない恋! ああ、いいなぁ。もう一度、帰りたい! どこへ帰るかって? 一いち聞かない!
それにしても、二人のはじめてのベッドシーン、最高に美しかった。どんなふうに美しいかって? ぜひ、映画を観て下さい!
 

閉じる コメント(3)

茜さんは絶対来るって思いたいネ〜! あの旦那さんやボディガードに邪魔さえされていなければ…。そして、現れたのは宙太さん! どうしてここがわかったんだろう〜?

2007/10/20(土) 午後 11:18 くにざわゆう

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茜さんじゃなくて宙太さん登場!宙太さんが出てくれるのは嬉しいハズなんですが、これじゃあ涼君と茜さんを逃がしてあげられないじゃないですか(>_<)。
星子さんのパワーでなんとかして〜。
映画のお話、、、先生お勧めと言うからには良い作品なんでしょうね。私にはちょっと勇気のいる題名です(^_^;)。BS2、結構思いがけない映画をやってくれるところ、好きです♪

2007/10/21(日) 午前 0:04 [ のりぷこ ]

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許されない恋ですか・・・。いいですね。実は私結婚しているんですが、以前婚約して破談してしまった人がいるんです。なかなか忘れられなくって。恋ではないと思うのですが、夢なんかにでてきてしまうと・・・・。なんだか・・・。苦しいです。

2007/10/21(日) 午前 3:45 [ ari*ru*97*11*1 ]


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