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「ど、どうなってんだ?」
宙太、やっとのことで、口を開いた。
「ラストランの『さくら』は、今から約三年前の2月28日に長崎を発車したはずだぜ。その列車が、なぜ、今、ここに……なぜなんだ?……」
「……だから、きっと……」
「あ、そうか!」
宙太、ハッと星子を見た。
「時空の迷子、ってわけか」
「ええ」
星子、うなずきながら、二枚の切符を見た。
「この切符が、時空を変えて、『さくら』を呼び寄せたのかも……」
「ん!」
宙太も、のぞきこむように、切符を見た。
「そういえば、さっき、カレ、こんなこといってたな……この切符、『さくら』に、茜さんと二人で乗るために買ったって……」
「そうよ」
「で、茜さんていうのは?……待てよ、グラバー邸で黒木が奥さんを、茜って呼んでいたな……じゃ、あの人のことか!」
「そうよ、涼くんは茜さんと二人きりの世界へいこうと、この切符を……でも、東京から乗った下りの『さくら』の中で、時空の迷子になってしまったの。そして、三年近くにもなって、やっと、ブルトレ『はやぶさ』にはじき出されたのよ」
「!……」
「でも、茜さんは何も知らずに、待ち合わせ場所の教会の前で、涼くんを待ち続けたの……くる日もくる日も……」
星子、話しているうちに、せつなさがこみ上げて、涙ぐんだ。
「でも、やっと、再開できたと思ったら……涼くんは……」
「自分の夫を殺しにきた殺し屋だったってわけか。つらい話だな」
宙太、鼻をすすったあと、腕時計を見た。
「今、四時四十四分か。ラストラン『さくら』が長崎駅を出発したのは、たしか、2月28日の午後4時50分だった……テッチャンのオレの記憶に間違いはないぜ」
たしかに、切符の日付と発車時間は宙太のいうとおりだ。
「ということは、あと六分足らずで、この列車は発車する……」
「!……」
「でも、残念ながら、この切符はもう使えないな。オレが、没収させてもら……」
いいかけた宙太の声が、鈍い音とともに、途切れた。
ウッと膝をついた宙太の背後に、涼がレンガを手に立っている。いつの間にか拾って、宙太の後頭部を殴りつけたらしい。
涼、すかさず、宙太の懐から、拳銃を奪い取って、構えた。
「涼くんっ」
「心配するな、撃ちはしない。俺がこの列車で消えるまで、大人しくしていて欲しいだけさ」
「よせ、無駄なマネするなっ……星子さんっ、切符を破くんだ!」
「えっ」
「早くしろ!」
宙太、痛みに顔をしかめながらいった。
でも、星子としては、ためらってしまう。そう簡単に破けるようなしろものじゃないからだ。すると、涼は拳銃を構えたまま、星子の手から切符を取り上げた。
「この切符、使わせてもらうから」
「涼くん……」
そのあとで、涼、意外な言葉を口にした。
「なぁ、星子さん……もう一枚の方は……君が使わないか?」
「わたしが?……」
涼、星子に切符を差し出した。
「君も時空の迷子で、今の時代にきてしまったんだろう。本当は、懐かしい人たちのところへ帰りたいんじゃないのか?」
「でも……」
「茜さんのことなら、もういいんだ。あきらめたから」
「そんな……」
「ほんとに、もういいんだ。頼むから、君が使ってくれ!」
「涼くん……」
涼、星子の手に切符を握らせた。
そう、この切符があれば、みんなのところへ帰れるんだ。
それに、初恋のカレ、涼くんと二人きりで旅が出来る。もちろん、涼くんの心に入りこめるとは思えない。涼くんの心には、永久に茜さんが住み続けるだろうから。
初恋はもう、終わったんだ。でも、涼くんと二人きりの旅を、つかの間でもいいから、楽しんでみたい……。
星子、ためらいながらも、切符を握り締めた。
と、宙太が、
「ちょ、ちょっと、待った……」
びっくりした顔で叫んだ。
「姫、いや、星子さん、君も時空の迷子っていうか、タイムスリップしてきたのかい?」
「ええ、そうよ……」
「ほ、ほんとかよ!」
宙太、絶句したように、星子を見た。
追記 さらに、さらに、クライマックスに近づいたようです。でも、そう簡単には
イカセマセンぞ! もう少し、楽しませて下さい。
続きは、また、次回ということで。オヤスミ!
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一緒に旅&懐かしい人達の所へ戻るだなんて、涼さんの魅惑的な言葉…断れない気がする〜! どうするんだろう? 星子さん〜!
2007/10/28(日) 午前 6:44