|
エピローグ
――静かだな……。
星子、ぼんやりと、長崎駅の構内広場にたたずんでいた。
静か、といっても、丁度、夕暮れのラッシュ時だし、駅の構内は帰宅する人達や到着した電車から吐き出される人達で、かなりのにぎわいだ。
でも、さっきまでの、ものすごくドラマチックな場面にいた星子には、今の日常的で平和な賑わいは、真空状態の箱の中にいるような感じだった。正気が戻ってきたのは、つい、さっきのことだ。
それにしても、あんな騒ぎがあったはずなのに、星子以外は誰一人、気がついていないなんて。普通だったら、警官隊が殺到するし、マスコミの取材陣や野次馬が押しかけたりして、それこそ、ビッグニュースになっていたところだ。でも、ラストラン『さくら』が出発していったあとも、駅の周辺は、まったく、変わりがなかった。
結局、時空の異変に巻き込まれたのは、星子達だけだった。なぜ、そんなことになったのか、さっぱり、わけがわからない。でも、涼と茜はラストラン『さくら』で旅立ち、星子はもとの時空へ戻れなかった、という事実は、しっかりと星子の心に刻まれた。
やっと現実に戻ったけど、ぽっかりと穴が開いたような気持ちだ。こうやって、立っているのもつらいくらい、疲れが背中から覆いかぶさってくる。
「……どうしようか、これから……ね、ゴンベエ?」
星子、リュックの中のゴンベエに、ぼそっと話しかけた。
でも、ゴンベエ、フニャーと答えたきり、ぼんやりと目を閉じたままだ。ゴンベエも、お疲れ気味らしい。
星子も、心身ともにバテバテ。もう、何もする気が起きない。ほんとは、もとの時空に帰れなくなったんだし、せめて、悲しくて、泣き叫けぶぐらいしてもいいのにね。
だけど、正直いって、もとの時空への思いが、いつの間にか、薄れてきたかも……ラストラン『さくら』が消えたあと、次第にそんな気分になってきたような……。
もしかして、わたし、今の時空を生きるように、体も心も適応しはじめたのかも……昔のことは、夢、長い夢……もう、いい加減に夢からさめなさい、って、ことかも知れない。
そうはいっても、今一つ、吹っ切れない。夢の中に置いて来たものが、あまりにも大事なものばかりだから。
その大事なものが消えてしまうのが、つらい、悲しい……。
星子、しょんぼりと、ため息をついた。
そのとたん、
「ハーイ、ハニィ! おまっとうさーん!」
いきなり、目の前にハンバーガーとコーヒーが差し出された。
ん?……と、振り向くと、宙太がニカッと笑いながら立っている。
「宙太さん……」
「ひと暴れしたんで、おなかすいたろ。ほい、ゴンベエくん、おたくの分もちゃんとあるぜ」
その声に、ゴンベエ、サッとリュックの中から手を出して、ハンバーガーをゲットした。
なによっ、ゴンベエったら、急に元気になって。
でも、星子もお陰様でちょっと元気が出てきたようだ。
「それにしても、オレ、惚れ直したぜ」
「え?」
「ほんとはもとの時空に帰りたいのに、二人の愛のために、チケットを譲ってやる……いやぁ、たいしたもんだよな! 愛の尊さ、愛の価値を知るからこそ出来る自己犠牲だ。まさに、愛の神ミューズの化身だぜ!」
「ちょっとォ!」
「あ、からかっているんじゃないぜ。本気でいってるんだ。キミのような女の子こそ、僕が探し求める理想のヒトさ!」
ほんとに、調子のいいヤツだ。
「でもって、これからは、キミのことを姫とは呼ばない。これからは、もっと、親愛なる思いを込めて、ハニィと呼ばせていただきます!」
「んもぅ、なれなれしいな」
「そ、ボクチャン、なれなれしいの。この先、キミのよきパートナーとして、いつでも、キミを助け、キミを守ることをここに誓う!」
「迷惑よ、それって!」
「その気持ちが、いつか、ボクチャンへの愛に変わる。その日を信じて、尽くさせて頂きます!」
「ったくぅ!」
「もし、なにかあったら、宙太さーん、って、呼んでくれよ。そうしたら、オレ、こういってあらわれるから……ハーイ、ハニィ、おまっとうさーん!」
「ふん、誰が呼ぶもんですか!」
星子、くるっと背中を向けて歩きかけた。
ちょっと、待って。
……ハーイ、ハニィ、おまっとうさーん!……って、以前もよく宙太さんがわたしにいってくれたっけ。
ということは、今の宙太さん、ほとんど、ううん、まったく、変わらない、同じ宙太さんなのかも……そう、きっと、そうなんだ!
わたし、もとの時空に、ううん、もとの時空と今の時空は、一緒になったのよ。ただ、振り出しに戻っただけ。
そうよ、はじめからやり直せばいいんだ。
ということは、これから旅を続けていけば、みんなに会える!
マサルさんとはもう会ったし、この先、春ちゃんや右京さん、星丸くんや宙美ちゃん、それに、圭一さん達にも……そうよ、いつか、きっと、会えるかも!
それだけじゃない、もっと、新しい出会いだってあるかも知れない。過去だけじゃなくて、未来へつながる愛や恋が、きっと!
よォし! もう一度、はじめから、一人旅をはじめますよ!
いい恋さがしの一人旅をね!
宙太さんのセリフが、わたしにあたらしい希望をくれたんだ。
星子、振り向くと、宙太をにっこりと見た。
「ね、宙太さん、お願い。もう一度いって」
「ん?」
「ハーイ、ハニィ! おまっとうさーん! って」
(おわり)
追記 ついに、今回で最終回を迎えました。どうにか、たどりつけたのも、皆さんのお陰です。これで、一つの区切りをつけることが出来ました。星子のように、僕もあらたな旅に出発しなくては。そんな思いをこめたエピローグです。では、いってまいります!
|
先生、完結おめでとうございます&お疲れ様です〜!
とっても楽しめました^^ 星子さんの台詞で、一見綺麗な区切りで終わったように見えますけれど、これからも新しい出会いや、未来へつながる愛や恋を探して旅をするんですよネ〜!
これからの作品、楽しみにしております〜♪
2007/10/29(月) 午後 7:29
こうしてまた星子ちゃん達の物語が読めてしあわせです(涙)
私にとっても区切りに、そして新しい始まりになりました!
先生、本当に本当にありがとうございますm(__)m
2007/10/29(月) 午後 9:38 [ yukino ]
先生、完結おめでとうございます。というより本当にありがとうございます。
ここ毎日まいにち楽しみが出来ていました。お話が終わってしまったことはさじ石井ですが、また、新たな作品楽しみにしています。
ところで、新星子一人旅「長崎恋旅は魔女特急」は文庫になるご予定はありませんか?
いつでも読めるように、毎日印刷していました。なんと、65枚です。なかなかの量でした!
2007/10/29(月) 午後 11:48 [ ari*ru*97*11*1 ]
とりあえずはお疲れ様でした。^^;
お話が終わるのは寂しいけど『新しい予感』も感じさせてくださってなんだかわくわくしています。(こら)
本当にありがとうございます。
これからも楽しみですが、まずはお身体ご自愛のほど^^;
2007/10/30(火) 午前 0:14
先生、楽しい話をありがとうございました!
途中、体調を崩されたりしたのに毎回毎回楽しくって、毎回楽しめる文章を書くのってきっとすごく大変だったり才能が必要なんだろうなあなんてしみじみ。
しかも完璧なお話の終わり方☆
次回は誰とどんな風に会えるのか今から待ち遠しいです。
先生の新しい旅には、もしかしたらこのブログを楽しみにしている皆が同行しているのかも!?「山浦先生ご一行様〜」ガヤガヤ・・・。
星子さん同様、ひとり旅とは行きませんよ(^^)〜。
2007/10/30(火) 午前 2:10 [ のりぷこ ]
とても面白かったです☆
先生のお話を読むと、仕事での嫌なこととかも
消し飛んで、また頑張ろうって思えました。
昔の気持ちを思い出せるというか、なんというか。
だから、いつも楽しみにしておりました。
どうもありがとうございました。
新シリーズ、文庫本で発刊されるといいなあ、なんて
ワタシも思ってます☆
そして、このあとの新たな星子サンの旅、どうなっていくのか。
楽しみです♪
これからどんどん寒くなっていきます。
インフルエンザも流行ってきているみたいです。
くれぐれもご自愛くださいね。
2007/10/30(火) 午後 10:04 [ - ]
楽しく最後まで読ませて頂きました!!とっても面白かったです(*≧▽≦*)
私も文庫本で発刊されたら喜んで買っちゃいます!!
これからも活躍を楽しみにしていますので面白い話を書いてください!!
・*:..。o○♬♪♩♬○o。*゚¨゚゚・*:..。o○ ♬♪♩♬○o。*゚¨゚゚・*:..。o○♬♪♩♬○o。*゚¨
2007/10/31(水) 午後 2:32 [ あいり ]
完成おめでとう御座います。そして、有難う御座います。
最初から一気に読み上げてしまいました。
とても楽しく拝見させていただきました。
懐かしい〜、頑固だけど芯があって優しいあの星子さんと再会する事が出来てとても嬉しいです。
また、これからも新たな旅、事件が待ってるんですよね?ね?ね?
だって、星子を元の時間にもどしてあげないとっ♪
私はそれを信じて楽しみに待っております。
星子一人旅シリーズのファンとして。
2007/11/1(木) 午後 10:36 [ - ]
センセー、お疲れ様でした(^o^)/
最後ら編はPCの調子が悪くて修理に出してしまい
ネットカフェにて読ませて頂きました。(実はこのコメントもですが・・・)
何とか出来上がりましたね!!
活動開始から約1年かけて星子さん達が動き出してくれて嬉しかったし楽しかったです♪
文庫本になって、また多くの方々に読んでもらえたら嬉しいですね!!
もちろん、物語は動き出すんでしょう?!センセー???!
これからの星子さん達が楽しみです!!
この続きをまた首を長〜〜〜くして待ってますよ(^o^)/
寒くなって来ましたので身体に気をつけてくださいね!!
今回も私のブログでも紹介させていただきましたが
これからも、紹介していきますね!!
また、星子さん達と会える日を楽しみにしています。
2007/11/2(金) 午後 4:18
山浦先生、こんにちは!
ふとしたキッカケでこちらのブログを見つけました。
私の青春の象徴である「星子さんシリーズ」が今リアルタイムで復活していたなんて、嬉しいやらビックリするやら・・・!
一気に読ませて頂きました。
もう懐かしすぎて、読んでいるこちらがタイムスリップしたような気分!
星子さんと宙太さんに夢中になっていたのはかれこれ20年以上も前・・・
どれだけのお小遣いをつぎ込み、どれだけ学業に支障をきたしたか(笑)。
そんな私ももう三十路、一児の母です。
これからも楽しみにブログに寄らせて頂こうと思いますので、先生も楽しみながら更新続けていってください!
PS:こちらのシリーズ、第12回と第13回の間のお話がちょっと飛んでいるようです。。。内容はだいたい推測できましたので、支障はなかったのですが・・・ご確認いただけますと幸甚です。
2007/11/11(日) 午後 7:02 [ chamuchi ]
山浦先生、初めまして!
偶然にも先生のブログを発見し、そして星子さん・宙太さんと再会しました(*^^*)
星子さんの本に出会い、何冊も本を買い宙太さんに恋をし・・(笑)
山浦先生の本は私の青春でした!!
そんな星子さんの新たな旅を読み、懐かしくて懐かしくて・・
最初は涙が止まりませんでした。
どれだけ続きを読みたかったことか・・
どれだけ星子さんや宙太さんに逢いたかったか・・
素敵な小説に、また出会えて嬉しいです!!
とっても楽しく読ませて頂きました。
星子さんと一緒に過ごした青春は宝物です☆
そんな私も厄年・2児の母です(笑)
これからも山浦先生のご活躍をお祈りいたしております。
お身体には気を付けて、これからも頑張ってください。
2008/1/28(月) 午後 3:59 [ ike**87 ]