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「……宙太さん……」
頭の中がボーっとしていて、宙太の顔がはっきりとしない。シュガーのようないいオトコを見たからか、宙太のタレ目顔がいつもより一段とヒョーキンに見えてしまう。
「なによっ、なんの用よっ」
星子、不機嫌そうに口をとがらせた。
すかさず、宙太、ニカッと、
「おっ、ふくれた顔も、また、チャーミングだな」
「んもぅ、さっさと消えて!」
「そうとんがらないの。キミのことが心配で、わざわざ、きてあげたんだぜ」
「わたしのことが?」
「今日、キミのパパとママ、残業で帰りが遅いんだろう」
「どうして知っているわけ?」
「当然だろ、ボディガードとしては、キミのことは、すべて、わかっていないとね」
「わたし、ボディガードなんか頼んだ覚えはないもん」
「じゃ、ミューズ、つまり、愛の女神の頼みかな、シシシッ」
宙太、調子よく笑うと、
「でも、きてみて良かったぜ。こんなところで、居眠りなんかしちゃってさ」
「居眠り?」
星子、キョトンとなった。
そういえば、急に頭の中がボーッとなってきて……確か、シュガーから招き猫を貰って頬ずりをしたあとだった。
いったい、どうしたんだろ。
星子がけげん顔で招き猫を見つめた時だ。
いきなり、宙太、招き猫をひったくった。
「なにすんの!」
「これ、どうしたんだ?」
宙太、真面目な顔でいった。
「どうしたって、貰ったのよ」
「誰から?」
「恋の占い師シュガー・猫田ってひと」
「なに! いつ、どこで?」
んもう、まるで、刑事さんに尋問されているみたい。あ、宙太さん、本物の刑事だけど。
「今さっきよ。あそこに停まっているクルマからシュガーさんが降りてきて、わたしに……」
「!……」
一瞬、宙太、手に持った招き猫をパッと街路樹めがけて投げつけた。
その直後、サーッと風音がして、無数の金色の蝶が襲いかかってきた。
かわした宙太、体を一回転させると、トランプが一斉に舞い上がって、金色の蝶をはじき飛ばした。すると、蝶はタロットカードに変わって、ひらひらと地面に落ちた。
「ふっ、さすがだな、美空警部」
含み笑う声が聞こえて、街路樹の陰からシュガーがあらわれた。
「やっぱり、おたくか」
宙太、身構えながら、シュガーと向かい合った。
これには、星子、びっくり。
「知っているの、この人を?」
「モチロン。恋占い師シュガー猫田とは、世をあざむく仮の姿。本当は、平成のネズミ小僧か、はたまた、21世紀のルパンか。猫のように音もなく忍び込み、猫のように素早く宝石を盗み出す、世界を股にかけた天下の宝石泥棒、本名は一条冬樹さ!」
「!……」
「カレの一番の特技は、女心を巧みに利用することさ。さっきの招き猫もその小道具でね、催眠術を使うときに使うわけ」
「催眠術を?」
そうか、だから、招き猫を貰って間もなく、急に眠くなったんだ。
「でも、なぜ、わたしに催眠術なんか……」
すると、シュガー、あらため、冬樹、チラッと微笑んだ。
「この世で最高の宝石を盗むためさ」
「え?」
「それは、女のハート」
「!……」
「たしかに、いえてるな」
宙太、うなずいた。
「女のハートこそ、最高の宝石だ。僕はとっくに見つけたけどね」
「俺もだ」
「ふーん、どこで?」
「ほら、ここにいるさ」
冬樹、星子をサッと指差した。
「な、なに!」
「!……」
「俺は、はじめ、そこの宝石店の女店員たちに催眠をかけ、金庫を開けさせるつもりだった。ところが、そこへ、この星子さんがあらわれてね。俺は、一目でピンときたんだ。星子さんこそ、俺が探し求めていた最高の宝石を持った女の子だって」
冬樹、燃え上がるような熱い目で星子を見つめた。
もう、目がくらみそう。星子、なんとか、視線をはずした。
すると、宙太、
「おっと! そのセリフ、すべて、僕と同じだな。でも、おたくのような宝石泥棒には渡さないぜ」
「ふっ、せっかくだが、俺は欲しいと思った宝石は、どんなことをしてでも、手に入れる男なんだ。あしからず」
「そのセリフも、同じ」
冬樹、宙太、キッとにらみ合った。
わっ、また、戦いがはじまるのか。そう思ったけど、冬樹、
「この勝負、あずけるぜ」
と、いった。
「逃げるのか?」
「いや、ゆっくり楽しみたいからな」
と、せせら笑ったあと、星子に、
「星子さん、俺、さっき、こう占ったよな、じきに、ステキな恋に出逢えるって……それは、この俺かもしれないぜ」
「!……」
「キミのハート、きっと、盗んで見せるからな。いいな」
冬樹、微笑みながら、投げキッスをして、ミニバンへ戻った。
ミニバン、ダッシュすると、街の雑踏の中に消え去った。
「くそっ」
宙太、いまいましそうに舌打ちした。
「逮捕状があれば、とっ捕まえられるんだけどね。ヤツは、証拠を残さないんだ」
「そう……」
「しかし、まいったね。ボクチャンのセリフを先取りするようなこといって。星子さん、ぐらっときたんじゃないのかい?」
「まさか! そんなわけないでしょ!」
そう強く否定したけど、ほんとは、頭の中がボーッとしたまんまだ。
……キミのハート、きっと、盗んでみせる……。
そういった冬樹の声が、耳にこびりついてはなれない。
なんだか、コワイ。冬樹も恐いけど、それ以上に、自分がこわい。とんでもないことになりそうな気が……恋には理性を失うヒトだから、わたし……。
こんなことになったのも、みんな、ゴンベエのせいだ。ゴンベエが招き猫に誘惑されなかったら、わたし、冬樹さんと逢うこともなかった。
みんな、ゴンベエのせいよ!
ゴンベエ! と、勝手な理屈を並べながら睨みつけたけど、肝心のゴンベエ、招き猫とじゃれあいの真っ最中だ。
ダメだ、こりゃ。
肩をすくめる星子だった。
(おわり)
追記 野暮用で二度中断、すんません、なんとか、エンディングまでもってこれました。冬樹クン、この先、星子にどんなちょっかいを出すんだろう。宙太も気が気じゃないよね。ま、楽しみにしますか。
次回作まで、しばらく開きますが、よろしくです。
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ここまで一気読み、楽しませていただきました〜^^ 魅力的な星子さんモテモテで、宙太さんも大変だぁ♪
本格的に寒くなってきましたネ。先生もお身体をお大事に…。
2007/11/14(水) 午前 11:52
シュガーさん、宝石泥棒だったんですね。
宙太さんとは敵同士、星子さんの今後の旅がいっそう楽しくなりそうです♪
2007/11/14(水) 午後 1:10 [ のりぷこ ]
エンジェル五世様が主人公と思いきや、冬樹さんが新キャラとして初登場の番外編!とても楽しかったし萌えました…(*´艸)w悶
ブログで早速冬樹さんをお祭り中ですw(笑)冬樹さんの今後のご活躍を楽しみにしております+.(・∀・)゚+.゚+.
2007/11/15(木) 午後 3:28 [ ゆうきあおい ]