星子&宙太yyy

ファンの集う癒しの小部屋です。

番外らぶっす

[ リスト ]

番外らぶっす・11

                   11

 ―ああぁ、憂鬱…まいったな…。
 窓のカーテンの外がいつの間にか、薄明るくなっている。目覚し時計を見ると、朝の五時ちょっと前だ。
星子、ため息をつきながら、ベッドで寝がえりをうった。昨夜から数えて、もう、何十回目か数えきれない。
 だって、リツ子にどう説明していいのか、わからないからだ。
 ほんとは、昨日の夕方、花太郎に助け出されて魔女屋敷から逃げ出したあと、リツ子に話すつもりでいた。でも、いざ、ケータイをかける段になると、
「俺が惚れているのは、リツ子さまだけだ!」
「甲子園出場の夢を果たしたら、プロポーズするつもりだ!」
 と、叫んだ花太郎の声が、耳の中にワーンとこだまして、もう、ダメ。どうしても、電話もメールも出来ずじまい。
 一晩中、悶々と眠れない夜を過ごすはめになった。自分の恋の悩みで眠れないんなら、何日徹夜してもへっちゃらだけど、リツ子の恋のためだなんて、まったく、サイアクだよね。
 ベッドの足もとでは、ゴンベエの奴がゴロゴロと高いびきだ。普段は慣れっこだけど、今回ばかりはイラつく。
「うるさい!」と、蹴飛ばしてやったけど、効き目なし。
 とにかく、少しでも寝ないと。今日も授業があるんだから。リツ子には会いたくないけど、期末テストも近いし、サボるわけにはいかない。
 なんとか、うとうとしたと思ったら、ケータイが鳴った。リツ子からだ。
「ちょっと、今、何時だと思ってるわけ。朝の五時だよっ」
 星子が不機嫌な声でいうと、
「だから、なによ。あたし、とっくに起きて、英会話の勉強はじめたとこ。あたしのタイムテーブルに合わせなさいな」
 ですって。リツ子って、どこまで、自分勝手なんだろ。
「どうして、昨日、電話くれなかったの? ずっと、待ってたのに。おかげで、読書に集中できなかったわ」
 それが、なんじゃい! こっちは、あんたのためにひどい目にあったっていうのに。
「それで、ちゃんと、話はつけてくれたんでしょうね」
「ザンネン、失敗でした。カレ、あなたにプロポーズするってさ」って、いってやりたい。ほんとはね。でも、いったあとの騒ぎを考えると、できない。
「ごめん、ちょっとね…いろいろと、あって…」
「なにが?」
「だから、いろいろ。じつは、そう、花太郎さん、病気で寝込んじゃって…」
「病気って、どんな?」
 恋の病い、と、いいたいけど、これまた、大騒ぎになるのは、目に見えている。
 だけど、正直いうと、恋の病いにかかった男純情・花太郎さんのために、キューピット役をかってやってもいいかな、と。
だって、義理と人情にはアツい星子さんですからね。でも、今のリツ子には、だれがキューピットになろうと、絶対に、無理な話だ。
 とにかく、アタマを冷やす時間が欲しい。
 それによ、花太郎さんには悪いけど、甲子園に出場する可能性は、ゼロ。ゲンコツで何とかするっていってたけど、絶対に無理だと思う。野球はケンカとは違うんだから。
となると、つまり、プロポーズすることは出来ない。そうなれば、生一本な花太郎さんのことだ。リツ子へのラブコールもあきらめるはずだよね。
可哀そうだけど、実らない恋で苦しむより、早めに諦めてもらったほうが、お互いのためだ。
 と、いうことで、星子、
「どんな病気か、くわしいことはわからなかったけど、残念ながら、カレには会えなかったわけ…」
 星子、とっさに嘘をついた。
「でも、大丈夫、時間が解決してくれるから」
「時間が? ほんとに?」
「うん、まかしといて」
 そういって、星子、ケータイを切ると、やれやれという気分で、なんとか、一眠り。
 目覚まし時計でやっとこさ起きた時には、すでに、パパもママもお仕事でお出かけ。パパはサラリーマン、ママは看護師。二人とも中堅ということで、目一杯働かされている。それにくらべて、星子ときたら、恋夢を追いかけ自由奔放に生きている。
ごめんね、パパ、ママ。今に素敵な恋を見つけて、楽させてあげるからね。
はん? なんのカンケイがあるわけ?
ま、とにかく、寝不足もいいとこ。もうろうとした頭で、いざ、学校へ。ゴンベエ、しっかり、留守番せいや。
どうにか、遅刻せずに学校に着いた時だった。
一台の自転車が、よたよたしながら近づいてきた。
「ど、どうも! お早うございますっ」
 遠慮がちに声をかけてきたのは、なんと、細井くんじゃないですか。
 ほそっこい体にだぶついた学生服、顔も青白いお坊ちゃまふう、とくれば、なんとも、さえない姿だ。
「あら、細井くん、だったっけ」
「はい、覚えていて下さって、恐縮です」
 細井は、顔を赤くしながら、頭を下げた。
 登校してきた女の子達が、興味しんしんというか、中には、苦笑しながら、星子と細井を見比べながら、校門へ向かっていく。
 学校でも有名なやんちゃっ子の星子が、さえない男の子と一緒なので、ひときわ、注目の的になってるらしい。
 でも、好奇の目には慣れっこの星子、
「それで、なにか用かしら?」
 と、聞いた。
「じつは、キャプテンにことづてを頼まれまして…」
「キャプテン?」
「花屋敷センパイです」
「へぇ、カレ、キャプテンになったの」
「はい、自分から立候補、というか、前のキャプテンをおどして、チェンジしたわけでして…」
「あきれた! で、そのキャプテンがなんですって?」
「再試合がきまりましたので、応援よろしく!」
「再試合? でも、お宅のチーム、この前、負けて資格を失くしたはずよ」
「それがですね、あの時の相手チームが、合宿所でタバコとお酒をやらかしていたのがバレて、連盟から二回戦出場の資格をはく奪されまして。代わりに、ウチの学校が二回戦のお相手をすることになった次第です」
「んまぁ! でも、どうして、ばれたわけ?」
「それがですね、前からうわさが…で、センパイが相手チームのキャプテンをしめあげて、裏を取ったらしいです」
「そうか」
 これで、チャンスはゲンコツで作る、といったわけがわかった。
 まったく、あの図体で、抜け目のないヤツ。恋にはまだシロウトのようだけど、どうして、とんでもなく大化けするかもね。
 こわーっ!
「あ、それから、これを…」
 細井が、自転車の荷物かごから、ブーケを取り出した。
 赤や黄色、白のバラの花を素敵な包装紙で包んだブーケだ。
「わぁ、きれい! ありがと! あなた、見かけによらず、センスいいのね!」
「あ、違うんです。選んだのは、確かに僕ですが、プレゼントするようにいったのは、センパイです」
「ハナコ、ううん、花太郎さんが? やだぁ、そんなカンケイじゃないのにぃ」
 思わず星子がてれると、
「あ、それも違います」
「え?」
「プレゼントの相手は、リツ子さまです」
「はん?」
「センパイは、あなたにこう伝えろと…リツ子さまは、俺にとって勝利の女神だ。リツ子さまへの愛が、俺を勝利へと導くんだ。この花束は愛の象徴。これから、毎日、届けさせる。そして、最後の花束は、この俺が届ける。プロポーズするために、と」
「!…」
「じゃ、リツ子さまへの手渡し、よろしくお願いします」
 細井は、ぺこりと頭を下げると、自転車に乗った。
「ちょ、ちょっと!」
 星子が声をかけたけど、ダメ。細井の自転車は、たちまち、走り去った。
 まいったな。こんな花束、リツ子に渡せるわけないよ。しかも、最後には、花太郎が渡しにきて、プロポーズを…。
 その瞬間、いきなり、背後から、花束がひったくられた。
 ハッと振り向くと、リツ子が眦をつり上げて、立っている。
「り、リツ子っ」
 いつの間にか、そばで話を聞いていたらしい。
「なによ、これは! プロポーズって、どういうこと!」
「そ、それは、つまり…」
「このウソつき! 星子、あなた、あたしにウソついてたのね! よくも、このあたしを…」
 リツ子は、ブーケを叩きつけた。
「リツ子、ごめん! あやまる。でもね…」
「いいわけしないで! あなたなんか、もう、絶交よ! 赤点でも黒点でも、たっぷりと取ればいいわ!」
 リツ子の顔は、まさに、夜叉のようになった。こうなると、とても、手がつけられない。
「いいわ、こうなったら、もう、宙太さんの手を借りるしかないわね!」
「宙太さんに?」
「そうよ! これはもう、りっぱなストーカーよ! 捕まえて貰って、一生、刑務所から出られないようにしてもらうから!」
「そ、そんなこと…だいいち、宙太さんは他の捜査で。とても、手が回らないと思うけど…」
「お黙り! 愛する人が、大ピンチなのよ。何があろうと、駆けつけてくれるはずよ! きっと!」
「待って。あなたは、宙太さんを誤解しているのよ。宙太さんは、あなたのことを、別に…」
「うるさい! お黙りっていってるでしょ!」 
 リツ子は、星子に背中を向けてケータイをかけた。
「あ、もしもし、宙太さん、 あたし、リツ子よぉ」
 一転、リツ子の声は、甘える雌猫のように、うわずった。
「あたし、ストーカーに殺されそうなの。助けて、早く、助けてぇ!」
 ―ああ、今度こそ、サイアク…。
 星子、がっくりと肩を落とした。

                          (つづく)


追記  どうやら、宙太くんの出番がきたようで。でも、相手が相手だし、宙太といえども、かなり、手こずりそうだ。オレ、しらねっと。また、それかい、山浦さん。
 ま、この先をお楽しみに。ただし、ちょっと野暮用もありまして、少し間が空くかも知れません。よろしくです。

閉じる コメント(3)

リツ子メインの話なのに、ついに宙太さん登場と思うとニヤける私(←マテ
星子さん、自分の恋愛じゃないから、突っ走ることも出来ず、珍しく苦戦しておりますネ〜(笑
しかも花太郎君、目的の為なら、意外と機転?が利くようで。続きが楽しみです♪

2008/6/12(木) 午後 8:27 くにざわゆう

顔アイコン

宙太サン♪

2008/6/13(金) 午前 0:56 [ cielwine ]

顔アイコン

細井くんキタ━━(゚∀゚)━━!!!
控えめな感じが可愛くてたまりませんよ細井くん(*´Д`)w
そしてついに…宙太さんキタ━━━━ヽ('∀`)ノ━━━━!!!
待ってました〜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・*
私もニヤけが止まりませんwww(笑)

2008/6/13(金) 午後 6:57 [ ゆうきあおい ]


.
星子&宙太yyy
星子&宙太yyy
非公開 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

Yahoo!からのお知らせ


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事