|
14
「ハンセイ?」
いきなり、リツ子にいわれて、星子、キョトンとなった。
「そりゃ、わたし、日々反省の毎日だけど…」
そうです、反省にかけては、トラサンなみだよね。
「でも、あらたまって、なにを反省しろっていうの?」
「んもぅ、早合点しないで。反省するのは、このあたしよ」
「あ、ひっ?」
一瞬、息がつまってむせてしまう。
だって、リツ子、およそ、反省なんて言葉は縁がない生き方をしているからだ。
「オドロキ、あなたの辞書には『反省』なんて言葉はないと思ってたのに」
「改訂版が出ました」
リツ子、にっこりとほほ笑んだ。
またもや、あひっ!
おかしい! いつものリツ子なら、こんな冗談は絶対にいわない。
もしかして、宙太さんとケータイで話してから、おかしくなっちゃったのかもね。
じつは、テレビ電話の一件、今さっき、宙太からメールをもらっていた。張り込みの交代時間に、知らせてくれたわけ。
「途中で電話を切っちゃったんで、リツ子サンのこと、ちょっと、気になってさ」
そういわれて、「じゃ、様子をみてくるわ」と、その夜、リツ子とファミレスで落ち合った。そこで、いきなり、反省という言葉がリツ子の口からとびだしたってわけ。
「で、あなたのはじめての反省はどんなことでしょうか?」
「もちろん、きまってるでしょ、宙太さんのこと」
「え?」
宙太さんのことで、反省とは、まさに、予想外の言葉だ。
「あたしね、宙太さんに少し甘え過ぎているんじゃないかって」
「うんうん」
少しどころじゃないだろっ。
「今日もね、あいつのことで、宙太さんに無理いっちゃって。そりゃ、宙太さん、あたしを愛してくれてるし、きっと、助けてくれるはずよ」
「うんうん」
もう、軽く受け流すしかない。
「でもね、ケータイを切ったあとで、あたし、ふと、考えたの。こんなに愛されてばかりでいいのかしら。あたしからも、愛情のお返しをしてあげないと、不公平よね。宙太さん、可哀そうだわ」
「うんうん」
余計な心配だけどね。
「それで、どんなお返しをプレゼントするわけ?」
「うふっ」
「もったいぶらないで、いいなさいよっ」
ほんと、イラつくヤツ。
「愛妻弁当」
「はん? 愛妻…弁当?」
「そうよ」
リツ子、こっくんとうなずいた。
「あたしの愛情をいっぱい詰めた、おいしい、おいしい、お弁当よ。ハートのマークとあたしのキスマークもしっかりと入ってるんだから」
ゲッ、宙太さんが食えるか、そんなもの。
「でも、リツ子、まだ、結婚もしていないのに、愛妻弁当なんておかしくない?」
「あらぁ、あたしと宙太さん、もう、夫婦も同然よォ」
ギャーッ!
「でね、あたし、その愛妻弁当を、明日から毎日、宙太さんのところへ届けるの」
「でも、でもよ、宙太さん、どこにいるのか、捜査で飛び回っているんだし」
「ご心配なく。たしか、お台場よ」
「台場に?」
「宙太さんがね、部下のマサルさんって人と話しているのが、ケータイから聞こえてきたのよ」
「!…」
まさに、地獄耳だ。
「でもよ、お台場といっても、エリアは広いし…」
「大丈夫、愛のレーダーで探して見せるから。愛妻弁当を食べて、元気一杯、しっかりがんばってもらわなきゃ。じゃ、あたし、レシピ買いにいくから、さよならね」
リツ子、席を立つと、いそいそと出口へ向かった。
もう、開いた口がふさがらない、とは、このことだ。星子、しばし呆然と座っていた。
でも、冷静になって考えれば、リツ子にはわるいけど、宙太さんはリツ子に見つかるような場所にはいないはずだ。手配中の恐ろしい連続強盗殺人犯は、台場のアジトに潜伏しているらしい。そうなると、宙太さんとマサルさんも、目立たない場所で張り込んでいるに違いない。
そうよ、絶対、リツ子には見つけられないわ。愛妻弁当も、哀れ、ごみ箱行きね。
ちょっと可哀そうだけど、リツ子にはいいクスリかもね。
これで、宙太さんへの思い込みが少しでもやわらげば、それも、結構なことです。思い込みといえば、花太郎さんも同じだよね。予選で負けて甲子園行きの夢が消えれば、リツ子のことも消えていくかも。きっとね。
ふーっ、そうなってよ、お願いだから。もう、キューピット役はたくさん。早く、いい恋さがしの一人旅に出かけたいんだから。
そう思いながら、星子、我が家へと向かった。
ところが、とんでもないことが…。
我が家のあるマンションに入りかけた時だ。
グォーンとバイクの音がしたと思うと、目の前に、キキーッ、なんと、花太郎のナナハンが急停車した。
「待ってたぜ、星子さん!」
そういいながら、グイッと突き出されたのは、一輪の真っ赤なバラの花だ。
「な、なによっ」
「花束ってわけにはいかないけどよ、お前にもプレゼントしようと思ってさ」
「どうして?」
「きまってるだろ、勝利のしるしさ」
「勝利?」
「そ、勝ったんだよ、今日の試合」
「ウ、ウソッ」
「ピッチャーの俺が完封して、四番バッターの俺が、ホームランを三本打って、楽勝さ!
次の試合も、これで、ドーンといけるぜ!」
「!…」
当てが、外れたじゃないですか。でも、マグレってこともある。次の試合は、きっと、負けるから。
「な、星子さん、次の試合、応援にきてくれるか?」
「さぁ、試験も近いし…」
「ムダムダ、勉強したって、同じだぜ。俺もそうだしさ」
「ちょっと、あんたと一緒にしないでよっ」
「いいから、いいから。じゃ、よろしくな。次の試合は、台場近くのグランドだからな」
「だ、台場近く?」
ちょっと、ヤバくない?
「待ってるぜ、星子さん!」
花太郎、バラの花をポンと星子に投げて、ナナハンをダッシュさせた。
(つづく)
追記 なんだか、風雲急を告げる事態になってまいりましたね。はたして、いかなることになるやら。それはそれとして、そろそろ、星子さんに恋旅をさせたくなってきました。今度は、ファンタジー・ワールドにも挑戦したいな、と思っているのですがね。果たして、アタマと体力がついてきますかどうか。他のジャンルでも挑戦したいことがあるし。なんだか、死に急いでるのかな。
|
あらあら、先生やっぱり星子さんと旅をしたくなりましたかぁ〜嬉しいお話ですねぇ〜(^O^)
でも、急がず焦らす、ゆっくりといきまっしょい!!
でも書きたくってウズウズしてるんでしょ(^O^)b
2008/6/18(水) 午前 0:43
リツ子さんのジョークが可愛くて可愛くて仕方がありません!
花太郎さんも、エース四番というだけじゃなく、宙太さんたちとはまた違った意味で男気がある恋に一直線な人でかっこいいです!
先生そんなことおっしゃらないで!どこまでもついて行きます♪
2008/6/18(水) 午前 1:10 [ and*nte**7 ]
ついにマサルさんにまでリツ子嬢の魔の手が(笑)←失礼。
あたふたしている星子さんは見ていてめちゃくちゃ可愛いです(*´д`*)w
番外編は自分大好きなキャラばかりで楽しいですねwww
ハナコ様の薔薇投げwww某先生みたいで萌えましたwwwww
2008/6/18(水) 午後 3:27 [ ゆうきあおい ]