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「うはっ、サイアク!」
宙太、リツ子を見て、悲鳴に近い声をあげた。
ケータイでのキスの一件以来、宙太クン、ノイローゼ気味になっている。まさに、トラウマ・リツ子さんだ。
でも、星子にとっては、もっと、サイアクだ。花太郎のリツ子への熱い想い、もう、熱愛なんて生易しいものじゃない、真っ赤っかに燃え炎を噴き上げる火山のごとき物凄さを、宙太はまだ、実感としてわかっていない。
その大爆発を、なんとか、事前に防がないと。
「あ、リツ子ォ」
星子、急いで立ち上がると、階段を駆け上がって、リツ子の前に立ちふさがった。
「あらっ、星子、あなた、いたわけ?」
リツ子、びっくり顔で星子を見た。
「う、うん、花太郎さんの様子を見にきたら、宙太さんとバッタリ…」
「花太郎?」
「そうよ、マウンドで投げてるのは、カレなんだ」
「ウソーッ」
リツ子、グランドへメガネ顔を向けて、ビクッと頬を引きつらせた。
幸い、今のところは、花太郎、リツ子に気がついていない。
リツ子、ホッとした顔で、
「でも、大丈夫よね、宙太さんがそばにいてくれるし。キューピットさんは、いつもこうやって、愛する二人を守ってくれるんだわ」
ゲッ、いうなっ。
「宙太さんがここにいることを教えてくれたのも、きっと、キューピットさんよ。感謝しなきゃ」
んもぅ、キューピットめ、お尻ぺんぺんだっ。
「さ、早く、宙太さんに愛妻弁当を届けてあげなきゃ。どいてよ、星子」
「ちょっと、待って。今、宙太さん、お仕事中なの。わたしが、お弁当渡しとくから!」
そういいながら、リツ子の手から愛妻弁当の入った包みをひったくろうとした。
ところが、リツ子、ガードが固い。しっかり抱え込んだまま、
「やだぁ、星子ったらぁ」
「え?」
「ヤキモチやいてるわけ?」
「ヤキモチ?」
「コドモには、ちょっと、シゲキが強過ぎるかしら、うふっ」
わたしが、コドモ? ざぁけんなっ。あんたより、何十倍も恋の経験をしているんだよっ。このオカチメンコ!
そのオカチメンコさん、「はい、どいて」と、星子を押しのけた。
「あわわっ」
星子がよろけたすきに、リツ子、階段を駆け下りて、宙太のほうへ。
それを見た宙太、あわてて、席を立ち、反対方向へ逃げようとしたが、そこは、応援団席、生徒達がぎっしりと壁を作っている。
宙太、別方向へ向かいかけたが、すでに遅し、
「宙太さぁん、お待ちどう様!」
リツ子、宙太にすり寄り、
「お仕事、御苦労さまぁ! 宙太さんにうんと頑張ってもらおうと思って、おいしいお弁当をこさえてきたわぁ」
「あ、有難う、でもね、僕、まだお腹が空いていないから…」
宙太、なんとかごまかそうとしたけど、
「うふっ、恥ずかしがったりして、宙太さんったら、カワイイ!」
リツ子、さらにすりよった。
宙太、たまらずに、「わわわっ」と、椅子に座りこんだ。
すかさず、リツ子、包みから愛妻弁当を取り出して、蓋を開いた。
「見て、宙太さん、ラブラブの愛妻お弁当よ。おいしそうでしょ」
「う、う、うっ」
宙太、弁当のハートのマークとキスマークに、もう、毒気に当てられたオサカナのように、口をパクパク。
なんにもわかっていない、リツ子さん、
「あら、そんなに食べたいのね。はい、召し上がれ」
箸でミニトマトをはさんで、宙太のパクパクする口へ。
その光景を、近くにいた応援団が見て、「わぁ」とはやしたて、ひやかすように口笛を鳴らした。
「わっ、タイヘンだ!」
星子、真っ青。だって、花太郎に見られたら、大変なことになる。
早く、やめさせないと!
星子、転げるように、宙太とリツ子のところへ走った。
でも、すでに遅かった。応援団の歓声と口笛に、花太郎、何事だとスタンドへ視線をやった。その視線の先では、リツ子が宙太に「はい、アーンちてくだちゃいね」なんていいながら、お弁当を食べさせようとしているじゃないですか。
「!…」
ガーオ! と、怪獣のような咆哮をあげたかどうかわからないが、見る見る花太郎の顔色が変わり、全身から湯気が噴き出した。
次の瞬間、花太郎、振りかぶると、握りしめたボールを、力いっぱい、宙太めがけて投げた。
ビューッ!
時速150キロはあるものすごい剛速球が、宙太の顔面めがけて一直線に!
「キャッ」
星子、悲鳴をあげた。
(つづく)
追記 昔の大リーグに、火の玉投手っていうニックネームの大投手がいたけど、今回の花太郎くんは、まさに、火の玉投手だ。宙太くん、よけきれずに顔面にストライクを食らい、哀れ…と、と、とっ、この先はいえませんね。
残りの回数わずかですので、御迷惑でしょうが、お付き合いのほどを。
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宙太さんが日々面白可愛いくてたまりませんよwもえもえw(´∀`*)
そしてもうそろそろハナコ様に嫉妬フラグこないかなーと期待していたらついにハナコ様キター!!!!
予想通りの反応をしていただいたハナコ様も可愛くてちょう反則ww
ハナコ様は一途で素直でかわいいです(*´ω`*)
残りのお話は僅かとか…(ノД`)わーん!!
まだまだ番外編が読みたいです〜(つД`)・゚・
2008/6/21(土) 午後 5:55 [ ゆうきあおい ]