星子&宙太yyy

ファンの集う癒しの小部屋です。

番外らぶっす

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番外らぶっす・18

                18

 バシッ!
 激しく叩きつける音がはじけた。
 特急列車のような猛速球がまともに激突したんだし、宙太の美形顔、おっと、お茶目顔はスイカ割りの西瓜のようにグジャグジャにつぶれて、吹っ飛んだ、はず…。
 さすがの星子サンも、そう思うしかなかった。
 すると、
「ナイスキャッチ!」
 リツ子のかん高い声が、聞こえた。
 ん?
 星子が恐る恐る目を開けると、な、なんと、宙太の手のひらには、しっかりとボールが握られているじゃないですか。
 ということは、宙太、素手で花太郎の剛速球を受け止めたってわけだ。
 グシャグシャにつぶれたと思ったお茶目顔は、一瞬、痛そうに歪んだけど、じきに、もとの人なつこい笑顔に戻った。
「オッシャーッ、ストライクだ!」
「ちゅ、宙太さん…大丈夫なの?…」
 心配そうに見た星子に、宙太、軽くウインクしてみせた。ほんとは、かなり、無理しているけどね。
でも、すごい! やっぱり、宙太、只者じゃない。
 すると、リツ子、星子を見下したように、いった。
「あたしは、はじめから宙太さんを信じてたわ。恋人カンケイと友達カンケイの差ね」
 うぬっ。
「それにしても、許せないのは、あいつよっ」
 リツ子、ピッチャーマウンドに立つ花太郎を睨みつけた。大きなメガネの奥に見える青白いこめかみには、怒りの血管が浮き上がり、ヒクヒクッとふるえている。
 一方、花太郎のほうは、宙太が素手でボールをキャッチしたので、呆気に取られた顔だ。ベンチの監督や細井達、それに、相手チームの選手や観客達も、同じく唖然呆然といった顔が並んでいる。
 その視線をさらりと受け流した宙太、
「そら! しっかり投げろよ!」
 と、いいながら、ボールを花太郎に向かって投げた。
 ボールは、花太郎に負けないスピードで、ピシャッと花太郎のグローブにおさまった。
「ナイス、コントロール!」
 星子が思わず叫びかけたとたん、グローブではねたボールが花太郎の鼻を直撃だ。
「うぐっ」
 花太郎、真っ赤になった鼻の頭を、押さえながら、うずくまった。
「バチがあったのよ、いい気味!」
 リツ子、せせら笑った。
「ちょっと、リツ子っ、いい過ぎよっ」
 星子がたしなめたけど、
「いいのいいの、さ、宙太さん、もう一度、お口をアーンしてね」
 そういいながら、リツ子、再び、愛妻弁当のおかずを箸でつまみ、宙太の口へ持っていった。
「あっ、ダメよ、リツ子!」
「ストップだ、リツ子さんっ」
 星子と宙太があわてて制止しようとしたけど、すでに、時遅し。
「おのれっ」
 マウンド上で咆哮をあげた花太郎、こっちへ向かって、闘牛場の猛牛のように突進だ。
「ハナコ!」
「センパイ!」
 監督や細井が、あわててベンチを飛び出したけど、とても、追いつかない。スタンドとの仕切りが低いこともあって、炎となった花太郎の巨体は軽々とフェンスを飛び越え、階段を駆け上がってきた。
「キャッ」
 悲鳴を上げたリツ子、宙太の背中へ逃げた。
「花太郎さんっ」と、星子、立ちふさがったけど、
「どけ! ジャマだ!」
 あっさりと払いのけられて、応援団席に吹っ飛んだ。
「てめぇ!」
花太郎の丸太のような腕が、宙太の胸倉を掴んだ。
でも、宙太、穏やかな顔で、
「まだ、試合中だろう。ヤバいんじゃないの? 話なら、あとで聞くから。んな?」
「うるせぇ! よくも、リツ子さんをメイド代わりにしやがったな!」
「メイド代わり?」
「そうだよ! 男なら、自分でメシを食え! 人にやらせるなんて、それも、リツ子さんにだ!」
 宙太、一瞬、キョトンとなったが、
「あ、そういうこと。だったら、オタクの勘違い」
「誤魔化すな!」
「いいえ、ほんとよっ」
 リツ子、宙太の背中に隠れながら、叫んだ。
「宙太さんは、あたしの恋人よ。未来のダンナさまよ! 愛妻弁当を食べさせてあげて、どこがいけないの!」
「なに? 恋人? 未来のダンナさま?」
 花太郎、唖然となったが、すぐに、カラカラと笑った。
「そうか、こいつにそういえ、と、脅かされているんだな」
「ち、違うわ!」
「そ、違う」
 宙太、うなずいた。
「僕は、リツ子さんの恋人でも未来の夫でもない」
「そら! やっぱりだ!」
「やっぱりじゃないわ、宙太さん、あなたをなだめるために、嘘をついてるのよ!」
 んもぅ、どこまでオメデタイんだろ、リツ子って。
「フムフム、それも、こいつにいわされているわけか!」
 いやはや、花太郎さんのほうも、オメデタイこと。そのオメデタ状態で、花太郎、力強く咆えた。
「リツ子さん、もう、こいつのいうことを聞く必要はないぜ! 俺が、救ってやる! こいつを、ズタボロにしてやるからな!」
 花太郎、宙太の胸倉をさらに締め上げ、拳を振り上げた。
「まいったな、僕をその気にさせないでくれよ」
 ため息をつく、宙太くんだ。宙太としては、これ以上、ことを荒立てたくない。それでなくても、大事な任務があるわけだし。
 すると、リツ子が、叫んだ。
「構わないわ、遠慮なんかしないで、宙太さん! 早く、この人を逮捕して! 暴力行為と公務執行妨害でね!」
「ちょ、ちょっと、リツ子さんっ」
「公務執行妨害?」
 聞き返した花太郎に、
「そうよ! 宙太さんは、強盗殺人の犯人を捕まるためにここにいるのよ!」
「リツ子!」
 ヤバッ、もし、犯人に聞かれたら、サイアクじゃないですか。
「だったら、余計、ここには置いておけないぜ! さ、一緒にくるんだ!」
 花太郎、宙太を押しのけて、リツ子の腕を掴もうとした。
「いやっ、やめて!」
「花太郎くん! 落ちつけよ!」
「花太郎さん!」
 星子と宙太、懸命に花太郎を止めた。
 その隙に、リツ子、逃げようとしてよろけてしまい、近くにいた野球帽姿の男のシャツにしがみついた。
 すると、その男のシャツの肩口のあたりが破れて、二の腕の入れ墨が…。
「キャッ、ドクロ!」
 リツ子の声に見た星子と宙太、ハッと息をのんだ。なんと、ドクロのタトゥじゃないですか。
 宙太とマサルが追っているホシは、ドクロのタトゥが目印だ。
「!…」
 宙太、キッとなって、ホルダーの拳銃に手をやった。
 星子、素早くリツ子に駆け寄り、リツ子の手を掴んだ。
「リツ子! 早く!」
 でも、ダメ、リツ子、金縛りにあったように、動けない。
「リツ子!」
瞬間、男は拳銃を抜くと、リツ子に突きつけた。
「ヒ、ヒャーッ」
 リツ子、頭から氷水をぶっかけられたような悲鳴を上げた。それでなくても青白い顔色が、さらに、蒼ざめている。今にも気を失いそうだ。
「リツ子っ」
「星子さん!」
 宙太、星子の腕を掴み、引き離した。
「くるな! こいつを撃つぞ!」
「!…」
「て、てめぇ! リツ子さんを放せ! タタッコロスぜ!」
 花太郎、男にとびかかろうと身構えた。
「よせ!」
 すかさず、宙太が押し止めた。
 男の目は、サングラスを透して異様なまでに光っている。
 危険だ。下手に近づくと、タダじゃすまない。
 宙太、ホルダーの拳銃を握り締めたまま、ためらった。
 男は、いった。
「この女の子は、人質に連れていく! いいな!」
「よせ! 人質には僕がなるから、その人を放すんだ!」
「そうはいかねぇ! デカの人質なんて、何の役にも立たねえよ! さぁ、歩け!」
 男の拳銃が、リツ子の背中を押した。
 可哀そうに、リツ子、真っ青な顔でガタガタふるえ、恐怖に泣いている。
「リツ子…」
 星子、どうにもできない自分が、なんとも腹立たしいし、情けなかった。
 花太郎も、口惜しそうに歯噛みしている。
 宙太、リツ子に向かっていった。
「リツ子さん、きっと、助けてあげるから! 僕を信じて、今はいわれたとおりにするんだ。いいかい!」
「……」
 リツ子、朦朧としたままだ。恐怖で、正気を失っているらしい。
 その時だった、スタンドの上段に、マサルが警官隊を連れてあらわれた。
「おい! お前の彼女は、今さっき、駐車場で逮捕したぞ!」
 マサル、大声で叫んだ。
「なに!」
「この球場は、完全に包囲されているぜ。もう、悪あがきはよせ! 拳銃を捨てて、手を挙げろ!」
 カッコいい、マサルさん。
 だが、男はあきらめなかった。
「うるせぇ! 捕まってたまるか!」
 そうわめきながら、男が、マサルを見上げた瞬間だった。
 いきなり、リツ子が我に返ったように、パッと走り出した。
「あっ、こいつ!」
 あわてた男が、銃口を逃げるリツ子の背中へ向けた。
「危ない、リツ子!」
 星子が叫ぶのと同時に、
 ダーン!
 銃声がして、リツ子が…。
「り、リツ子…」
 星子、恐る恐る、目を見張った。
倒れているのは、リツ子じゃない。花太郎だった。
 男の拳銃が発射された瞬間、花太郎、巨体をジャンプさせて、リツ子をかばったのだ。
 ほとんど同時に宙太の拳銃が火を吹き、男の拳銃を弾き飛ばした。あわてて逃げだした男に、マサルがとびかかり、叩き伏せて手錠をかけた。
 ほんの一瞬の出来事だったが、星子には長い悪夢を見ているようだった。でも、倒れている花太郎の姿は、消すことのできない現実だった。
「は、花太郎さんっ…」
 星子、弾かれたように駆け寄った。
 花太郎、ぐったりとしたまま、動かない。
「し、死なないで! 花太郎さん! …花太郎さんっ…」

                            (つづく)



追記  いやな雨がつづきますね。風邪男には、かなり、こたえます。それにしても、花太郎くんがこんなことになるとは。もっと、長生きして、シリーズを盛り上げて欲しいんですが。リツ子さんは、どう思っているのかな。気になる最終回に、ご期待を!

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次回いよいよ最終回ですか!
身体を張った男・花太郎君に、リツ子さんはどう反応するんだろう〜?
…どちらのパターンも予想できる所が怖いリツ子さん…(笑

2008/6/22(日) 午後 9:20 くにざわゆう


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