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「そ、そんな……」
何度か深呼吸したが、まだ、声が少しうわずっている。
「キ、キミね、人をからかってはいけないな……流星子というのは、あくまで、小説の主人公だ。実在している人間じゃないんだ」
わたしは、星子と名乗った少女に諭すようにいった。
「そうか、もしかして、君、なりきり症候群にかかっているんじゃないかな」
「なりきり……ショウコウグン?」
「ほら、よくあるじゃないか。小説とか映画とかテレビの登場人物に惚れ込んで、その主人公と同化というか、一体化というか……僕も、若い頃はよくあったな。高倉健サンに惚れ込んで、映画館を出てくる時は、すっかり健さんになりきっているとかさ……君も、星子さんに惚れ込んで、自分が星子に……」
「うふっ」
星子は、クスッと笑った。
「なにが、おかしいんだ?」
「だって、パパが高倉健さんになりきるなんて。その顔とルックスで? いくら、若い頃でもネ。それこそ、ウッソーッだ」
「お、おいっ」
不愉快な小娘だ。でも、ま、いってることは正しいかな。
「そりゃ、パパが戸惑うのは無理ないけど、わたしは、本物の流星子。パパがコバルト文庫で書いてくれた、あの伝説のカットビ女子高生・星子チャンですっ。おっと、自分で伝説だなんて、ちと、図々しいかな」
星子は、ペロッと可愛い舌を出した。
「とにかく、ここに、証人もいますから」
そういながら、背中に背負ったリュックサックをポンと叩くと、
「ゴンベエ、ゴンベエ挨拶だよっ」
すると、リュックの中から、一匹の大きなドラネコが面倒くさそうに、のっそりと顔を出した。
「ゴ、ゴンベエ!」
「ハイ、星子さんの一人旅の頼もしい、かどうか、とにかく、いつも、お伴してくれるドラネコのゴンベエくん。カレも、パパの頭の中から産まれたわけよね。ほら、パパにご挨拶だよっ、ゴンベエ」
すると、ゴンベエは、なかばふてくされた顔でフニャーゴと鳴いた。
「……」
たしかに、わたしが小説に書いたゴンベエと、ほぼそっくりのイメージだ。
星子と名乗ったこの少女だって、まさに、わたしが作り上げた流星子のイメージと同じだ。
しかし、顔やルックスはどうなんだろう。コバルト文庫はイラストつきだったし、星子シリーズも当然、イラストが大きな比重を占めていた。
最初、星子シリーズのイラストを描いてくれたのは、「服部あゆみ」さんだ。僕が、当時の編集長だったイシハラさんに「誰か、イラストライターの知り合いはいませんか」といわれて、アニメのツテで紹介して貰ったのが、服部さんだった。
大胆なタッチのイラストに、はじめは戸惑ったけど、星子や宙太のイメージがぴたりと合ったのか、お陰様で星子シリーズの人気を押し上げてくれた。つぎに、イラストを描いてくれたのは、「浦川佳弥」さんだ。頑張ってくださったけど、服部さんのイラストとイメージが違いすぎて、ファンの皆さんには戸惑いを与えてしまった。そして、そのあと、イラストを描いてくれたのは、「若松みどり」さんだった。でも、その頃はもう、星子シリーズもファンに飽きられたのか、発行部数も減り、尻つぼみのまま、途切れてしまった。
コバルト編集部から正式に打ち切りの連絡を貰ったわけじゃないが、当時の編集担当からのコンタクトも途絶えて、僕なりに星子シリーズの終了を決めたわけだ。
今思えば、悲しいし、口惜しいが、ま、これも、物書きの宿命かなと思って諦めたわけだ。モチロン、それなりに時間がかかったけどね。
でも、まだ、星子シリーズを応援してくれているファンの人達がいると知って、その暖かい気持ちに何とか応えようと、ブログで星子シリーズを書いている。これが、私の近況である。
ま、それはともかく、
イラストレーターが三人も代わったわけで、星子のイメージが今一つはっきりしない。
はたして、今、私の前にいるこの少女が、本当の流星子なのかどうか。
いや、そもそも、自分の書いた小説の主人公が現実に現れるという事態が、どうしても、
納得がゆかない。もしかして、夢でも見ているのか。それとも、何か、たちの悪い冗談とかではないのか。
私は、頭の中が混乱したまま、星子を見た。
「ま、君が誰かはともかく、なぜ、僕と同じ列車に……」
「きまってるでしょ。パパと二人で旅をしたかったから」
「僕と? しかしね、僕は今回、秋の北海道を一人旅しようと……」
そう、終わりの見えてきた人生を、旅をしながら、もう一度、振り返ってみようかな、との思いから、旅立ったわけだ。
「わかってまーす! でも、近頃のパパって、どこかさびしそうだし、元気がないし。だから、わたしが……なぐさめてあげようと思ったわけ」
そういいながら、星子は私の首にかじりつくと、私の頬にギュッと唇を押しつけた。
(つづく)
追記 星子シリーズのウラ話、ちょっぴり、披露しちゃいましたね。今となっては、懐かしい思いでですが……。
それにしても、僕、このさき、どうなるんだろう。宙太クンも、次回であらわれそうだし。やれやれ。まいったね、もう。
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山浦さん、そんなことがあったんですね・・・
実は、あたしも「離れてしまったファン」なんです
やっぱりイラストが変わったことでイメージが付いていけず離れてしまいました。
でも、やっぱり星子シリーズが大好きで大好きで戻ってきちゃいました。
出来ることなら、ずーーーーっと書き続けて欲しいです。
次回は宙太さんの登場ですか? 山浦さんや星子さんとのやりとりが楽しみです。
まだ暑い日が続くらしいので、体調に気をつけてください。
楽しみに待ってます(^^)
2008/9/8(月) 午前 9:40 [ とも ]
私が高校生の頃、星子シリーズをずっと買い続けて読んでいたのですが、急に途絶えてしまってどうしたのかなぁと思っていたのです。
その時はすごく悲しかったです。
星子チャンが旅した所に私も行ってみたくなったり、一人旅をしてみたくなったり。いろいろ思いながら読んでました。
結婚した今も実家に星子シリーズを全冊置いてありますよ。
私が青春時代に夢中で読んでいた小説なので!
イラストは最初の服部あゆみさんが印象強く残ってます。
最初ということもあるからでしょうか、今でも星子チャンも宙太サンも他のメンバーも服部さんのイラストの顔で浮かんできます。
山浦さんまた星子シリーズを書いてもらいありがとうございます。
あの頃の様に夢中で読ませていただいてます。
北海道の旅楽しんで下さいね。
2008/9/8(月) 午後 11:29 [ 未来 ]
今回のシリーズも、続きが大変楽しみです。心の支えに日々、頑張ります!
星子シリーズは、学生の頃から読んで、大学生になり、本屋でアルバイトを始めててからも、「今月の刊行予定」を、毎月チェックしてました。勿論、社会人になってからも。先生のブログで復活とは!時代の流れ・・・寂しい事もありますが、インターネットには感謝です!
2008/9/9(火) 午前 0:53 [ 理 ]
こんにちは。
やはり初代であり期間も長かった、服部あゆみさんのイラストの星子さん達が
ブログの連載を読んでいても思い浮かびます。
2008/9/9(火) 午後 2:15 [ sei*a1*8* ]