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「…『まりも姫伝説』か…」
五月は、長い髪をかき上げながらつぶやいた。思ってもいなかった展開に、戸惑っている感じだ。それは、宙太も同じだった。
「てっきり、金銭がらみの事件だと思っていたのにな。とにかく、事件のキイポイントは、その『まりも姫伝説』とやらにありそうだぜ」
「立川圭一も、当然、そのことを知っているわけか」
「もちろん」
宙太は、うなずいた。
「考えてみりゃ、ただの金銭がらみの事件だったら、カレも、わざわざ、異界からやってくるはずがないよな」
「異界、か…」
「ああ、カレがほんとに死んだなら、この世に蘇るわけがない。魂はまだ生きていたんだ。この世とあの世の境でな。そこが、異界って所さ」
「なるほど」
五月の表情には、戸惑いが残った。
「どうも、そういう話は苦手でね」
「世の中には、理屈じゃ割り切れないことがあるのさ」
「なるほど。そう思うしかないか」
五月は、仕方なく頷いた。
「それにしても、わざわざ、異界から殺しにやってくるとは、余程の理由がありそうだな」
「そういうこと。俺のカンじゃ、こいつは、どえらい事件になりそうだぜ」
宙太は、キッと顔を上げた。
「こうなったら、乗客全員をたたき起こしてでも、圭一を見つけないと。危険とクレーム覚悟でさ! それしかないぜ!」
「ああ、わかった」
五月も、覚悟を決めたように、宙太とうなずき合った。
その頃、2号車の寝台車では――、
「星子、どうした? 星子?」
わたしは、星子に声をかけた。
というのも、宙太や事件のことで不安いっぱいの顔の星子が、急に頭を抱えてベッドにうずくまってしまったからだ。
「おい、星子っ」
星子の肩を掴んで強く揺すっても、応答はなく、まるで、夢遊病者のように、なにやら、ぶつぶつとつぶやいている。
「星子っ、しっかりしないか! 星子!」
わたしが何度も声をかけていると、星子はやっと顔から手を離して目を開けた。
「あ、パパ…」
「どうしたんだ? 具合でも、悪いのか?」
「ううん、大丈夫…ちょっと、夢を見ていたみたい…」
「夢を? 眠ってもいないのに?」
「うん、そういえばそうだけど…」
星子は、キョトンとした顔でつぶやいた。
「でも、急に頭の中が真っ白になって、ぼーっとしたと思ったら…」
「で、どんな夢だった?」
「それが、変な夢…キラキラと光る雪が降っていて、その中に女の子の影がぼーっと浮かび上がって…」
「女の子の影が…」
「それも、どことなくお姫様のようだったけど…」
「お姫様?」
「で、その子がね、あたしに向かって叫んでいるの…『早く、わたくしを、助けにきて。早く、お願い』って…」
「え?……」
「あたし、わけを聞こうとしたの。でも、声にならなくて、そのまま、雪の中に消えてしまったわけ…」
「そうか…」
「いったい、どういうことかしら…ただの夢ならいいけど…」
「そうさ、そうにきまっているよ」
わたしは、いった。
「疲れているから、そんな夢を見るんだよ。さ、心配しないで少し休んだほうがいい」
「うん…」
星子は、いったん、ベッドに入りかけたが、急にハッと立ち上がった。
「あたし、やっぱり、いかなくっちゃ!」
「え?」
「あの子を助けるのよ!」
「星子」
「でも、あの子、どこにいるんだろ? そういえば、あの子、手に何かを持っていたけど…そうよ、マリモだわ!」
「マリモ?」
「うん! 間違いない、あの子、マリモを持っていたわ!」
星子は、目をいっぱいに見開きながら叫んだあと、パッと走り出した。
(つづく)
追記 まさか、星子がまりも姫伝説のミステリーに巻き込まれるとは。それも、かなり、危険なことになりそうです。だから、ま、宙太の命も危なくなるわけで。とにかく、僕にも先が読めない展開に…おいおい、頼むぜ、ヤマサン。
それはそうと、今、NHKBS2で「ティファニーで朝食を」を、放送していますよね。もちろん、DVDに録っています。僕の大好きな映画で、ヘプバーンが最高に魅力的だったころの傑作でした。今夜は、白州でもチビチビやりながら、昔をしのんで鑑賞しますか。明日は、二日酔いかな。もちろん、ヘプバーンの魅力に酔ってネ。
オヤスミ、ハニィ。
に
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星子さん、危険に自ら飛び込まないで! と言っても飛び込んじゃうんですよネ〜。星子さんに助けを求めるまりも姫。宙太さんも心配で、先生でさえも読めない先が気になります〜!
ヘプバーンの作品では「ローマの休日」がダントツで好きです〜♪
2008/11/11(火) 午前 4:59
星子さん、またもや事件に突っ走りそう(+o+)
それにしても、まりも姫ってどんな人だろう… きっと、かなりの美人さんなんだろうなぁ(*´∇`*) あぁ、気になるぅ( ̄〜 ̄)ξ
2008/11/11(火) 午後 2:50 [ いちそこ ]