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「待ちなさい、星子!」
デッキに出たところで、わたしは星子の腕を掴んだ。
「いやっ、はなして!」
星子は、わたしの手を払いのけようと、もがいた。
「あの子が、呼んでいるのよ! 助けてって! 早くきてって!」
星子の目は、真剣そのものだ。
弱い人や助けを求める人の力になる。それは、星子のステキなキャラクターでもあった。
だが、今回はどうも様子がおかしい。状況から考えると、何かに取り憑かれたような感じがする。
感受性が人一倍強く鋭い女の子は、時として、普通の人間には見えないものを見たり、聞いたり、予見したりするという。もしかしたら、星子もそんな少女の一人かもしれない。
「とにかく、いっては駄目だ! とんでもないことに巻き込まれるかもしれないぞ。おとなしく、この列車に…頼むから…」
わたしは、力ずくで星子を車内へ連れ戻そうとした。
その時、ふいに、背後から手が伸びて、わたしの腕を掴んだ。
「パパ、乱暴は駄目よ」
その声に振り向くと、なんと、春之助が立っている。ミンクのコートを着て、頭には純白のスカーフを巻いた姿は、いつもより一段と美しく見える。
「春之助君!」
「春ちゃんっ」
星子も、びっくりした顔で春之助を見た。
「どうして、あなたが…」
「この列車に乗っているか、って、聞きたいわけね。もちろん、愛する人を守るためよ」
春之助は、軽くウインクした。
「今まで出番を待っていたけど、やっと、お呼びがかかったってわけ」
「呼んだ覚えはないぞ」
「あたしもよ」
「いいから、気にしないで。じつはね…」
春之助は、ミンクのコートのポケットから水晶玉を取り出した。
「占いやってたら、星子ちゃんが危ないっていう卦があらわれたの。それで、あとを追いかけてきたってわけ」
そういえば、水晶玉占いは春之助の特技だった。
「ね、パパ、星子ちゃんのことはあたしがしっかりとガードするから、好きなようにさせてあげて。おねがぁい」
「駄目だ。君に星子をコントロール出来るわけがない」
「そんなに信用ないわけ」
春之助は、悲しそうに私を見た。他の事なら頼りになる若者だが、星子のこととなると、理性を失ってしまう。
「じゃ、仕方ないわね」
そうつぶやいたと思うと、いきなり、春之助はわたしの脇腹に鋭い突きを入れた。
「うっ」
一瞬、息がつまり、目の前が真っ暗になって、わたしは床の上に崩れかけた。すかさずわたしの体を抱えた春之助は、寝台車のベッドに運んで寝かせた。
「パパ、ここで当分、おとなしくしていてね」
「…こ、こいつ…」
起き上がろうとしたが、体は動かない。そのまま、わたしは気を失った。
「大丈夫かな、パパ…」
心配そうにのぞきこんだ星子に、春之助は、
「平気、平気、殺されても死ぬようなタイプじゃないから」
そういって微笑んだあと、
「それより、星子ちゃん、助けを求めている女の子って、どこにいるわけ?」
「さぁ、わからないけど…でも、見えない力で、あたしを呼んでくれるみたい」
「そう、きっと、テレパシーとか霊力とか、そういう類いかもね」
春之助のいう。通りかもしれない。やはり、星子には特別な感性があるようだ。
「だけど、なぜ、星子ちゃんにだけ聞こえるのかしら。あたしだって、水晶玉占いが出来るくらい、霊感はあるつもりだけど」
春之助は、水晶玉を撫でながらいった。
「もしかして、その子と星子ちゃんをつなぐ見えない糸でもあるかもよ」
「え? そんな…」
星子は、唖然となった。
…自分とマリモを持った女の子が見えない糸でつながっている…にわかには信じられない話だ。
「とにかく、いってみるしかないわ」
「うん…」
星子は、顔をこわばらせたまま、うなずいた。ちょっと、こわいような気持ちだが、好奇心のほうが強く背中を押している。
「問題は、宙太さんね」
春之助は、腕組みした。
「もし、見つかったら、絶対にいかせてくれないわ」
「かもね……」
星子を危険な目に合わせたくない、という宙太の気持ちはうれしいけど、今回は有難迷惑だ。なんとか、女の子を助けたいという自分の意思を超えた思いが、星子を引っ張っていた。
そうはいっても、宙太や五月の目をかいくぐって、助けに行くことが出来るかどうか。かなり、難しそうだ。
星子が歯噛みした時だった。前の客車のほうで、何やらいい争う声が聞こえてきた。
「どうしたんだろ、こんな夜ふけに…ちょっと、様子を見てくるわね」
そういって立ち去った春之助が、じきに、足早に戻ってきた。
「大変よ、星子ちゃん!」
「どうしたの?」
「宙太さんや鉄道警察隊の刑事さん達がね、寝ている乗客を起こして取り調べているのよ。おかげで、乗客達がアタマにきて、宙太さんに食ってかかっているわけ」
「そう」
「きっと、五月さんも前のほうの車両で捜査しているはずよ。このままじゃ、騒ぎが大きくなって面倒なことになりそう」
どうやら、宙太も五月もかなり焦っているようだ。
ふいに、春之助がパチッと指を鳴らした。
「そうだわ!」
「どうしたの?」
「チャンスよ! 騒ぎを大きくして、その隙にこの列車から降りるのよ!」
「!…」
(つづく)
追記 なんと、春ちゃんまで登場するとは。これじゃ、話はこんがらがるばっかりです。もちろん、あとで、マサル君も登場するし、一体、この先、どうなることやら。当初の予定では、僕と星子の大人の恋紀行を書くつもりだったのに。
いやいや、そのプロットは死んでいませんぞ。どんなに邪魔されようと、かならず! かならず…いつか、きっと…きっと…。
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きゃ〜ヽ(´∇`)ノ
春之介さんが突然登場! 嬉しい(o≧∇≦)o でもって、またまた、話がややこしくなりそう(^^; しかもパパさんは星子さんから離されてしまいそうだし… どうする、パパさん(;□;)!!
2008/11/12(水) 午後 9:30 [ いちそこ ]
星子さんの味方、頼りになる春ちゃん登場ですネ〜!
パニックの隙に降りるだなんて、どんどん事が大きくなっちゃっているけれど、大丈夫かなぁ〜(心配
あ、そうなると本当、パパさんから離れるんだ。せっかくの旅行なのにネ…。
続きが気になります〜!
2008/11/13(木) 午前 4:40
春ちゃんキタァアアア*・゚゚・*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゚゚・*!!!!!
ご登場嬉しいです つД`)・゚・。・゚゚・*
これで少しは星子さんの安全度がUPしましたねw
でもパパさん…脇腹に突きを喰らわされてましたけど大丈夫ですか〜(≡∇≡;)
2008/11/13(木) 午後 0:56 [ ゆうきあおい ]
春ちゃん登場だぁ〜 マサルさんも登場予定!?
ますます楽しみです☆
宙太さん達、圭一さんを見つけられるのかな?
早く見つけないと、星子さんがドンドン危険になっちゃうよ〜。
2008/11/13(木) 午後 9:05 [ とも ]
山浦先生の作品をいつも拝見してどきどきしてます♪
ついに春ちゃん登場ですね〜(^-^)ワクワク♪♪
個人的に右京さんの近況も気になります〜♪
2008/11/13(木) 午後 10:25 [ にゃお ]
春ちゃん登場にわくわくしております。宙太さんと星子さんの会話にもわくわくしっぱなしです!!!
2008/11/14(金) 午後 7:11 [ みかん ]