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――銀河巡礼・孤独の星(2)――
「銀河巡礼の旅列車の最初の停車駅が、孤独の星とはね」
座席に体を沈めた宙太、缶コーヒーを飲みながらいった。
「うん……」
星子、気が乗らない顔で車窓を見た。
「それにしても、さびしい名前ね。孤独の星なんて……いったい、どういう星かしら」
「きっと、財布がからっぽの人間ばかり住んでいるんじゃないのかな」
「どうして?」
「ボクチャンが一番孤独を感じる時は、財布が空っぽの時だからさ、シシシッ」
「んもぅ!」
「とにかく、この宙太メが一緒なら、さみしくなることなんかない。おまかせを!」
宙太、胸をポンと叩きながら微笑んだ。
「ふん、結構よっ。わたし、孤独には強いんだから。一人でもへっちゃらよ」
なんていったけど、星子としては、途中下車したくない星だ。いつも賑やかでお祭り状態の星子だけど、一人ぽっちには弱い。誰でもいいから、いつもそばでワイワイしてほしい。
宙太も、そこのところはお見通しだ。
「ふふっ、無理しないの、ハニィちゃん。君が孤独に弱いことは、僕が一番わかっているしさ」
「よしてよっ。わたし、孤独には強いの」
「いんや、弱い」
「強いったら!」
ムキになっていった時、不意に、脇から、
「強いか弱いか、じきにわかることよ」
甘ったるい女の声が聞こえた。
振り向くと、反対側の座席に、トップモデルのようなスタイルのいい女が座っている。ミンクのコートを着て、胸にはキラキラと輝く真珠のネックレス、ネールアートの指には大きなダイヤの指輪が光っている。顔のほうも、それこそ最高のメイクでハリウッド女優もひれ伏すセクシーな美女だ。
星子、圧倒されたように見つめた。宙太のほうは、たちまち、目尻を下げて、
「あ、どうも! 女神が乗っているのかと思いましたよ、ハイッ」
「まぁ、お上手ね」
「いえいえ、僕は常に真実のみを語る男でして。あ、申し遅れましたが、僕、美空宙太といいます。よろしく! で、あなたは?」
「花アザミよ」
「花アザミさん、なんとも素敵なお名前で」
「ありがと。で、そちらのお嬢ちゃんは?」
花アザミと名乗った女、星子に薄笑いを浮かべた目を向けた。
し、失礼な!
「わたし、お嬢ちゃんなんかじゃありません!」
キッと立ち上がった星子を、宙太、押しのけるようにして、
「あ、流星子っていいます。お見知りおきを」
「星子さんね。で、あなたとどういう御関係?」
「どうって、友達、あ、いや、妹みたいな存在でして、ハイ」
おのれ、宙太メ、妹だって?
星子、キッと睨みつけたが、宙太、知らん顔でアザミに、
「それで、あなたも銀河巡礼の旅をなさっておられるんですか?」
「ええ、恋疲れを癒す旅といったほうが当たっているかしらね」
「恋疲れをいやす?」
「そうよ、あたし、たくさん恋をしたの。炎のように激しく燃える恋をね」
「なるほど、あなた、確かにもてそうだ。まさに、恋多き女の化身、恋菩薩とでもいいましょうか」
よくいうよ、宙太のヤツ。
「うふっ、わかっていらっしゃるのね。でも、近頃は恋に飽きてしまって、しばらく、一人になりたくて」
「ふむ、ぜいたくな悩みですね。それで、この銀河巡礼列車に乗って、癒しの旅に出たというわけですか」
「ええ」
アザミ、けだるそうに微笑んだ。
「だから、孤独の星はあたしの癒しの旅にはぴったりの星だわ。いいよる男が一人もいない孤独の星、一人の時間を心ゆくまで楽しめる星ですものね。ま、あなたのような恋に縁のなさそうなお嬢ちゃんには、とても、無理だと思うけど」
そういいながら、見下すように星子を見た。
「ちょっと!」
どこまでシツレイな女だろ。星子、食ってかかろうとしたけど、正直いうと、アザミのいってることは当たっている。孤独には、ほんと、弱い星子だ。
わたしには、耐えられないな、孤独の星なんて……そう思っていると、アザミが、
「あ、見えてきたわ、孤独の星が。ほら、あそこ」
「え?」
急いで車窓を見ると、銀色の星がいくつもの衛星に囲まれて浮かんでいる。どの衛星も虹色のまだら模様に彩られて鮮やかに美しく光り輝いている。
「きれいだな、まるで、イルミネーションみたいだ」
星子も宙太も、うっとりと見つめた。
「でも、あれが孤独の星ですか? とても、そんなふうには見えないけど」
ほんと、孤独の星っていうからには、もっと、暗くてさびしい星だとばかり思っていたのにね。
すると、アザミがいった。
「今にわかるわ、あの星の恐さが……なんでも、乗客の半分近くが孤独に耐えられずに自殺するそうよ」
「ええっ」
星子、息を飲み込んだ。
(つづく)
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え〜! 最初の停車駅が、そんな恐ろしい星だなんて。
新キャラ・アザミの登場でなにやら心穏やかじゃない星子ちゃんだし。これからどうなるのかドキドキです〜!
2010/2/10(水) 午前 6:30
先生!ほぼ連日のUP ありがとうございます〜
先日ネットで注文したとらぶるファミリーシリーズが手元に来たので、毎晩星子ワールドを楽しんでました。
なので、もうこの銀河鉄道シリーズも挿絵が目に浮かぶようで・・・
あーどきどきですね〜体はご自愛くださいね。
2010/2/10(水) 午後 3:16 [ まりも ]