星子&宙太yyy

ファンの集う癒しの小部屋です。

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「宙太さんっ」
 星子、一瞬、顔をこわばらせた。
 気づいた右京と亜利沙も、ハッと息をのんだ。
 ローソクの明かりに照らされた宙太の表情は、いつものリラックスしたネアカ顔、ほら、
「ハーイ、ハニィ!」っていう、あの人なつこいたれ目顔の宙太とは別人のようだった。
ということは、独身宙太じゃなくて宙太パパのほうだ。
「宙太さん、どうしてここが……」
 星子、どうにか気持ちを落ち着かせながら宙太を見た。
「わたしのあとを、つけてたってわけ? そうなのね?」
「すまない……」
 宙太、小声でいった。
 星子、宙太には知られないように、春之介に口止めしたあと、こっそりと出かけてきたつもりだった。それに、亜利沙もあれ程警戒していたのに、宙太はしっかりとあとをつけていたらしい。
「あ、断っとくけど、春之介君は関係ないぜ。カレ、一生懸命、君をかばっていたし、あくまで僕のカンだからね」
そういうことですか。
「ごめんなさい、黙って出かけたりして……」
 星子、申し訳なさそうにいった。
「いいんだよ、君の気持ちはよくわかってるから。つまり、星子ママを助けたいってことだろ」
「宙太さん……」
「星子ママを助けるには、右京君の力がいる。でも、僕は刑事だし犯人を逮捕するのが僕の仕事だ。だから、僕には黙って出かけた……そうだね」
「……」
「たしかに、どんな事情があろうと、仕事が優先、残念ながら、僕の体にはデカの匂いが染みついちゃっているわけ、悲しいけどね」
 宙太、ちらっと苦笑すると、
「でも、それだけじゃないぜ、ここへきたのは右京君のためでもあるってことさ」
「え?」
 宙太、右京を見つめながらいった。
「右京君、容態はかなり悪いようだし、一刻も早く病院へ戻さないとね。それで……」
「ほっといてくれ!」
 右京、端正な顔を引きつらせながらいった。
「僕の体なんか、どうなってもいい! 自業自得、人殺しには野垂れ死がふさわしいんだ!」
「おや、弁護士にはあるまじきセリフだな」
「うるさい! 逮捕出来るものならやってみろ! どこまでも逃げて見せるからな!」
「右京君っ」
 宙太が右京に近づこうとした瞬間、
「待って!」
 亜利沙が、鋭い声で叫んだ。
「右京さんは、やっていないわ。犯人はこのあたしよ!」
「亜利沙っ」
 右京、亜利沙を制止しながら、宙太に目をやった。でも、宙太は別に驚いた顔もしないでいった。
「そのセリフを聞きたかったんだ」
「宙太さんっ」
 宙太、軽く鼻をこすったあと、真顔で亜利沙を見た。
「じつをいうと、三日月刑事がいろいろと調べた結果、最近になって亜利沙さんの名前が捜査線上に上がってきたんだ」
「なにっ」
 右京の顔、こわばった。
 マサルさんって、ほんと、宙太さんにとって頼りになる部下なんだ。
「事件が起きたのは、もう、三年ほど前になるけどね……」
 そう、星子には現在時間の事件に思えるけど、ここにいる宙太や右京、亜利沙にとってはほぼ三年前の出来事になる。
「あの時、下北沢のコインパーキングに停めた車の中で殺された人物、つまり、右京君の先輩に当たる佐々木弁護士だけどさ、当時は拳銃強盗による犯行ってことで捜査本部が作られて、大々的に捜査がおこなわれたよね」
「……」
「でも、イマイチ、納得がいかなくて、僕と三日月君で独自に捜査したところ、意外なことが浮かび上がってきたんだ」
 宙太、咳払いすると、話を続けた。
「亜利沙さん、君の父親は暴力団系の会社の幹部で、恐喝と詐欺事件の主犯として現在、服役中だよね」
「……」
 そうか、亜利沙さんの父親って、そういう人なんだ。華やかな美しい姿からは、ちょっと想像できない。
「そのお父さんの弁護を引き受けたのが、会社の顧問弁護士をしている佐々木さんだった。ところが、佐々木弁護士は君に法外な要求をしてきたんだ……お父さんを無実にしてあげるから、自分のいうことを聞け。もし、断るのならお父さんが不利になる証拠を裁判所に提出するってね……そうだろう?」
「……」
 ひどい。星子、聞いているだけで腹が立ってきた。
「それで、思い余った君は、佐々木弁護士を殺そうと決意すると、事件当日、佐々木弁護士の車に乗り、誘われるままホテルへ行くと見せて、途中の車内で、用意した拳銃を使い佐々木弁護士を射殺した。凶器の拳銃は、君の父親が隠し持っていた拳銃じゃないかな。薬莢の線条痕からわかったことだけどね」
「……」
 すごい、宙太さん、そこまで調べていたんだ。たしかに、暴力団の幹部なら、ピストルを隠し持っているかもね。
「で、そのあと、君は佐々木弁護士の車を下北沢のコインパーキングへ入れると、拳銃強盗の犯行に見せかける細工をした……という推理が成り立つんだけどね、どうだい?」
「……」
 亜利沙、答えずに黙っている。でも、事実のようだった。
 すると、右京が「違う!」と、激しい口調でいった。
「佐々木弁護士を殺したのは、この僕だ。亜利沙には殺意はなかった。拳銃を持ち出したのも、あくまで、万一の場合、身を守るためだったんだ。ところが、彼女は拳銃を取り上げられ、その上、レイプされそうになったので、駆けつけた僕が佐々木弁護士から拳銃を取り上げて撃ち殺したんだ!」
「いいえ、右京さんはあたしをかばっているだけよ。あたしがやったの、間違いないわ!」
 亜利沙、右京を押しのけるようにして、宙太と向かい合った。
「じゃ、証拠は?」
 宙太、あくまで、冷静な顔だ。
「証拠を見せて貰わないとね。どう、あるわけ?」
「ええ、あるわ」
 頷いた亜利沙、手元のハンドバックを開いてハンカチの包みを取り出した。その包みが解けると、黒光りする物が……拳銃だった。
「!……」
 星子の体に、ブルッと震えが走った。まさか、亜利沙がこんな恐ろしい物を持っていたなんて。
「なるほど」
 宙太、なんとか平静を装いながらいった。
「そのピストルで、佐々木弁護士を撃ったってことかい」
「そうよ、あたしが持っているのが、何よりの証拠でしょ」
「そうじゃない、僕が亜利沙に預かって貰っていただけだ!」
「いいえ、あたしが……」
「違う!」
「はいはい、そこまで!」
 宙太、パッと両手を広げて、二人を制止した。
「あとのことは、おまかせってことで。とにかく、その証拠物件を預からせて頂きましょうか」
 そういいながら、亜利沙に近づいた瞬間だった。亜利沙が、拳銃を掴み、銃口を宙太に向けた。
「近づかないで!」


(4−2につづく)


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