星子&宙太yyy

ファンの集う癒しの小部屋です。

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 ――わたしと星子ママが消えてなくなる……そんな……。
 星子、春之介に廊下へ連れ出されたのも気がつかないほど、茫然としていた。
「変なこといわないでよっ。どうして、そんなことになるわけ?」
 春之介、目を伏せながらいった。
「あたしだって、信じたくないわ、そんな怖い話。だけどね、ほんとはあり得ないことでしょ、現在の時間と三年後の時間が一緒になるなんて」
 ま、それはそだけど。
「今、あなたの前にいるあたしも、あそこにいる宙太さんや右京さん、亜利沙さんも、ほんとは三年後の姿よ。時間が重なった時も、今の自分達とは絶対に会うことはなかったわ」
 いわれてみれば、たしかに、宙太もマサルも、右京も亜利沙も、現在と三年後の自分達と一緒になることはなかった。
「でも、星子ちゃんだけは違ってたの。今の時間と三年後の時間をいったり来たり出来たのよ」
「ええ……」
 自分の意志とは関係なかったけどね。
「そのわけは、たぶん、星子ママが光る壁に閉じ込められたからかも……時空の隙間なのかも知れないわ」
「!……」
 星子、ドア越しに居間の奥でまばゆく光る壁に目をやった。星子ママの姿は、さらに輪郭がはっきりとしてきて、顔かたちもわかってきた。気を失ったように、ぐったりとしていて、目も閉じたままだ。でも、宙太のピアノ演奏に反応しているのは間違いない。少しずつだけど、指先が動き始め、瞼がぴくっ、ぴくっと動いている。
「星子ママ、もうじき、意識が戻って光の壁から出てこられそうね」
「ええ」
「今すぐ、あなたはここから離れたほうがいいわ。さもないと、あなたも星子ママも、あの光の壁に吸い込まれて、永久に戻ってこれなくなるから。わかった?」
「でも……」
 春之介、今のドアを閉めると、真剣な顔で星子を見つめた。
「お願い、星子ちゃん、あたしのいうことを信じて! お願いよ!」
「……」
 星子としては、まだ、納得出来ない。でも、春之介は水晶玉で占ったり、未来や過去を読む一種の超能力の持ち主だ。この際、信じるしかなかった。
「……わかった、じゃ、わたし、いくから……」
 星子、春之介を見上げた。
「そのかわり、あとのことは、今度会った時に教えてね」
「……」
 ふいに春之介の目に、涙が光った。そして、星子の手を強く握りしめた。
「春ちゃん? どうしたの?」
「……星子ちゃん、あなたに会えて、ほんとに……」
「やだぁ、じきにまた会えるじゃん。そうでしょ?」
「ううん、もう、あなたと会うことはないわ。少なくとも、今のあたしとね……」
「え?」
「あたしたちは、三年後の世界へ戻っていくの。もし、あなたが伊集院春之介という男と出会うとしても、その時の春之介は今のあたしじゃない。別の想い出しか、作れないわ……」
「そんな!」
 星子、声をつまらせた。
「でも、別の想い出だとしても、春ちゃんとはまた、会えるわけじゃない! そうでしょ!」
「だといいけど……」
「え?」
「あなたの三年後の世界がきまってるわけじゃないのよ。ちょっとした時間のずれで、まったく別の世界に入ってしまうかも……」
「そんな!」
「だから、また、どこかで宙太さんに出会えたら、手を離してはだめよ! あなたと宙太さんで時間を作っていくの。いいわね!」
「!……」
「さ、早くいって! 早く!」
 春之介、涙をぽろぽろ流しながら叫んだ。
「春ちゃん……」
 星子の目にも涙が……でも、もうじき、星子ママが光の壁から出てきそうだ。
 星子、気持ちを払いのけるようにして、ぱっと走り出した。
 外は、夜空に光る満月が明るく照らしてくれている。その明かりに導かれながら、星子は走った。
 頭の中はまだ混乱していて、整理がつかない。でも、さっき、春之介がいったこと……星子の三年後の世界がこうだとはきまっているわけじゃない。ちょっとした時間のずれで、まったく別の世界が開けてしまう……その言葉が、頭の中にこびりついている。
ということは、もし、別の世界に入り込んでしまったら、春之介だけじゃない、宙太パパとも、そして、星丸くんや宙美ちゃんとも二度と会えなくなる。
やだ、そんなの。ぜったいに、いや!
やさしくて、あったかくて、ステキな宙太パパ。かわいくて、おりこうさんで、元気いっぱいの星丸くんと宙美ちゃん。
逢いたい! もう一度、逢いたい!
でも、今頃、宙太パパは星子ママを助け出して、そのあと、家に連れて帰るはずだ。そして、双子ちゃん達が星子ママを嬉しそうに出迎えるだろう。
「おかえりママ!」、「おかえりなさいママ!」って。
 今度こそ、ほんとのお帰りパーティ。さぞかし、盛り上がるだろうな。
 もう、わたしはカンケイない。みんなにとって、わたしは三年前の星子ちゃん、ママになる前のアルバムの中の星子、それだけの存在なんだ。
 星子、悲しくて、つらくて、もう、涙が止まらなかった。
 そういえば、あわてて出てきたので、宙太パパにはお別れのあいさつが出来なかった。せめて、もう一度だけ、そう、もう一度だけ……キス……して欲しかったのに。
 おとなのキスの味を教えてくれたのは、宙太パパだった。ハグしてくれた時の、宙太パパの体の暖かかったこと。スリムなのに、すごく頼りがいがあった。
 ――ああ、もう一度、ハグして。そして、キスして……。
 それが無理なら、せめて、声だけでも聞かせて。
 でも、もう、かなわない望みだよね。宙太パパの気持ちは、きっと、星子ママのほうにいっちゃっている。
 うううっ、妬ける。ちょっと、変だけどね、星子ママは未来のわたしなんだから。
 でも、ほんと、妬けちゃうんだ。そして、泣けちゃうんだよーっ。
 宙太さーん!
 心の中で叫んだ時、ケータイの着信が鳴った。
「もしもし?……」
 星子、取り出した携帯電話に話しかけた。すると、
「星子さんかい? 僕だよ、宙太だ」
「え?」
「あ、宙太パパのほうだけど」
「!……」
 もう、声は聞けないと思っていたのに。
「君が急にいなくなったわけ、春之介くんから聞いたよ。キミとハニィ、あ、星子ママは同じ次元で一緒にいられないって……」
「……ええ……それで、星子ママは?」
「大丈夫、かなり衰弱しているけど、じきに元気になるさ。今夜中には、星丸や宙美のところへ連れて帰れると思うけどね」
「よかった! 双子ちゃん、大喜びね」
「あ、いや、二人は君がママだと思い込んでいたし、別に変わらないと思うよ」
「だといいけど……」
「これも、君のおかげさ。ほんとに、有難う」
「そんな……」
 なんとか、普通の声で答えようとするけど、涙で詰まってしまう。
「それから、右京君のことだけどさ、あのあと、マサル君が医者と一緒に駆けつけてね、これから病院へ運ぶことになってるから。それと、亜利沙さんのほうは、正当防衛ってことになりそうだな。ただし、ピストルの一件はそれなりの罪になるとは思うけどね」
「そう……でも、右京さん、どうして亜利沙さんの罪を着ようとしたわけ?」
「たぶん、亜利沙さんへの贖罪ってヤツじゃないのかな」
「贖罪?」
「つまりさ、亜利沙さんというフィアンセがいながら、右京君、星子ママを愛してしまったわけだし。そのことで、亜利沙さん、ずいぶん心が傷ついたはずなんだ……」
「……」
 それは、きっと、宙太も同じだろう。ただ、言葉にはしないだけだ。
「それで、罪滅ぼしに亜利沙さんの罪をかぶろうとした……同時に、星子ママへの想いも断ちきれると、そう思ったんじゃないのかな」
「……」
 右京の心の優しさが、星子にも伝わってくる。女泣かせの貴公子に見えるけど、すごく純粋な生き方をする男なんだ。
「とにかく、これでもう、すべては片付いたわけだ。もう一度、君にお礼をいわせて貰わないとね」
「そんな……わたしこそ、すごく楽しい思いをさせて貰って……」
「いやいや、僕のほうこそ、すごく楽しかったよ。君とのデート、もう、最高だった。なんていうか、三年前に戻ったみたいでさ……そうそう、キスの味もね……」
「宙太さんったら」
「おっと、ゴメンゴメン」
 宙太の声、明るくはじけた。
 ……そう、宙太パパのキスのこと、一生の想い出よね。唇が、忘れないから……。
「だけどさ、ほんとは……」
「え?」
「もう一度、君と二人きりで話をしたかったよ。ちゃんと、君の顔を見ながらね」
「わたしも……」
「でもさ、星子ママが戻ってきたし、それはもう出来ないんだ。すでに、僕は三年後の世界へ戻りかけているしね……」
「!……」
「これで、お別れだね、三年前の星子さんとは……もう、会うことはないだろうな……」
 宙太の声、寂しそうだった。
 星子も、すごく寂しい。また、涙があふれてくる。
「……わたし、忘れない……宙太さんや双子ちゃんのこと、忘れないから……永遠に……」
「ちょっと、星子さん。いずれ、君は僕と結婚して……双子ちゃんのママに……永遠に忘れないなんて、そんな……星子さん……」
 宙太の声、急に聞こえなくなってきた。
「宙太さん?……もしもし、ね、宙太さん?」 
 星子、懸命に呼び掛けた。でも、雑音が入って、宙太の声は聞き取れない。
 それでも、かすかに、
「あ、もう、お別れだ……さよなら……さよなら、ハニィ……愛してるよ……愛してる……」
 宙太の声、消えていった。同時に携帯電話の画面も暗くなった。
「宙太さん!……宙太さん……」
 星子、携帯電話を握り締めたまま、ワァーッと泣き崩れた。
 その時、ふいに星子のまわりにまばゆい光りの帯があらわれ、たちまち、光の柱となって星子を包み込んだ。
 まぶしい! 目が、目が回る!
 なによ、何が起こったの!
 星子、必死にもがきながら、光の柱の外へ逃げようとした。でも、体は思うように動かない。
「助けて! 助けてーっ」
 大声で叫びながら、星子、次第に気を失っていった。


                      (エピローグへ)



追記 あと一回、エピローグがあります。よろしくです。 

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宙太さんの大きさを感じずにはいられません・・・
やっぱり、(右京さんの事も好きなんですが)星子さんを幸せにして欲しいのは、宙太さんです。
あんなにも長い年月をかけて強い絆を築いてきた2人だもの。
会えなかった時間を乗り越えて、また2人で手を取り合っていけますよね?

あと一回なんだ・・・・
とても、寂しいです。
エンジェル星子さんには未来への希望が残りましたね。
これから先、『ハート色』から始まっていけるのかな・・・?

2人の星子さんが幸せになれるといいな。

2011/2/21(月) 午後 1:28 [ こぱ涼 ]

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うううう〜(T_T)せつな過ぎるっ
惹かれあった時間の宙太さんは未来の人・・・考えてみればそうですが。。。

あ〜そうだけれど 切ない(T_T)

そうかー未来は変えられる、というせりふはよく聞きますが、そうですよね。
この星子さんにとってのこれからが、宙太さんと出会うものでなくなることもあるんですものね、切ない(T_T)

でも、やっぱり宙太さんステキ(*^_^*)
いいなー私もハグしてほしい♪

エピローグ楽しみです。

奥様の退院おめでとうございます。今私の母も整形外科に毎日リハビリ中です。
お互いに、焦らずに 見守りましょう(^o^)丿

2011/2/21(月) 午後 8:48 [ まりも ]

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お久しぶりです♪(^^)
奥様、退院おめでとうございます。
私も本日退院して久しぶりの我が家です。

一月中旬ぐらいから体調が悪くて(特に夜勤の後は一日寝込むくらい)、今月に入って妊婦検診で検査にひっかかりその日に緊急入院となりました(T▽T)
本当は出産まで入院(二ヶ月くらい)と言われたのですが、主治医の先生に何度も退院をお願いして、入浴とトイレ以外安静にすることを条件にしぶしぶ退院を許可してもらいました(^^;)

入院中、家族の事が気になって仕方がなかったです。
きっと入院中奥様も、先生は大丈夫と分かっていても気になって仕方がなかったでしょうね。(^^)

明日うちの旦那の仕事が休みなのでカルピスカレー作ってもらおうかな♪

2011/2/21(月) 午後 8:52 [ ゆず ]

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切なすぎて涙がぁぁぁぁぁぁッ(ノ□<。)'*;.。ウワーン!


最後の電話での宙太さんの『愛してるよ、、、愛してる、、、』と小さく途切れていく声を想像したら、、、もぅ涙が止まらないですぅ(T-T)
エンジェル星子さん、元気になってくれるかな(・ω・。)もぅ胸が締め付けられまくりです(T-T)


エピローグ、楽しみにしています!



奥様の退院、おめでとうございます☆これからリハビリなどで大変だと思いますが、無理なさらず先生自身のお体も大切になさってください♪


この間道端でたんぽぽが咲いているのを見つけました♪今日は梅の花☆
まだまだ寒い日が続いていますが、春はもぅすぐそこに来ているのかもしれませんね(*^-')b


おやすみなさぃ♪

2011/2/21(月) 午後 10:07 [ あろん ]

ピアノで星子ママを助けるのも、高校生の星子ちゃんを大きな愛で包むのも、やっぱり宙太さんなんだよな〜。
どのようなエピローグがあるかわからないし、これからも変わっていくだろう未来はわからないけれど、星子ちゃんたち全員の未来が、幸せになりますように☆

2011/2/22(火) 午前 7:17 くにざわゆう


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