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みちのく・春の恋夏の別れ4
――なぜ、どうしてこの人が宙太さんと一緒の写真を……。
星子、戸惑いながら写真を見つめた。
写真にうつっている宙太の顔、今とそんなに変わりがない。でも、男の人のほうは、別人のように若くて明るく、目も生き生きとかがやいている。どうやら、数年前に撮った写真のようだ。
ふと、男の人が大きく息を吐いて起き上がった。顔色も体の動きも、すっかりもとへ戻ったみたいだ。
星子、あわてて写真を財布に戻し、男の人に手渡した。
「ご、ごめんなさい……大丈夫ですか、お体のほう?」
さっき飲んだ薬は、もしかしてニトロかも。そうすると、心臓病の可能性もある。でも、男の人、なにも答えない。
ま、いいか。一応、治ったみたいだし。
星子、あらためて頭を下げた。
「さっきは、有難うございました」
「いや……」
低い声を呑み込むと、男の人、そのまま、広い背中を向けて歩きかけた。
「あ、ちょっとすいませんっ」
一瞬ためらったけど、星子、声をかけた。
「わたし、流星子っていいます。宙太さんの知り合いっていうか……」
「……」
男の人、立ち止まった。
「あ、あの、失礼ですけど、宙太さんとは……すいません、さっきの写真、見てしまって、わたし……ほんとに、すいません……」
寒いけど、汗が顔に噴き出してくる。
「――」
男の人、背中を向けたまま低い声でいった。
「以前、本庁、つまり警視庁で一緒でね、アメフト仲間だった。さっきの写真は、その頃写したものだ」
そういうことですか。宙太さんと警視庁で一緒だってことは、この人も刑事さんか。
「あ、あのぅ、お名前は……」
男の人、聞きとりにくい声でいった。
「……悠木だ……」
悠木さん、ですか。ちょっとコワモテだけど、カッコいい刑事さんじゃないですか。
「じゃ、もしかして、悠木さんも犯人を追いかけてるんですか?」
「ん?」
「その犯人、奥さんを殺して逃げているって……宙太さんから聞きました」
「美空君から?」
悠木の顔が、一瞬こわばった。
「いつ?」
「今朝です。わたしが乗っていた新幹線の中で。犯人を追って下北へ行くところだって。マサルさんも、あ、三日月刑事さんも一緒でしたけど」
「……」
「連絡取り合ってるんじゃないんですか?」
「あ、いや……」
悠木、曖昧にいった。
もしかして、捜査の秘密ってやつかもね。下北方面の捜査は宙太さんやマサルさんにまかせて、悠木さんは遠野あたりを調べているのかも知れない。とにかく、これ以上、余計なことは聞かない方がよさそうだ。
「じゃ、わたし、これで……」
ほんとは、もっと一緒にいたいけど、捜査の邪魔になる。
「悠木さんのこと、あとで宙太さんには電話しておきますから。きっと、びっくりするでしょうね」
星子、肩をすくめると、一礼して歩き出そうとした。
瞬間、悠木が星子の前に立ち塞がった。
「君、今からどこへ?」
「めがね橋を見てから三陸の恋し浜へいって、今日中に東京へ帰るつもりです。ほんとは、釜石から三陸鉄道に乗って、あちこちゆっくりと観光したかったんですけど……」
観光より恋さがしでしょっ。
「でも、宙太さんから、今日中に東京へ帰れって……いやな予感がするからって……余計なことばっかりいうんです、宙太さんって」
星子、ちょっと肩をすくめてみせた。
「……」
悠木、黙って聞いていたが、ぽつりといった。
「付き合おうか」
「え?」
「さっきのワル共が、また、ちょっかい出してくるかもしれないしね」
「でも、お仕事が……」
「心配しなくていい」
悠木、それ以上はいわずに歩き出した。
ほんとに、いいのかな。そりゃ、悠木さんってカッコいいし、第一、すごく頼りになるし、ちょっと気難しそうで近寄りがたいところはあるけど、一緒に恋スポットを旅するのもいいかも。ううん、もしかすると、卯子酉サマのご利益で、早くもステキな恋に巡り合えたのかもね。それも、大人っぽい恋に……。
なんだか、身体の中が火照って、息苦しくなってくる。星子、胸に手を当てて深呼吸をした。
その時、ケータイの着信音が鳴りだした。ケータイを開くと、相手は宙太だった。
「ハロー、ハニィ!」
相変わらず、のっけから調子のいい声だ。
「なによ、仕事中なんでしょっ」
こっちも、相変わらずのつっぱり声で答える。
「君の声が聞きたくなっちゃってさ。一分一秒でも離れていると、さびしくって、さびしくって。もう、シニソー! 君もだろ?」
「フン!」
「ふふっ、本心と反対の態度を示す。それって、最高の愛の表現だってさ」
「ちょっと!」
「どう、早春のみちのく旅、楽しんでるかい?」
「もちろん」
「今、どこ?」
「遠野の卯子酉神社」
「ああ、恋の願掛けで近頃大人気だってね。君と僕の愛が永遠に続くように願掛けしたってわけか」
「んもぅ!」
どこまでづうづうしいんだろ、コノオトコ。
「それより、宙太さん、わたし、あなたを知ってる人に会ったんだけど」
「僕を?」
「不良にからまれてるところを助けてくれたのよ。名前はね……」
星子が悠木の名前をいおうとした瞬間だった。背後から悠木の手がサッと携帯電話を奪い取って、電源を切ってしまった。
「!……」
(つづく)
追記 日差しは弱いけど、蒸し暑くてうっとうしい日々が続きますね。何とか、乗り切らねばと、ハッパをかけてはいるのですがしんどいです。
しんどいっていえば、星子と星子ママの書き分け、かなり大変です。だけど、それなりに楽しんでます。よろしければ、この先もお付き合い下さい。次回も恋紀行で一区切りつけてから、宙美&星丸編にとりかかる予定です。
追記2 ××さま。あなたのコメント、かなりプライベートな内容が多いので、万一を考えて非公開にさせて頂く場合もあります。どうかご了承ください。
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おっとぉ〜? これはもしかして、もしかしますヨ? 宙太さんの追いかけている容疑者って??(これ以上は言えない
星子ちゃん、いろんな意味で危険な恋探しになっちゃっているかもよ〜?
蒸し暑い日が続きますが、ご自愛くださいネ☆
2011/8/4(木) 午前 9:26
こんばんは! ハラハラドキドキ…。話の展開にスリル感満載です。星子ママもいいけど、やっぱり一人旅のカットビ星子ちゃん素敵です。続きが気になりますが、慌てずゆっくりやってくださいね。
これから暑い日が続くそうです。くれぐれもご自愛ください。
2011/8/5(金) 午前 2:24 [ ピーパル ]
ドキドキ・・・
はらはら・・・
すみません><
ずっとコメントできなくて;;
もう先が気になって仕方ありません^^
佐賀も暑いです〜
先生も体調崩されないように気を付けてください^^
2011/8/9(火) 午前 2:51 [ fumi ]
こんにちは☆
お久しぶりです
最近引っ越しをして、自宅でネットが使えなくなってしまったのでなかなか来れなかったんですが、久しぶりに見てビックリ!!
星子さんが事件に巻き込まれてるじゃないですか〜〜!!
みんなより遅れてドキドキハラハラしています。
悠木さんの事も気になる所ですが、もっと気になったのはチラリと垣間見る事の出来た、宙太さんのアメフト時代…
イラスト集に、アメフト姿の宙太さんの写真が載ってましたよね〜
それを思い出して、1人ニヤニヤしておりますww
毎日暑いです;
こちらは、夜も気温が下がらず熱帯夜が続いています
でも、夏は花火やお祭りとイベント満載で、その場所に行かなくても楽しくなってきますね。
少しの時間でも、そんな夏の風物詩をゆっくりと味わって下さいね。
2011/8/9(火) 午後 1:23 [ こぱ涼 ]
先生がんばってください。応援しています。
東北はお酒もおいしいですよ。
もし以前お送りした北九州の999のお写真がお役にたてたらうれしいです。そういえば・・今日は長崎の日です・・。小倉の人達も、お祈りしていると思います。松本先生は小倉の方でした。999はよかったですね。
たぶん市長さんとお会いされたりしているかもしれません。
2011/8/9(火) 午後 8:41 [ ラブ ]