星子&宙太yyy

ファンの集う癒しの小部屋です。

宙美の結婚

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<……う、ウソだろっ……>
 必死にもがく。でも、体はまったく動かない。
 柔らかくてねばっこい唇、熱い吐息。項へ、そして胸へ。そして……。
<……や、やめろっ……やめてくれっ……>
 声を振り絞ろうとしても、駄目だ。虚しく口が動くだけ。
<……うっ……>
 吸い込まれ、転がされる。
 反応しようとする。
<……駄目だっ……こらえろっ……こらえるんだ……>
 嬲られる。ゆっくりと、弄ばれる。
 うつ伏せにされ、背後からのしかかる影。
<……レイプされるっ……>
 恐怖で震える。
<……ありえないっ……> 
 屈辱で震える。
<……死にたいっ……>
 怒りで震える。
<……殺せ。殺してくれっ……>
 ――なぜ、こんな目に……なぜだっ……。
 口惜し涙がキラッ。
 キラッ。
 ――あの時……。
 そう、あの時、すんなり警察に届ければ良かった。でも、一瞬ためらうものがあった。尊敬する先輩の古賀。医師としても最高だし、人格も性格も最高だ。どうしても、殺人者という言葉と結びつかない。
古賀先輩に直接確かめよう。もし、河合好恵のいう通りなら、いさぎよく自首して貰おう。必ず、説得してみせる。
そう思ったのが間違いだった。

「なんだい、大事な話って?」
 古賀、シャワーを浴びたばかりの爽やかな顔で微笑んだ。
 ベージュのガウンが、ハーフっぽい彫りの深い美顔によく似合う。いかにも高級そうなコロンの香りに、酔いそうになる。
 意気込んで古賀のマンションをたづねたものの、出鼻を挫かれた感じだった。
「宙美さんのことなら、大丈夫だよ。さっき、クルマでお宅まで送ってあげた時も、すっかりリラックスしていた。明日の結婚式、じゃがいも畑の散歩だとおもえばいいよねって。いざとなると、ピシッと度胸が据わるところは星子ママそっくりだ」
 古賀、目を細めるように微笑んだあと、ふと真顔になった。
「幸せにしてあげるから、宙美さんを。僕がそばにいる限り、きっとね。まかせておけよ。いいね?」
「……」
 古賀の暖かな視線には、患者の不安を和らげる麻酔のような効果がある。
 その視線に気持ちが萎えかけたが、何とか払いのけて、ケータイを付きつけた。
「見て欲しいものが、あるんです」
「ん?」
 古賀と山田の痴態の写メールを、次々と見せていく。
 一瞬、古賀の表情が凍りつき、血の気が失せた。
「説明して頂けますか」
「……誰が、こんなものを……」
「山田君の死因も、本当は他殺じゃないかって。どうなんですか? 先輩!」
「……」
 古賀、顔をそむけると、サイドボードの前へ行き、木彫りのケースからタバコを取り出して火をつけた。
「病院じゃ禁煙だけどね、佐々木教授からも厳しくいわれているし」
 そう、チームトップの佐々木教授は、医者の人格、生き方にもうるさい人だ。古賀はチームでも優等生で佐々木教授の信頼も厚かった。
「ま、自分でいうのも変だが、点数稼ぎってことかな。教授に睨まれたら、僕の将来もないしね」
 古賀、肩をすくめながら旨そうに紫煙を吐くと、ふいに星丸を見据えた。
「看護師の河合好恵だね」
「え?……」
「写メールを送ってきた相手さ。ついでに、僕のことでいろいろと君に告げ口をしたんだろうな」
「……」
「いいんだよ、答えなくても。ちゃんと、わかってるから。カノジョ、僕に以前からストーカーまがいのことをしていたんだが、今回、宙美さんと結婚すると知って、こんなろくでもない写真をでっち上げ、ぶち壊そうとしたのさ」
「でも……」
「カノジョ、君を愛してるからやったことだって、そういわなかったかい?」
「……」
 たしかに、そういわれた。
「やっぱりね。大人しい顔に似合わずとんだ悪女だよ。君のまっさらな性格を利用して、君を騙そうなんて。許せないな、まったく!」
「……」
 ほんとだろうか。ケータイから聞こえてきた河合好恵の声は、とても芝居しているとか、星丸をだまそうとしているようには思えなかった。
「そうか、すんなり納得は出来ないか。ま、無理もないな。君の本心ってヤツもあるだろうし」
「本心?」
「そう、正直いえば、君は宙美さんを結婚させたくない。いつまでも、一緒にいたい。もっと、はっきりいえば、宙美さんを自分の妻にしたい……だろ?」
「そんな!」
「いいのいいの、君ら兄妹は特別に仲が良かったしね。恋人気分になっても、おかしくはないさ」
「!……」
「おや、汗をかいてるぞ」
 星丸、あわてて顔の汗をぬぐった。
「じゃ、こうしよう。河合君をここへ呼んで、はっきりと聞いてみようじゃないか。それどうだ?」
「……あ、はい……」
 星丸、かすれた声で答えた。
 そう、それが一番いい。
「じゃ、僕がカノジョに電話するから、君はここで待っていてくれ。そうそう、喉が渇いたろう。僕も湯上りに一杯やりたいし、美味しいカクテルでも作ろうか」
「あ、いいです、そんな……」
「遠慮するなよ、兄弟の杯さ」
 古賀、にっこりと笑うと、カクテルコーナーに入って、なにやらカクテルを作りだした。
 正直のところ、緊張しっぱなしで喉もからからだ。河合看護師がくるまで、一休みするか。 
 そう思って、古賀の作ったカクテルに口をつけた。
 ――それが、失敗だった。
 グラスを干して間もなく、急に眠くなりソファに崩れた。そのあと、どれくらい時間が経っただろう。気がついた時には素っ裸の状態でベッドに寝かされていた。しかも、ベッドの回りには赤いローソクが何本も囲むように立てられ、妖しげな炎を上げている。そして、傍らには、なんということだ、全裸の古賀が彫像アポロンのように立っていた。
「!……」
 なんの真似だ! どういうことだ!
 大声で叫び、起き上ろうとしたが、声は全く出ないし、体もびくとも動かない。どうやら、カクテルに何か薬品が混入されていたらしい。
「美しい、なんて美しいんだ、君は」
 古賀、なんとも淫らな目で星丸の体を舐めるように見た。
「僕が手に入れた最高の恋人だよ」
「!……」
「今から、結婚式をはじめよう。僕と君のね」
「!……」
「そう、僕の本当の結婚相手は君さ。宙美君はあくまでカモフラージュのための花嫁だ。僕は女を愛したことも、抱いたこともない。女なんて、不潔で淫乱でおぞましい生き物だ。唾棄されるべき存在だよ!」
 古賀の目には、憎悪の炎のようなものが光った。
「僕が宙美君との結婚を決めたのは、二つの理由がある。一つは、佐々木教授に気に入られるためだ。宙美君を紹介してくれたのは、教授だからね」
 佐々木教授は、星子ママの友人だった。その縁で、宙美と古賀が知り合い、結婚へと進んだのだった。
「そして、第二の理由は君だ。僕は、はじめから君を狙っていた。かたちだけでも宙美君と結婚すれば君にもっと近づける。そうなれば、君を恋人にするチャンスも増える。そう思っていたが、なんと、君のほうから僕の胸に飛び込んできたってわけだ。嬉しいよ、感謝するよ。さぁ、今から結婚式をはじめよう」
 古賀、ラジカセのリモコンを操作した。すると、ラジカセから、ワグナーの結婚行進曲が甘美な旋律をかなではじめた。
「愛しているよ、君を、永遠に」
 そうつぶやきながら、古賀の裸身がベッドに滑り込み、星丸の裸身をやさしく抱きしめた。
「今から、僕と君は一つになる。一つになり、激しく燃え上がるんだ」
 音楽に合わせて、細くて白いしなやかな指先が、星丸の体をゆっくりと滑り、唇がそっと這う。
 古賀の声が、やさしく囁く。
「僕が、君に無上の快楽を教えてあげる。女と交わる歓びよりも、はるかに高い歓びをね。君は、すすり泣き、声を上げ、もだえ、のたうち、そして、あまりの快楽に気を失い、さらに、夢の世界を漂いながら何度ものぼりつめる。高く高く天界の果てまで。ああ、いとしい人、僕の、いのち……」
 愛撫する。
 舐める。
 噛む。
 咥える。
 吸う。
 這う。
 ……。
<……負けては、駄目だ……負けるな……>
 必死に、こらえる。
 でも、もう、限界だ。
<……オレは、死ぬ……死ぬしかない……>
 涙が、あふれる。
<……宙美……宙美!……>


                         (つづく)



追記 うはっ、どうしてこういう展開になるんだ! 星丸や宙美に悪いじゃないか! ハンセイしろ!
 って、ま、こういうハードっぽい話だからこそ、星丸や宙美が勤まるのかも知れない。兄妹関係ながら兄妹以上の想いの二人。そこに、僕も予期しなかった世界があるのかな。
 ロマンチックな星子シリ−ズとはかなり離れてしまったけど、もうしばらく、楽しんでみます。スンマセン、見逃して下さい。


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