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「劇団わが町」の旗揚げ公演、「わが町しんゆり」で僕は西沢伍三郎という人生の落後者を演じているんですが、彼が生きた時代は日本が列強大国の仲間入りをしようとする熱気と活気にあふれた時代でもあったわけで。司馬遼太郎先生の大作「坂の上の雲」の主人公を通して、そんな時代の空気が熱い程伝わってきます。でも、伍三郎は残念ながらというか、「坂の上の雲」には昇れなかった男でしてね。
伍三郎の人物像については、以前にもこのブログで書いたことがありますが、試演も近いことだし、もう少し人物像を掘り下げてみました。
多摩の生田あたりの郷士の三男坊だった伍三郎は、真面目で勤勉だった兄達に比べて、祭りと酒と女、そして歌と踊りが大好きで義侠心の厚い若者でした。だが、自由民権運動の活動家だった長男は秩父困民党の戦いで官憲に殺され、次兄は新妻を残したまま日清戦争で戦死、伍三郎も日露戦争で瀕死の重傷を負います。その際、同じように負傷したロシア兵と水筒の僅かな水を飲み合ったことがきっかけで、国は違うとはいえ同じ百姓同士、土で生きる男同士がなぜ殺しあわねばならないんだ、という心の叫びをきっかけに、帰国後、自由民権の流れをくむ川上音二郎一座に加わり、壮士劇や歌踊りで平民主義を広げようとします。
しかし、幸徳事件に象徴される国家権力の弾圧に叩きのめされ、音二郎一座とも離れ、その後、浅草オペラの一座に入団。舞台に立ちながら、貧しく虐げられた人民のための活動を続けます。一座の踊り子とも恋に落ち、彼なりにしばし平穏な日々を送るわけです。
ところが、関東大震災で一座は大打撃、震災後の混乱で官憲に逮捕され治安維持法で懲役三年をくらい、出所後、傷心のまま、踊り子と一緒に生田へ戻ってきますが、酒に溺れ、バクチや喧嘩の明け暮れ、女房同然の踊り子にも暴力をふるったり、自堕落な男になってしまいます。
そんな彼に地元の寺の住職が声をかけ、立ち直るきっかけになればと、御詠歌講の仕切り役につけてやります。その温情のおかげで、彼は立ち直っていきますが、時代は容赦なく彼を翻弄し、妻は病死、一人息子も終戦間際に特攻で戦死、彼は多摩川音頭を口ずさみながら多摩川で入水自殺を遂げます。
伍三郎のように、「坂の上の雲」に昇れずに雲の下で朽ち果てた人々は大勢いることでしょう。その思いを伍三郎に重ねて、演じてみるつもりです。そして、伍三郎については、いずれ作品化しようと思います。
舞台のほうは、昨日の稽古から照明が入り、衣装を着てのチェックが始まりました。いよいよ、本番近しです。試演とはいえ、緊張感を持って取り組んでいこうと思います。
追記1 小学校当時、星子ファンだったかたが、御夫婦で試演を見に来て下さるとのこと。なんとも嬉しい限りです。FCクラブのメンバー達も、遠くは山口県から見に来て下さるし、出来れば会場で交流が出来るといいですね。
追記2 本日は、左京君のバースディとか。このオトコ、なかなかもてるんです。口惜しいけど、一緒にお祝いしますか。
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