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「ううん、もう、いじゅわるぅ」
星子が、ワインでほんのり染まった頬を彼の肩にそっと乗せた。彼の襟足から、コロンの香りと男の匂いが入り混じり、星子の血を騒がせる。
「お願い、早くぅ」
とろんとした酔眼で、彼を見上げ、おねだりするように紅いバラのような唇をすぼめる。
「いいのか、ほんとに」
星子の肌に、しっとりとしみこむような声だ。「あとで、叱られても知らないぞ、宙太君に」
星子の耳元で、彼が囁く。
「あ……」
熱い息を吹き込まれて、星子は呻く。
彼のしなやかな指が、星子の唇をそっと撫でる。
「溶けちゃう、もう、ダメ」
喘ぎながら、星子はつぶやく。
「男の時の春ちゃん、こんなにステキだなんて」
――春ちゃん……そう、今星子がしなだれかかっている相手は春之介だった。でも、いつものミスターレディの春之介ではなくて、オシャレなジャケットにマフラー姿の美形の化身のような男ぶりだった。
「やっと、俺の夢がかなうぜ」
春之介は、少し上ずった声でいった。「星子ちゃんを、いや、星子さんを男として抱く夢がさ」
「春ちゃん、わたしも……」
星子が、熱い息でつぶやいた。「わたしも、夢見ていたわ」
「オトコの僕に抱かれる夢かい」
「ええ、っていいたいところだけど、違うの」
「違う?」
「わたしの夢はね」
星子は、いきなり春之介の肩を掴み強く引っ張ると、その場に押し倒し、のしかかった。
「わたしの夢は、男になって春ちゃんを抱くことなのよっ」
「ええっ」
「覚悟なさいな。体じゅうの血を吸い取ってあげるから」
凄味のきいた笑顔で、星子は春之介の襟首にかぶりついた。
「せ、星子ちゃん、あなた……」
「そうよ、ドラキュラ娘よ」
微笑む星子の口元から、一筋の血が滴り落ちた。
「キャーッ」
嘘だろう。きっと、これは嘘なんだ。
春之介は、薄れていく意識の中で自問自答した。
「きょうは、4月1日、エイプリルフールだ。すべたは、嘘、夢の世界さ。きっと、そうさ……きっと……」
追記 桜の花、まだまだ、しっかりと咲いてますね。オレも頑張らねば。あ ん? なんのこっちゃ。
今月は、稽古なし。お休みです。でも、なまけずにベンキョウしなくて は。花見酒で酔っぱらってる場合じゃないぜ、伍三郎さんよ。
役者魂、物書き魂っていうだろうが。伍三郎の人生でホンを一作書い て演じてみろ、それくらいの気構えを持てよ、え、浦さんよっ。あと何 回あったかい春を迎えられるのか、わからないんだぜ。
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