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――あの人は、もう、帰ってこない。きっと、永遠に帰ってこない……。
宙太さんや右京さん達は、
「そんなことないさ、マサル君は不死身なんだ」とか。
「そのとおり、どんなことがあっても、死んだりしないさ」とか。
「カレの激しい刑事魂には、死神も尻尾を巻いて逃げだすぜ」とか。
いろいろいって、あたしを慰めてくれる。
でも、あたしには、わかってる。マサルさんは、もう、生きていない。
二度と帰れない、遠いところへ行ってしまった。
あれは、三ケ月前の嵐の夜のこと。逃走中の凶悪殺人犯を知床半島まで追い詰め手錠をかけた直後、抵抗して崖から落ちかけた犯人を助けようとして足を滑らせ、波濤渦巻く真っ暗な海に落ちて、それっきり行方が分からなくなってしまった。
宙太さんをはじめ警察や消防隊、地元の人達が大掛かりな捜索隊を作って懸命に探してくれたけど、今もマサルさんの行方は掴めていない。でも、つい二日前のこと、マサルさんのマフラーが、あたしが編んであげた純白のマフラーが知床の海に浮かんでいるのが見つかり、宙太さんが届けてくれた。
たぶん、マサルさんは蒼くて深い知床の海の底に吸い込まれてしまったに違いない。
北の海が大好きだったマサルさん。いつか時間が出来たら、あたしと二人で知床の海を見に行こうと約束してくれた。
「その約束は、忘れていないよ」といいたくて、マフラーだけを残していってくれたんだ。
そして、そのマフラーは今、あたしが抱きしめている。
かすかな潮の香りが、マサルさんの体の匂いに思えてくる。
――ああ、マサルさん……。
こうしてベッドに寝ていると、マサルさんに抱きしめられているような気持ちがしてくる。
お仕事でどんなに遅くなっても、どんなにつらくて厳しくて嫌な捜査のあとでも、マサルさんはシャワーでサッパリと洗い流した後、あたしをベッドに運んで寝かしつけてくれた。
「ゴメン、心配で眠れなかったろう。でも、大丈夫だよ。僕は、どんなことがあっても、きっと、君のところへ帰ってくるから。こうして抱きしめてあげるから。けっして、君を一人ぽっちにはしないから。さぁ、目を閉じて、僕の胸の中で、おやすみ」
あたしを暖かい胸に抱きしめながら、そういってくれた。
――マサルさん……。
涙が、とまらない。あたし、一人で寝るなんて出来ない。寂しくて、悲しくて、もう死んでしまいたい。
――マサルさん、お願い、帰ってきて。いつものように、やさしく抱きしめて……マサルさん……。
泣きながらマフラーを抱きしめていた時だった。ふいに、暖かいそよ風があたしをやさしく包んだ。
この感触、マサルさんのぬくもりに似ている。
まさか、そんな、マサルさんが……きっと、夢よ、夢を見ているんだ。
でも、夢なら醒めないで。このまま、マサルさんに抱かれていたいから。
ずっと、いつまでも。
「――ただいま……」
マサルさんの声。
夢、ね。
「心配かけたね、ごめん、でも、帰ってきたよ、約束してるからね……けっして、君を一人ぽっちにはしないって……」
耳元で囁く。
これも、夢、夢なんだ。
「さぁ、おやすみ、もうなんの心配もいらないよ。安心しておやすみ……僕のいとしい人……」
マサルさんの手があたしを抱き寄せる。
……夢……ちがう、このぬくもり、肌の匂い、手ざわり……マサルさんだ。
帰ってきてくれたのね、マサルさん、あたしのところへ帰ってきてくれたのね。
ありがとう、マサルさん。
ありがとう。
追記 添い寝びとシリーズ、三回目です。二回目の仮面男が誰か、ま、想像にお任せするとして、あと何回か、チャレンジしてみます。よろしければ、御一読下さい。さて、次回は誰にしますかね。
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今回はちょっと切ないですね〜
マサルさんは原作の中でも辛い目にあう事が多くて、だからこそ、幸せになって貰いたいです。
っていうか・・・
不純ですが、硬派なマサルさんの口から、こんなに甘いセリフが出ると萌え倒れそうです
2013/4/16(火) 午後 3:42 [ こぱ涼 ]
ただ今帰りました(*^_^*)ゝ
毎日 ブログを覗いては、更新を楽しみにしています。
体力勝負の仕事から帰って、コーヒー片手に先生の小説を読んでリフレッシュしてます〜
いいなあ星子さん。いつでも恋心を持てて
女性として羨ましい限りです〜
2013/4/16(火) 午後 4:14 [ まりも ]