星子&宙太yyy

ファンの集う癒しの小部屋です。

あきらめ唄は歌わない

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相変わらずの猛暑ですね。お互い、くれぐれも、体調には気をつけましょう。
ところで、チャレンジしていた芝居の台本、なんとか完成しましてね、ま、テレビや映画の脚本は以前かなりの数を書いてきましたが、演劇台本というのは初めてなんです。しかも、星子と宙太がコラボで出演するし、星子シリーズとの縁もあり、皆様にも読んで頂けないかと。とりあえず、今回は「あらすじ」を掲載しますので、よろしくです!

なお、この台本は、今年、『わが町しんゆり』(ふじたあさや作)という舞台で、僕が演じた伍三郎というキャラがベースになっています。






(あらすじ)


 流星子はストリート・ミュージシャン、今日も新百合駅前でギターを弾きながら歌っていたが、足を止めるものは誰一人いない。落ち込んでいるところへ、作務衣姿の老人・西沢伍三郎が「あきらめ節」を歌いながら現れた。星子は自分がからかわれているのかと思ったが、伍三郎は「夢乃、探していたぞ!」と抱きすがる。星子の悲鳴を聞いて駆けつけたのが、介護施設で働く陽気な若者・美空宙太だった。しかし、伍三郎の姿は忽然と消え、目撃者もいないことから、星子の錯覚か妄想だと宙太はいう。
ところが、そのあと、星子の前に、再び伍三郎が現れた。伍三郎は死と生の合間を彷徨う男で、星子に良く似た夢乃という女を探していた。夢乃は伍三郎が生前、といっても、大正時代の話だが、一緒に暮らしていたレビューガールだった。しかし、昭和二十年の夏、苛酷な人生に挫折した伍三郎を、歌を作ることで再起させようと、あえて家を出て行方知れずになっていた。
 明治の初めごろに生まれた伍三郎は、若い頃から歌芝居で世直しをという理想に燃えていた。その伍三郎が、なぜ、「あきらめ節」を歌うようになってしまったのか。星子も愛する人との結婚が壊れて以来、歌作りにいき詰まっていたこともあって、伍三郎の人生を見ようと、過去の時間へとびこんでいく。宙太も、星子をほっておけずにあとを追った。
               ○
伍三郎が生まれ育った頃の日本は、戦いに明け暮れる苛酷な時代だった。伍三郎の生家は多摩の郷士の家で二人の兄がいたが、長兄の新一郎は秩父困民党に参加して捕まり処刑された。九年後、次兄の正二郎は、伍三郎の憧れのマドンナ、華族の娘・麗子と結婚式を挙げるが一週間後に出征して戦死する。麗子は夫の戦死を認めず、この家で帰りを待つという。伍三郎は、正二郎が遺品としてくれたハモニカを手に世直しの歌芝居を続けようとする。当時、ハモニカは日本に入ってきたばかりで、貴重な品だった。そのハモニカが、十年後、日露戦争に出征した伍三郎とロシア兵を結びつけた。
「俺たちは仲間、同じ百姓だ。なぜ、殺しあわなきゃいけないんだ」。すっかり意気投合したが、その直後、ロシア兵は流れ弾に当たり、死んでしまう。
                ○ 
そのつらく悲しい体験が、伍三郎をさらに反骨の歌芝居に向かわせたが、大逆事件のとばっちりで捕まり、刑務所送りとなる。数年後、娑婆へ戻った伍三郎は、当時人気があった浅草レビューのコーラスボーイになる。その一座のコーラスガールの中に夢乃がいた。夢乃は伍三郎と同じ「あきらめ節」を歌う。そして、その歌が二人を結びつけた。だが、麗子への想いが消せない伍三郎には、夢乃は愛しさだけで抱くだけの女だった。ところが、関東大震災のあとの自警団による虐殺から夢乃を救いだしたことから、二人の心は繋がった。
地元に逃げのびた伍三郎は悪童仲間だった住職の助けで納屋を借り、夢乃と二人で暮らしはじめた。寺の仕事を手伝い、御詠歌講や多摩川音頭の世話をする日々は、久しぶりに味会う安穏な時間であった。そして、夢乃は伍三郎の子を身籠る。伍三郎は、夢乃や生まれてくる子供のためにも、もう一度、世直し歌芝居をはじめようと決心する。しかし、夫の帰りを待ちつつ錯乱してしまった麗子の哀れな姿を見た伍三郎は、戦争成金の男達に大けがをさせ、再び刑務所へ送られた。今度の刑期は長く、夢乃はそのショックもあって、流産してしまう。
                 ○ 
返ってきた伍三郎は、脱げガラのようになり、酒に溺れ、夢乃との仲も冷え切っていった。その間に、時代は破局へと向かう。特攻に向かう学徒兵二人にフレンチカンカンの踊りを泣きながら見せてやったのが最後の歌芝居となった。
そして、敗戦。腑抜け状態の伍三郎の前から、夢乃は消えた。磨き上げたハモニカを残して。伍三郎に、今度こそ歌を作って貰おうと願ってのことだった。伍三郎は、夢乃を探し求め、その途中で多摩川に落ちて、時空を彷徨い、夢乃に良く似た星子の前に現れたのだった。
 星子は世直しの英雄を目指しながら、なりきれなかった伍三郎という人間に、かえって心を動かされた。そして、母に見捨てられたという同じ翳を背負った夢乃に自分を重ねるうちに、夢乃になりきり、伍三郎のいる世界へ残ろうとする。伍三郎も星子に夢乃への想いを重ねてはいたが、あえて、星子を宙太に託して帰らせるのだった。
 数日後、多摩川音頭の祭りがはじまった。星子と宙太は、その踊りの輪の中に伍三郎と夢乃の姿を見つけた。「逢えたのね、夢乃さんに!」「おめでとう、伍三郎さん!」と、声をかける星子と宙太に、伍三郎と夢乃は微笑んで答えると、静かに消えていった。
「わたし、あきらめ唄は、もう歌わない。伍三郎さんの思いも込めて、新しい歌を作るわ」
 星子は、そう誓うのだった。
                            



(以 上)


追記 台本の掲載は前半のみ、全編は次回の同人誌で掲載予定です。よろしくお願いします。


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