星子&宙太yyy

ファンの集う癒しの小部屋です。

死神刑事かげろう

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1―5

凄まじい閃光、爆発音、激しい銃声、突撃する歓声、悲鳴、絶叫。
スクリーンに、幟や旗、燃え上がる炎。
星子と宙太、煽られるように現れる。
宙太「なんとも凄い所へきちまったな。どこなんだ、ここは? 戦場か?」
星子「らしいけど……」
すぐ近くで、閃光と爆発音。
星子、悲鳴を上げて宙太に抱きつき、あわててとびのいたとたん、人影にぶつかる。
星子「伍三郎さんっ」
その人影は、伍三郎である。
伍三郎「(星子に)きちゃいけないって、きつくいっただろう。生きたまま帰るのは、難しいところなんだぜ、ここは」
宙太「そ、それって、ほんとですか? 困るな、僕には仕事が……それでなくても介護の仕事は人手不足なのに、仲間に迷惑かけちゃいますよぅ」
星子「ね、伍三郎さん、わたし、知りたい、歌のこころっていうのを……」
伍三郎「それは、お前さん自身で掴むことだぜ」
星子「それが出来ないから、追いかけてきたんです。あなたなら、きっと、教えてくれそうな気がして……」
伍三郎「でも、お前さんの生きてる世界と俺の生きた世界は違い過ぎるぜ。俺が生まれ育った時代は、ずっと、こんなだった……」
伍三郎、スクリーンに向かう。
伍三郎「国の中での戦争、国の外での戦争、火薬の匂い、飛び散る血、吹き飛ぶ体、悲鳴、泣き声、爆発、鉄の嵐!……地獄よ、この世の地獄……」
星子「それでも、夢乃さんを愛したんでしょ?」
伍三郎「いいや、俺はあいつの人生をめちゃめちゃにしちまった。それが愛って呼べるか!」
星子「夢乃さんはどう思ってたんですか?」
伍三郎「聞いてどうする? 聞くこともねぇ!」
星子「どうして?」
伍三郎「あいつはな、身投げしたんだ」
星子「えっ」

       スポットライトに浮かぶ夢乃、日傘をさした浴衣姿。夕顔の花を手に持ち、浅草オペラの歌を、けだるそうに口遊む。そのまま、スクリーンの影へ。

伍三郎「きっと、俺に絶望したのさ、歌芝居をあきらめた飲んだくれの負け犬によ! 
もちろん、必死に探したぜ。でも、どうしても見つからねぇ。そうこうするうちに、
やけ酒がたたって俺にお迎えがな。……でも、すんなりとあの世へいくわけには……
どうしても、夢乃に詫びをいいたかったんだ。俺が悪かった、もう一度、歌芝居を作るから、堪忍してくれって……」
星子「もう一度、歌芝居を?」
伍三郎「うむ、夢乃に何度もいわれてさ……」

       スポットライトに、浴衣姿の夢乃が浮かぶ。
夢乃「歌ってあげて。いいお芝居見せてあげて。もう、ひどい目に合わずに、思いのままに歌が作れるし、お芝居が出来るんでしょ。だから、ね、お願い! あんた!」

伍三郎「でも、その時は俺、出来ねぇって突っぱねたんだ。芯から負け犬だったんだ。そのあと、夢乃は……」
星子「……」
宙太「……」
伍三郎「でもな、いくら探しても、夢乃は見つからねぇ。余程この俺に愛想尽かしをしたんだろうな。もう、二度と俺の顔なんざ見たくねぇって、それで遠い所へいっちまったんだ」
星子「そんなこと! 夢乃さんは、どこかで伍三郎さんが迎えに来てくれるのを待っている……きっと!」
伍三郎「ふっ、お前さんに何がわかる!」
星子「ううん、わかるわ。わたしには、夢乃さんの気持ちが……自分でも不思議だけど、なんだか、わかるような気がして……伍三郎さん、わたしのこと、夢乃さんに似てるっていったけど、それって、もしかして、気持ちが似てるってことかも……」
伍三郎「!……」
星子「わたし、夢乃さんに会いに行きます! 会って、気持ちを聞きたいんです。この時代なら、会えるんでしょ?」
宙太「お、おい、星子さんっ」
伍三郎「いいや、そいつは無理だ。昔の時代に入ることは出来ないんだよ」
星子「でも、近くで見ることは出来るでしょ? きっと、伝わってくるはずだわ。夢乃さんの気持ちが……あなたのことを、どんなに想っているかって……その想いが、今も伍三郎さんとつながっているはずよ!」
伍三郎「……」
星子「わたし、ほんとの愛っていうのを知りたい、それを歌にしたい!」
伍三郎「でも、お前さん、こういったよな、愛は信じられないって……」
星子「ええ……」
伍三郎「だったら、なぜ?」
宙太「星子さん……」
星子「……」
       星子、躊躇った後で、左手の袖をまくる。ためらい傷の痕が幾本も刻まれている。
宙太「星子さんっ」
伍三郎「……」
星子「わたし、結婚を約束した人がいたんです。音大の先輩で、今、海外からも注目されているオペラ歌手です……」

       スポットに浮かび上がる、若いオペラ歌手。甘美な愛のアリアを歌う。

星子「まるで、歌うためにこの世に生まれてきたような人でした。二人で会うといつも一緒に歌ってくれて、もうこのまま死んでもいいと思えるくらい幸せな気持ちに……式の日取りも決まって、新婚旅行はヨーロッパでオペラ三昧の旅をしようって、そして、あの人、そう、あれは式の二日前、今でもはっきりと覚えてます。海辺のホテルの夜景がきれいなレストランで食事しながら、わたしにいったんです、『もちろん、歌うのは家の中だけにしてくれるよね』って……」

       歌い続ける、オペラ歌手。
 
星子「わたし、無理だっていいました。歌だけが、わたしをずっと支えてくれた、一人ぽっちで悲しい時も、ひどいいじめにあって生きるのが辛い時も、歌がわたしを救ってくれたんです。だから、皆にもわたしの歌で元気になって欲しい、くじけないで欲しい、そのためにも、歌は続けたい、歌わせてほしいって……」

スポットが消えて、若いオペラ歌手の歌声が次第に遠くなる。

星子「結局、結婚は駄目になりました。そして、わずか一年もたたないうちに、あの人は年上の超セレブな人と結婚して、海外へ……そして、その人の後押しもあって、どんどん階段を昇って行ったんです。いったい、あんなに愛し合っていたわたしたちの愛情って、なんだったんだ。こんなに簡単に崩れて消えてしまうなんて、わたし、もう、生きる力もなくなって……それで……」
       星子、手首を抑える。
星子「でも、伍三郎さんから夢乃さんのことを聞いて、ほんとの愛というものがあるんじゃないか、って……あきらめない愛が、あるんじゃないかって……」
伍三郎「……」
星子「ごめんなさい、自分勝手なこといって。でも、わたし……」
伍三郎「……」

       スポットに浮かぶ、夢乃。
夢乃「〽(私、もう、あきらめ唄は歌わない。三重唱の一部)
    あたしは、もう、あきらめ唄は歌わない
    二度と人を信じないと誓ったあの頃
    二度と人を頼るなと自分にいい聞かせたあの頃
    でも、今、あたしの前には道が見える 愛の光さす道が……」
 
伍三郎、ふいに星子の腕をつかみ、
伍三郎「ついてきな」
星子「いいんですか?」
伍三郎「ただし、どんなことがあっても、相手と係っちゃならねぇ。いいかい」
星子「はいっ」
伍三郎、星子を連れて下手へ去る。
宙太「あっ、星子さん! しゃあないな、もう!」
宙太、後を追っていく。


                        (つづく)



追記  ためらい傷なんて、星子シリーズの星子とは、ちとキャラが違う感じだけど、もし、星子がシリーズとは違う生き方をしたら、という解釈でお話を作っているわけです。人の運命は、もしもあの時、ああしていたら、という別れ道がいくつも重なっていますよね。伍三郎の過去を辿る星子の時間旅、果たしてこの先、どういうことになるのだろう。


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