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星子一人旅シリーズ番外編
恋の招き猫はピンク色・1
「フニャーゴォ」
ん? ゴンベエのやつ、いつになく、大きな声で鳴いている。それも、ドラ声じゃなくて、どこか、媚びるような、甘えるような……そう、ちょっと、セクシーっぽい鳴き声だ。
ゴンベエとセクシー、あまり、というよりは、まったく、カンケイない話だけどね。
でも、じきに、ゴンベエの鳴き声、どこか、せつなそうに、そして、哀しそうに変わってきた。
なんじゃい、もう、うるさいなっ。
こっちは、期末テストを明日に控えて、猛勉強中だっていうのに!
あ、猛勉強っていうのは、誇大表示でしょ。ほんとは、次の旅のプランをガイドブックを見ながらオベンキョウしてたくせに。
バレたか、うふっ。
ま、それはともかく、星子、シャープペンを勉強机に放り投げると、ベランダへ目をやった。
ゴンベエ、ずんぐりした体を手すりの上にドテッと乗せ、夕空を見上げながら、鳴いている。
今まで見たこともないような、寂しそうな姿だ。いつもなら、たらふくハンバーガーを平らげ、何事も我関せず、といった顔で、眠りこけている、そんな典型的なドラネコぶりを見せてくれるゴンベエなのにね。
「ちょっと、ゴンベエ! 静かにしてよ。ベンキョウできないよっ」
星子がとんがった声でいっても、ゴンベエ、夕空を見上げたまま、フニャ、フニャーゴ……とくる。
かわいいハンサム猫ちゃんなら、サマになるけど、ゴンベエじゃ、目障り耳触りになるだけ。
「こらっ、ゴンベエ! ゴンスケ!」
アタマにきてベランダへ出たとたん、ゴンベエ、な、なんと、手すりからジャンプ、ううん、転げ落ちた。
「ゴンベエ!」
今住んでいるマンション、八階だ。フツウの猫でもやばいのに、ゴンベエは運動不足の肥満ネコ。助かるわけがない。
星子、真っ青になって部屋から飛び出した。
(つづく)
追記
かなり遅くなりましたが、キリ番短編をプレゼントします。ゴンベエが主役の、ほんわか楽しく、ほんわか哀しいショートなオハナシで、三回ほど予定しています。うまく展開してくれるといいのですが……なんせ、主役がドジで図々しい、ナマケモノの大食漢、おまけに、かわいげのないドラネコですので……。
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