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……信じられない……。
集中治療室のベッドに寝かされ、酸素マスクや何本もの点滴を受けている患者が、宙太だなんて、星子、どうしても信じられなかった。
「オレ、美空警部にいったんだ、無理するなって……」
マサル、星子の隣りで、つぶやくようにいった。
「手配中の銀行強盗を路地に追い詰めたんだけど、ピストルで自殺しようとしてさ、でも、犯人を死なせるわけにはいかない、罪をつぐなえば、人生をやり直せるからって……美空警部はそういう人間なんだよな……で、自殺を止めようと、そっと近づいた時、急に小さな子供がとびだしてきてね、驚いた犯人がその子に拳銃を向けたんだ。で、美空警部は助けようとして……自分が楯に……」
「!……」
「犯人の撃った弾が、警部の左の胸に……ひどい出血でさ……」
「やめて、マサルさん!」
春之介が、マサルの前にとびこんだ。
「星子ちゃんに、そんな話聞かせないで!」
「……」
マサル、すまなさそうな顔で離れた。
と、右京が星子をなぐさめるようにいった。
「大丈夫、美空警部は助かるから、きっとね」
「そうさ、天国のカミサマに追い返されるのがオチだぜ。こんな図々しいオトコは、付き合いきれないってさ」
左京が調子を合わせると、タケルも、
「カミサマにとっちゃ、とんだクリスマス・プレゼントだよな」
と、笑顔を作り、ゲンジロウも、
「宙太のヤツ、星子ちゃんのファーストキッスは、自分がいただくって、はりきってたしな。あ、わてのほうが、先やけど。へへへっ」
「おい!」
圭一、マジに怒った顔でゲンジロウを睨んだ。
みんな、なんとか、星子を落ち着かせようとしてくれている。
その気持ちは嬉しいけど、星子、ただ、茫然とするだけだ。
手のひらに握り締めたこの指輪のケース、たしかに、宙太が届けてくれた。でも、その宙太は、こうして、目の前で危篤状態でいる。
いったい、どういうことなんだろう。
夢、であってほしい。今、この時間は夢なんだ。きっと、そうだ。
星子、懸命に自分にいい聞かせた。
(つづく)
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