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ああぁ、結局、こういうことになっちゃうんだよね……。
星子、ため息混じりにつぶやいた。
車窓には、きっかいな形の山塊が春霞の中に連なっている。たしか、妙義山だっけ。遠く、ひときわ高く、残雪を頂いた山が聳えているけど、あれは、浅間山よね。
妙義山とか浅間山、他にも、赤城山や榛名山が車窓の左右に見えるってことは、ハイ、そうです、星子、長野新幹線に乗っているってわけ。
行く先は、雛人形展をやっていた千曲市の蔵屋敷だ。
なぜ、そんなところへ、わざわざ? 雛人形展なんか、とっくに終わっているはずでしょ。
はい、もちろん。目的は、あの時の想い出ノートを見せてもらうこと。赤いリボンの帽子をかぶっていた女の子の名前とか住所がどこかに書いていないか、それを、確かめたいんです。
はん? どうして?
星子には、もう、カンケイない話じゃん。天川光って人が、勝手に星子だと決めつけて、ラブレターを送ってきただけだ。
ほっとけば。ほっとけ、ほっとけ。
てなわけには、いかないのが、星子さんだ。
天川光サンは、助かる確率がほとんどない手術を受ける。でも、あの赤いリボンの女の子と会えば、奇蹟が起きて手術が成功するかも。そのためにも、なんとか、あの女の子を見つけて、待ち合わせ場所へつれていきたい。
星子にとって、愛は命。だから、たとえ、自分とは関係のない他人様の愛であろうと、しっかりと結ばせてあげたい。愛する人は、みんな、幸せになって欲しい。
星子って、そういう女の子なんだよね。
もう一度、いわせて。
星子、愛は命。
でもって、いてもたってもいられずに、我が家を飛び出して、昼下がりの東京駅から長野新幹線に乗り込んだってわけ。
おともは、例によってゴンベエくん。のんびりと昼寝するつもりだったのに、ほんと、迷惑千万ってな顔したまんま、そのまんま、リュックの中でふて寝している。
ならぬカンニン、するがカンニンだぜ、ゴンベエ。
でも、こういう旅って、星子にははじめてかもね。星子チャンのたびのテーマは、いいオトコさがし、いい恋さがしの一人旅、これで、決まりっ。
――もし、宙太さんに見つかったら、なんて、いわれるかな……。
いつも、星子が一人旅に出かけると、きっと、あらわれる宙太クン。今のところ、姿を見せる様子はない。
このまま、あらわれないほうがいい。
どうせ、わかりっこないよね、あのオトコには。わたしの頭の中は、恋しかない、と、思い込んでいるだろうしさ。
ほんと、単純なヒト。
星子が、クスッと肩をすぼめた時だった。
「はーい、ハニィ、おまっとうさん!」
という声と一緒に、ぐいと差し出されたのは、ご存知、峠の釜飯弁当だ。
「ん?」
振り仰いだ星子、思わず、キャハッツと声を上げた。
なんと、宙太がニカッと笑いながら立っていた。
(つづく)
追記 なんか、宙太クンがあらわれたりして。この先、思いやられます。この連載、連休中は飛び飛びになるかもしれませんので、よろしく!
ところで、いよいよ、連休まじかですね。素敵なヒトと、すてきなことして楽しんでくださいね。くくっ、ヤケルゼ!
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