星子&宙太yyy

ファンの集う癒しの小部屋です。

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「キ、君が……宙太クン?……」
 わたしは、思わず目をこすりながら、宙太を見つめた。
「イメージ、合いませんか、センセ?」
 宙太は、軽い笑顔でわたしを見返した。
「ま、無理もないか。星子さんや他のレギュラー達もそうだけど、三人の挿絵画家サンによって、それぞれ、顔や髪型、スタイルが違いますからね。本人の俺達も戸惑ったまんまでして。んな、ハニィ?」
「まぁね。それより、ハニィっていいかた、やめてって、いってるでしょ。わたし、そんなんじゃないんだから」
 星子が唇を尖らせたが、宙太はニヤリとウインクで応えた。
「好きな人には、本心を隠す。いいなぁ、そういうカマトトぶりがたまらないっす、ハイ」
「ちょっと!」
「ま、ま、ま……」
 わたしは、なだめるように星子を手で制した。
 二人のやり取りを聞いていると、確かに、わたしが作った二人のキャラにほぼ一致している。どうやら、宙太もわたしの本の中から抜け出てきたようだ。
 星子といい、宙太といい、コバルト本の三者三様の挿絵キャラとどこか似ているようで違っているような……ま、あるがままを受け入れるしかないようだ。
「だけど、なによっ」
 星子は、ふくれっ面のままで宙太にいった。
「どうして、いちいち、わたしの前にあらわれるわけ?」
「申すまでもないこと」
 宙太は、左手を胸に当てると、片膝をついて、頭を下げた。
「姫をお守りするのは、ナイトの使命にございます。命ある限り、旅のお供を仕りまする」
「また、それをいう!」
 星子の眉が、きりりっと吊り上がった。
「わたしにはゴンベエがいるし、ガードマンなんかいらないの。それにね、今回の旅はパパと一緒だし、危ないことはないから」
「とんでもない! そのパパが一番キケン、真っ赤っかの赤信号なんじゃ」
 宙太は、わたしをピタッと指差した。
「ボ、僕が?」
 唖然となったわたしをかばうように、
「パパのどこがキケンなのよっ。デタラメいわないで!」
 すかさず、星子がいった。
「パパは、わたしを作ってくれた人よっ。ヘンなことするわけないじゃん」
「ところがどっこい! 作者っていうのは、自分の憧れる女性を主人公にする。つまり、星子さんはセンセの好みのタイプの女子高生ってわけ。昔、ロリコン趣味なんて言葉がはやったらしいけど、もしかして……」
 とたんに、バシッ。
 星子の平手打ちが、宙太の頬に飛んだ。
「パパを侮辱する気なの! これ以上いったら、タダじゃおかないから!」
「チョー気持ちいい! 好きな子にぶたれるのって、サイコウ!」
「ゴンベエ、スタンバイよ!」
 その声に、ゴンベエくん、フーッとうなりながら、リュックの中から宙太を睨みつけた。
「わ、わかった。わかりました」
 宙太は、あわてて後ずさりした。
「ま、とにかく、一応、忠告だけは……」
「うるさーい! 早く消えて!」
「ハイハイっ」
 宙太は、デッキから隣りの車両へ走った。
「たくもぅ!」
 星子は、憤然と見送ったあとで、わたしに頭を下げた。
「ごめんなさい、パパ。宙太さんを許してあげてね。悪気はないんだから」
「わかってるよ。多分、君が僕に優しくしているんで、ヤキモチでも妬いたんだろう。それだけ、君に惚れてるってことさ」
「やだ、お呼びじゃないよ。ね、シチュエーションを変えてくれない? 宙太さんが好きなのは春ちゃんだとか……」
「それは無理な注文だな。あきらめなさい」
「ケチ」
 星子は、唇を尖らせたあとで、チラッとわたしを見上げた。
「ね、パパ……」
「ん?」
「さっき、宙太さんがいったこと、ほんと?」
「なにが?」
「作家さんって、自分の好きなタイプの女の子を主人公にするって……」
「まぁ、当たらずといえども、遠からずかな」
「じゃ、わたしを主人公にしたのも、パパが、もしかして……」
「……」
 わたしは、答えに詰まった。
「ね、どうなの、パパ?」
「今、いったろう、当たらずといえども、遠からずって」
「パパ……」
 なんとか、ごまかしたあとで、
「さ、もう遅いから、休んだ方がいいな」
「函館には、何時に着くわけ?」
「えーと……」
 わたしは、ポケットから取り出した時刻表をめくった。
「今、僕等が乗っているのは、青森を22時42分に発車した急行『はまなす』だ。函館には深夜の一時丁度に着く」
「わぁ、真夜中じゃん。爆睡のお時間でーす。パパ、起こしてくれる?」
「ああ」
「きっとよ」
 星子は、私の小指に自分の小指をからめてきた。
「心配ないよ。ボディガードの君を置いていくわけがないだろう」
「そうか、そうよね」
 肩をすくめた姿が、なんとも、可愛い。
 デレッとなってしまう。わたしである。まったく、歳甲斐もない男だ。ハンセイ。
「で、パパの切符、指定席?」
「うん、そうだけど」
「隣の席、あいてるかな」
 ということで、車掌に聞いてみたところ、残念ながら、今夜は週末で団体客も乗っていて、万席とのこと。
 ザンネン。
 といって、自由席に乗ると、宙太がまた、すり寄って来る可能性もある。幸いというか、この列車には女性専用車が連結しているので、星子はそちらのほうに乗ることになった。
 しばし、星子とはお別れだ。
 ホッとしたというか、でも、ちょっぴりさびしい気分で、わたしは指定席の車両に移って、シートに体を沈めた。
 失った恋の想い出をたどる旅が、こんな展開になるとは。はたして、この先、どういうことになるのか。わたしの作品が生み出した主人公だし、このまま、無事に旅が続けられるとは思えない。
 やれやれ、まいったな。
 そう思いながらも、星子と一緒に旅が出来ることに、なんだか、気持ちがわくわくしてくるわたしであった。あとで、命が狙われるような事件に巻き込まれるとも知らずに……。


追記  わたし、を、書くというのは、難しいものです。それだけ、わたしは偽装していることかもしれませんね。もっとも、恋ほど自分を偽装する時はないでしょうね。

  

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