星子&宙太yyy

ファンの集う癒しの小部屋です。

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「…圭一君が、犯人?…」
 わたしは、うわずった声で聞き直した。
 宙太も、呆然とした顔で星子を見つめた。
「ま、間違いないかい、星子さん?」
「うん…確かよ。圭一さん、あたしの顔を見て驚いて…あたしの名前を…」
「呼んだのかい?」
 星子は、顔を伏せたまま、うなずいた。
「ちょっと、ね、パパさん、どうなっているんだ?」
 宙太は、戸惑った表情をわたしに向けた。
「圭一君は、死んだんじゃなかったのかい?」
「う、うむ…」
 わたしも、困惑しながらいった。
 たしかに、圭一は死んだ。星子に甘くてせつない恋の思い出を残して……。
 わたしにとって、北海道はつらい恋の思い出が刻まれた土地だが、星子にとっても、つらくてたまらない恋体験が影を落とす大地でもある。
 立川圭一。さそり座のミュージシャンだ。星子が圭一と出会ったのは、北海道へ向かう青函フェリーの船内だった。尾崎豊にイメージが似た彼が、じつは、殺人犯として警察に追われていたとは。
 だが、圭一は愛していた女の裏切りが原因で、誤って人を死なせてしまっただけだった。その女と北海道で出会った圭一は、愛のために、あえて、女が犯した人殺しの罪をかぶってやった。そういうやさしい男だった。そんな圭一に、星子は心底ほれ込んだ。そして、宙太と一緒に助けてやったあと、圭一と二人で逃避行を続けようとした。しかし、星子を想う圭一は、星子のために、釧路から札幌へ向かう夜汽車の中に星子を残して、夜霧の中へ消えた…。
 あの時の別れも、とても、つらかった。でも、星子にはもっとつらい別れが待っていた。
短い刑期を終えて出所した圭一との再会。それも、宙太と二人で乗ったブルトレ『北斗星』の車内だった。その車内で殺人事件が起きて、目撃された犯人が圭一らしいということで、マサルが逮捕状を持ってあらわれた。だが、実際はファッション界の盗作を巡る事件で、圭一は利用されただけだった。星子は圭一と二人で逃げながら札幌で真犯人と対決した。そして、その際、圭一は星子をかばって、銃で撃たれ、命を落としたのだ。宙太に、星子を幸せにしてやってくれ、と、頼みながら…。
「最後までカッコいいヤツだったよな、カレ」
 宙太は、当時のことを思い出したのか、目を潤ませた。
「覚えてるかい、彼が吹いていたハモニカ…」
「うん、宙太さん、あの人が息を引き取ったあとで、そっと手に握らせてあげたっけ…」
 星子も、思い出しながら涙をぬぐった。
「あのハモニカ、あとで、カレの墓に一緒に埋めてやったんだ。天国へいってもさびしくないようにって…」
「宙太さん…」
「ところがだぜ、その圭一君が殺し屋になって、この列車にあらわれるとはな。もしかして、ユウレイ? それとも、ゴーストか?」
「まさか、そんな…」
「だったら、どういうことさ? ね、パパさんよ?」
「……」
 わたしは、気持ちを落ち着かせながら、考えてみた。
「たぶん、君たちと同じかもしれないな…」
「オレ達と?」
「同じって?」
「つまり、僕が書いた小説の中から、現実の時空にあらわれたってことさ。」
「でも、オレ達と違って、圭一君は小説の中で死んだんだぜ」
「いや、僕が星子のイラスト画集に短編を載せた時、その中で、圭一は肉体から分離した魂として登場したんだ。その魂が…」
「この世に,よみがえったってわけか」
「そういうことだ」
「まいったな、強力な恋のライバル、二度目の再登場か。それも、よりによって、サイレンサーの拳銃を持った殺し屋となってね。やりきれないな、ほんと」
 宙太は、ため息をついた。
 やりきれない気持は、わたしも同じだ。圭一には、血生臭い事件の影が、常に付きまとっている。星子や宙太達のように、明るいキャラにしてやらなかったからか。それとも、始めから不幸な星の下に生まれてきた男なのだろうか。
「ま、それはともかく…」
宙太は、星子を見た。
「その殺し屋を、ハニィはかばったわけだ。惚れた弱みっていうのかな…」
「違う、そうじゃないの」
 星子は、首を振った。
「圭一さんはね、こういったの…まだ、仕事は終わっていないんだ。もうしばらく、目をつむっていてくれ、って…」
「仕事!」
 宙太と私は、ハッとなった。
「ということは、まだ、他にも殺しのターゲットがあるってことか!」
「なんて奴だ…」
「そうと知っても、まだ、圭一君をかばったわけ? そりゃないぜ、ハニィ! 止めるのが、当然じゃないのかい?」
「もちろん、止めたわよ! でもね、奴等を倒さないと、あたしにつらくて悲しいことが起きるって…」
「ん?」
「どういうことなんだ?」
「それが…」
 星子は、ためらった。
「はっきりいってごらん」
 わたしにせかされて、星子はいった。
「…宙太さんが…」
「ん?」
「…殺されるって…」
「な、な、なにィ!」

                            (つづく)



追記  なんだか、とんでもない展開になってきたようで、困惑気味のワタクシでありま   す。星子たちの乗った夜行急行『はまなす』は、はたして、無事に札幌へ着けるの   やら。あ、札幌に着く前に、別方向へ向かうことになるかも…なんせ、行き先不明   の恋旅ガイドですので。
    ところで、ここでクイズ。『はまなす』は、真夜中に森駅を通過しますが、この   駅の名物駅弁といえば何でしょう?
    ちょっと易しすぎたかな?
    ちなみに、車窓に見える噴火湾の漁火、じつに綺麗ですよね。
    

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