星子&宙太yyy

ファンの集う癒しの小部屋です。

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「!…」
 悪夢でも見ているのだろうか。そう、夢であって欲しい。だが、星子の願いもむなしく、圭一の姿は水底に仰向けになった状態で沈んだままだった。
「見ましたね」
まりも姫は、ゾーッとするような低い声でいった。
「見てはいけないものを、見てしまったようね」
 先程とは一転して、蛍の群れの放つ光は青白い燐光に変わり、まりも姫の目は真っ赤に妖しく光り、口元も吊り上って、まるで、夜叉か魔女のようだ。
「哀れな男、わたくしにかなうわけがないのに」
 まりも姫は、冷笑しながらいった。
「じゃ、あなたが圭一さんを?」
「そうよ、あなたより一足早くここへきて、わたくしの命を断とうとしたけど、かえって返り討ちにあったというわけ」
「!…」
「こうして湖の底に沈んでいられるのも、あと僅か。じきに、湖底の奥深くへ吸い込まれていくことになるわ。そこは、死者の霊を封じ込める暗黒界。二度と出てこれないでしょう。肉体は滅んでも魂だけは生き続け、永遠に闇地獄の世界をさまようはめになるのです。これも、わたくしを亡き者にしようとした報いです」
「!…」
 なんて恐ろしいことだろう。星子は、恐怖にすくみあがった。
「あなたも、わたくしに逆らえば同じ目にあうことになるわ」
 まりも姫は、夜叉のように赤く不気味に光る眼で星子を見据えた。
「でも、わたくしのいうとおりにすれば、あなたは巫女となって、魂はこのまりもの中に移り、永遠にこの楽園で蛍達と暮らすことが出来るわ」
「……」
「どちらを選ぶ? もちろん、答えはきまっていますね」
 まりも姫は、あらためて、まりもを星子に突きつけた。
 …闇地獄の暗黒界…魂をまりもに移してここで暮らす…どちらも、お断りだ。
 星子は、キッと顔を上げた。
「その前に、聞かせて。あなたは、王子様への愛のために、こんな恐ろしいことをしているわけね?」
「その通りよ」
「でも、それで、王子様が喜ぶと思う? 他の女の子達を犠牲にしてまで守るなんて、そんなの愛って呼べないわよ! ほんとの愛っていうのは、自分だけじゃない、皆が幸せになってこそ、叶えられるんじゃないの?」
「あなたは、やさしい人ね」
 まりも姫は、星子を見つめた。
「でも、この世の地獄を見ていないから、そんなふうにやさしくなれるのかも知れないわ」
「この世の地獄?」
「そうよ、わたくし達一族は、昔、この地を支配する和人達から奴隷のようなつらい暮らしを強いられてきたの。でも、砂金が見つかったおかげで、やっと、人並みに生きられるようになったわ。ところが、砂金に目をつけた和人達は、わたくし達を皆殺しにして、砂金を奪おうとしたのよ。王子は最後まで勇敢に戦ったけれど、力尽きて、砂金を巫女のわたくしに託したの。その砂金は、ここにあるわ」
 まりも姫は、両手を大きく広げて、呪文のような言葉を唱えた。
 すると、湖上を舞う無数の蛍の群れが一本の大きな光の竜巻となって、湖の中央あたりへ降りていくと、湖水を巻き上げ始めた。すると、湖水の中から、大きな木箱が浮かび上がってきた。表には花模様の木彫りがあって、散りばめられた宝石がキラキラと光っている。
 その木箱の蓋が開くと、中には、半透明の袋がぎっしりと詰まっている。その袋からは黄金色の光が一斉に放たれ、あまりのまぶしさに目も開けていられないくらいだ。
「あれが、亡き王子様の砂金…わたくしと王子様の愛の証し…そして、滅び去った一族の思いが込められた、かけがいのない宝物なのよ」
「……」
 まりも姫の夜叉のような目に、きらりと涙が光った。くわしいいきさつはわかりようもないが、まりも姫の思いつめた気持ちは、星子にも伝わってくる。だからといって、愛のためにいけにえを捧げることは、許されないことだ。
「あなたの気持ちは、よくわかったわ」
 星子は、きっぱりといった。
「でも、やっぱり、やめてほしいの。お願い!」
「出来ないといったら?」
 星子は、まっすぐ見つめた。
「その時は、戦うしかないわね」
「このわたくしに、勝てると思っているの?」
「負けるでしょ。でも、これがわたしってものなの」
 無茶は承知で向かっていく、それが、星子の性分だ。自分でも損な性格だと思うが、どうしようもなかった。
「そう…残念だわ、あなたのようなすてきな人を暗黒界に送るなんて」
 まりも姫は、一瞬星子を見つめたあと、両手を星子に向かってかざした。
 その手の先に火がともり、たちまち、大きな紅蓮の炎となって、その先端が星子に狙いを定めた。
「業火に焼かれて、暗黒界へ墜ちるがいい!」
 熱い! 焼き殺されるかも!
 星子は、恐怖ですくみあがった。
 その時、頭上からサッと人影が降ってきて、星子をかばうように立ちふさがった。
「おまっとうさん、ハニィ!」
 ニカッと笑って見せたその顔は、宙太だった。


                                (つづく)



追記  クリスマス・ボケなんかしていられない寒さですね。今回のお話、なんとか、年内で収まりそう    だ。腱鞘炎のほうも、なんとか治まってくれるといいけどね。ま、人生、頑張った後は、運を天    に任せるしかないか。でも、お迎えに来るのは、もうちょいとあとでね。素敵な人たちとのブログ    パーティ、もうしばらく楽しみたいから。ヨロシク!

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