星子&宙太yyy

ファンの集う癒しの小部屋です。

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番外らぶっす・8

               8

 ええっ、ここがハナコちゃんのおうち?
 星子、思わず口をあんぐりと開けた。そのお顔が、うふん、とってもセクシーなんちゃって。
 コラコラっ。
 ま、とにかくデスネ、星子が唖然となったのも、無理はない。
 父親が地元のボスというので、それなりの大きな構えの邸宅を想像していたけど、まさか、こんな大豪邸だったとは。
 高さ二メートルは優にあろうかというコンクリート塀が、まるで、刑務所のように聳え立ち、要所要所には防犯カメラがしっかりと睨みをきかせている。あまりにも塀が高いので、中の様子は、まったく、わからなかった。
 正面の門構えは、スチール製の分厚い大きな門、脇には、でかでかと「花屋敷」の表札が、かかっている。
 なにが花屋敷よ。どう見ても、刑務所じゃないのっ。
 好奇心でやってきたものの、星子、立ちすくんだ。
 この中に、魔女軍団が…無事には帰れないとか…。
 あの細井っていう子、おびえた顔でそういったっけ。
 一人じゃヤバそう。宙太さんにきて貰おうかな。
 ダメ、甘えた根性は。わたしの名前が、すたるじゃないのっ。
 気持ちを奮い立たせて、チャイムを押す。
 すると、じきに、インターホーンから、女の声が流れてきた。
「はい、どちらさまでしょう」
 なんとも美しくお上品な、まるで、オペラのソプラノ歌手のような声だ。
「あ、わたし、流星子っていいます」
「ご用件は?」
「あ、はい、ハナコ、じゃない、花太郎さんにお会いしたいんですけど…」
 星子の声、いつになく、うわずっている。やっぱり、緊張しているせいらしい。
「花太郎さんに?」
「いらっしゃいますか?」
「ええ、おりますけど」
 いるんだ、やっぱり。
「それで、花太郎とは、どういうお知り合いでしょう?」
「どうって…」
 一々、うるさいのぅ。
「わたしの友達のことで、話があるんです」
「お友達のことで?」
 すると、すかさず、女の声が近くからいくつも入り混じって聞こえてきた。内容はわからないけど、かなり、騒がしい感じだ。
 その騒ぎを制止するソプラノさんが声が聞こえて、じきに、
「あなた、星子さんとおっしゃいましたわね」
「はい」
「お友達というのは、新井リツ子さんのことかしら」
「あ、はい」
 どうして、そのことを知っているんだろう。いったい、相手は誰なんだ。
 まさか、魔女の一人? すると、他の女の声は、魔女仲間の声かもね。
 と、思った時、
「どうぞ、お入り下さい」
 同時に、門が重々しく、ゆっくりと開いた。
「!…」
 引き返すなら、今しかない。うん、そうする。
でも、足のほうは、門へ向かって歩き出した。
門をくぐったとたん、背後でザザーッと門が閉まった。魔女が監視カメラで見ながら操作でもしているみたい。入ったら、そう簡単には出られませんよ、って感じだ。
ふん、だからなにさ。矢でも鉄砲でも、持ってこいだ。
奥へ進むと、ん、ベルサイユ宮殿が、目の前に!
というのは、ちと、オーバーだけど、宮殿のような大きな豪邸が、美しい大庭園に囲まれて建っている。
ここが、花太郎の家?
リツ子から聞いた、がさつな花太郎のイメージとは、あまりにもかけ離れている。どう見たって、貴族のお坊ちゃまが、お住いになっていらっしゃるお宅だ。
星子がキョロキョロとあたりを見回しながら歩いていくと、行く手に大きな玄関のドアがあらわれて、音もなく開いた。
あらためて深呼吸をして、中へ入る。薄暗いが、吹き抜けの広いホールがあって、そこに、人影が四つ立っている。
じきに、目が慣れてくると、その四人は若い女性ばかり。お揃いの華やかなドレス姿で、しかも、四人ともミス・コンクールにトップで入るような、飛びぬけた美女ぞろいだった。
花太郎のおっかないイメージから、アマゾネスのようなタイプを予想していただけに、びっくりもいいとこ。
その四人の中の一番年上らしい女の人が、にこやかに星子に近づいた。
「いらっしゃいませ。わたくし、花太郎の姉、長女の百合子です。この人は、次女の菊子、この人は花太郎の妹で三女の桜子、そして、四女の梅子です。よろしく」
 百合子に紹介された菊子と桜子、梅子の三人も、にこやかに、そして、しとやかに会釈した。
 でも、その笑顔には、どこか、翳がある。目には刺すような鋭く冷たい光りがこもっていた。
 この四人が、細井くんのいってた魔女軍団なんだ。
 星子、一瞬たじろいだけど、負けん気の強いところで、こちらも、作り笑顔で答えた。
「突然お邪魔してすいません」
「いいえ、どういたしまして。あなた、データ通りの可愛い人ね」
「データ通り?」
 すかさず、菊子が、
「あなたのことは、全部、調べがついているのよっ」
 つづいて、桜子が、
「宙太とかいうタレメの刑事さん、ついてこなかったのね。ザンネンだわ」
 そして、梅子が
「ゴンベエってドラネコもね。シッポつかんで、ヒゲ抜いて可愛がってやったのに」
ううっ、こいつら、ほんとにわかっているんだ、わたしのこと。学校がある日は、ゴンベエは自宅待機、一緒じゃなくてよかった。
星子、笑顔を絶やさずにいった。
「よくおわかりですね」
「だって、リツ子さんのお友達なら、花太郎のためにもよくリサーチしておかないと。姉として、妹として当然のことよ」
「トウゼン、ですか」
 星子、あきれたように肩をすくめた。かなり、おかしな兄弟関係のようだ。
「で、花太郎さんは?」
「こっちよ」
 四人姉妹、星子を取り囲むようにして、促した。もう、逃がさないって雰囲気だ。星子、覚悟をきめて、一緒にホールの階段を上がっていった。
二階の廊下をいくと、突き当りに部屋があって、ドアの前には、配膳トレーが置きっぱなしになっている。その上には、ナプキンをかけた、かなりボリュームたっぷりな料理が乗っていた。
「しょうがないわね、花太郎たら。ぜんぜん、食べていないじゃないの」
 百合子、ため息をついた。
「あのぅ、花太郎さんは病気なんですか?」
 星子が尋ねると、百合子は顔を曇らせた。
「ええ、昨日の夜から、寝込んでしまって。幼い頃から、病気なんて、およそ、縁のない子だったんだけど」
「で、どこが悪いんですか?」
「ま、のぞいてごらんなさいな」
 菊子が星子の襟首を掴み、ドアの鍵穴へ顔を押しつけた。
 なにすんのよっ。
 ムッとしながらも、鍵穴をのぞくと、カーテンを閉め切った薄暗い部屋のベッドに、キングコングが…と、思ったら、大きな男の子が寝ころび、ぐったりとしている。
 あれが、花太郎か。なるほど。
 でも、まるで、迫力がない。
「病気、かなり、重いんですか?」
「ええ」
「お医者様は、なんて?」
「それがね、草津の湯でも治らないって」
「は?」
 草津の湯でも治らないもの、それは、
「つまり、恋わずらい、ですよね?」
「そうよ」
「なぁんだ」
 星子、ぷっと吹き出した。
「恋わずらいですか、フム!」
「なにが、フムよっ」
 とたんに、四姉妹の顔色がサッと変わった。
「あたしたちの大事な弟をこんな目に合わせておいて、よくも、そんな口がきけるわね!」
「こんな目って、それは、花太郎さんのほうが、勝手にのぼせせて…迷惑しているのは、」リツ子のほうです!」
 星子、負けずに言い返したけど、ダメ、通じない。
「弟を誘惑したのは、そっちのほうでしょ!」
「兄さんに何かあったら、絶対に許さないから!」
「リツ子って子をここへ呼びなさい!」
「そうよ! ぶん殴ってやる!」
「半殺しよ!」
 まさに、魔女軍団そのものだ。
「ま、待って! リツ子がくるわけが…わたしが、代わりに話を…」
「じゃ、あなたをぶん殴ってやる!」
「半殺しよ!」
「もう、絶対に返さない!」
「一生、地下室に閉じ込めてやるから!」
「そ、そんな!」
 星子、真っ青、そのまま凍りついた。


                           (つづく)



追記  目を休めるつもりが、キリのいいとこまで、ということで、つい、書いてしまいました。花太郎クンの四姉妹、かなりの強敵です。がんばれ、星子! なんて、俺が応援してどうする!
 

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