星子&宙太yyy

ファンの集う癒しの小部屋です。

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          ――銀河巡礼・孤独の星(3)――
 
 きれい、なんて美しいんだろう。
車窓には、虹色の光球がまるでクリスマス・ツリーのように光り輝いている。なんともロマンチックで幻想的な景色だ。その中を縫うようにして、「銀河急行・すばる」は降下していった。眼下には、銀色に輝く孤独の星が車窓からはみ出すように大きく迫ってくる。
……孤独の星で、乗客の半分近くの人が自殺する……アザミという女は、そういった。
でも、とてもそんな恐ろしい星には見えない。きっと、星子をからかうつもりでいったんだろう。
ほんと、頭にくる女だ。
しかもですよ、宙太ときたら、そのアザミにデッキの自販機で缶コーラを買ってきてやったり、ヘラヘラおせじをいったり、情けないったらありゃしない。あんな女にのぼせあがるなんて、宙太ってその程度の男だったわけ。
サイテェよ、もう!
星子が顔をとんがらせた時、
「はい、のど乾いたろ」
 いつの間にか、隣りの席に戻った宙太が、星子に体をすり寄せ、缶コーラを差し出した。
「いらないっ」
 邪険にはねつけてやる。ご機嫌取ろうったって、そうはいかないよっ。
「そんな顔しないの。カノジョとは、旅は道ずれ世は情け。ただそれだけのことさ」
「ふん!」 
どこまで調子がいいの、と、睨みつけた時、車窓が薄暗くなり、車内灯が点った。
車窓を見ると、星全体を覆う銀色の雲のようなものがわき上がってきて、じきに列車はその雲の中へ突入していく。
雲の中の色は次第に銀色から灰色へと変わり、光りも弱くなってきた。さらに降下を続けると、車窓はすっかり暗くなり、窓ガラスに雨が降りかかってきた。さっきまであんなに美しく幻想的に見えていた虹色の衛星たちも、今ではまったく見えない。
「なんだ、孤独の星がきれいに見えたのは銀色の雲に包まれていたからか。その下は、雨の夜の世界なんだ」
 宙太のいうとおりだった。地表の景色は、まさに、雨の夜の世界。暗闇の中に青白い灯がポツリポツリと鈍く光り、なんともわびしい景色だ。
 その景色の奥に線路と駅舎のようなものが近づいてきたと思うと、列車は線路の上に着陸、ブレーキの火花をあたりに飛び散らせながら速度を落としていった。
 間もなく、列車はドーム型の大きな駅舎の中に吸い込まれるように入ると、停車した。ドーム全体は薄暗いが、高い天井から下がったシャンデリアの青白くほのかな明かりに照らされて、まるで海の底に到着したような気分だ。広いホームも閑散としていて、旅行客や駅員の姿も見当たらなかった。
 ふいに、車内放送から車掌さんの声が流れてきた。
「ご乗車有難うございました。孤独の星駅に到着です。この列車は、当駅で一時間停車致します」
「一時間?」
 星子、やれやれとため息をついた。
「そんなに長く停まってるわけ」
「僕にいわせりゃ、そんなに短いのかってことだぜ」
「どうして?」
「だってさ、アザミさんの話だと、この列車の乗客の半分近くがこの星で孤独に耐えられずに自殺するんだろ。でも、たった一時間じゃ自殺したくなるほどの孤独を味わえるとは思えないけどな」
 たしかに、宙太のいうとおりかもしれない。星全体の雰囲気は雨の夜のような憂鬱な雰囲気だけど、それだけで旅行客が自殺に追い込まれるとも思えないし。
「やっぱり、わたしをからかっているんだ」
「ん?」
「わたしを怖がらせようと、デタラメいってるだけじゃん。ほんと、タチの悪い女!」
「そんなことないぜ。ああ見えても、ごく普通のレディだって」
「んもぅ、どこまで美人に弱いわけ」
「そんな……」
 弁解しようとした宙太に、「宙太さん」と、アザミが声をかけた。
「ね、お土産を買いに行きたいんだけど、つきあって下さる?」
「オミヤゲを?」
「ええ、街のお店で素敵な鏡を売っているんですって。なんでも、その人の一番美しい姿を映してくれるそうよ」
「へぇ、そんな鏡があるんですか。でも、今でも十分お美しいですよ、ハイ」
 宙太ったら、歯が浮くようなこと、よくいうよね。
「うふっ、お上手ね。だけど、女なら誰だって自分の一番美しい姿を見てみたいじゃない、星子さん、あなたもでしょ?」
「いいえ! 興味ありませんからっ」
 星子、そっぽを向きながら答えた。
「じゃ、まだ、女として半人前かもね。うふふっ」
な、なんじゃぁ!
 アザミ、小馬鹿にしたように笑うと、宙太を促した。
「さ、行きましょ、宙太さん」
 宙太、「ハイハイっ」と、目尻を下げたまま、アザミを追ってデッキに向かった。
うううっ、ほんと、アタマにくる!
 星子、今にも爆発しそうな顔でアザミの背中を睨みつけた。でも、まさか、それがアザミを見る最後になるとは思ってもいなかった。

                               (つづく)



追記   エコドライブを心がけようとプリウスに乗り換えたのはいいけれど、とんだリコール騒ぎ。でも、ま、僕自身も心身ともにリコールしないとね。この歳まで生きていくのは大変なんですから。
 それはともかく、銀河巡礼の旅、この先どういうことになるのか。読めないだけに、楽しみな山浦です。  

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