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――銀河巡礼・光源氏の星・1――
――光源氏の星……ああ、なんて、ステキな名前の星なの……。
星子、もう、うっとり。大きなお目めが、桃色のハート型にキンキラと光り輝いた。
だって、当り前でしょっ。高貴なお方で、幼い頃から光り輝くほどの美形と才知に恵まれたことから「光る君」と呼ばれた、ニッポンを代表する超美形の一人。しかも、そのまばゆいほどにお美しいお顔には数奇な運命にもてあそばれる深くて暗い憂いと悲しみが秘められている。
というのもですよ、幼いころに母親を亡くした光源氏サマは、のちに帝である父によって宮中を追われ、東宮(皇太子)より格下の源氏を名乗るはめになったんだって。その光源氏サマ、亡き母生き映しの藤壺サマに恋してしまった。でも、なんと藤壺サマは父の後妻だった。しかも、その藤壺サマと道ならぬカンケイになり、子供まで出来てしまい……さらにさらに、恋多き光源氏サマには波乱の恋物語と政変の嵐が……。
わぁ、キャァ!
もう、サイコーにドラマチックじゃないですか。だからこそ、いにしえから現代まで、女の子たちのハートをしっかりと射止めてきたわけ。
かくいうワタクシ星子とっても、光源氏サマは、ハイ、抱いてみたい、おっと、抱かれてみたい男の代表みたいなものです。
なんちゃって、うふっ。
でも、その光源氏サマの名前のついた星って、いったい、どんな星なんだろう。光源氏って、あくまで、紫式部サマのお書きになった超ベストセラー「源氏物語」の主人公、つまり、架空の人物だし。
たとえば、光源氏クラスの超美形が、いらっしゃるお星様?
それとも、光源氏の名前を何かの記念にネーミングしたとか?
どっちにしろ、きっと、超美形にカンケイあるかもね、なんて考えているうちに、
「ん、あの星だな」
宙太が、車窓を指差した。
その方向を見ると、淡い金色の惑星が浮かんでいる。銀色に光る輪が周囲を取り囲み、なんとも神々しい姿だ。
「まさに、光源氏という名前にふさわしい星じゃん。きっと、気品があって美しい男の子に出会えるかも……この列車に乗っている女性客達は皆そう期待している。事実、そういうことらしいぜ」
「そういうことって?」
「つまり、超美形がいらっしゃるってこと。このボクチャンのような」
「ほ、ほんとに!」
ボクチャンはないけどね。
「あ、やっぱり、ハニィも期待してるんだ」
宙太、ニタリと星子を見た。
「べ、べつに。興味ないの」
「なんて、無理しない。ちゃんと、顔に書いてある」
「んもぅ」
思わず顔をこする星子に、
「でもね、せっかくだけど、そのチャンスはなし。この列車はね、光源氏の星には、三分間しか停車しないんだってさ」
「う、うそっ」
「これ、ほんと。さっき、車掌さんから聞いたんだ」
「そ、そんなぁ……」
がっくりの星子サンだ。三分間じゃ、駅の外に出ることもできない。とても、超美形なんかに会えるのは無理だよね。
星子がため息をついた時、車内放送で車掌さんの声が流れてきた。
「はい、確かに時刻表では、この列車は光源氏の星には三分間しか停車しません。でも、トラブルが起きまして、停車時間が変わりました」
「変わった?」
「はい、銀河鉄道の軌道ポイントMM99付近で、シールドが破壊されまして、原因調査と復旧にかなりの時間が……」
「えっ」
「シールドが破壊された?」
星子と宙太、顔を見合わせた。
「誰が、そんなことを?」
「目下、銀河鉄道防衛隊が調査に向かっているとのことですが、解決するまでにはかなりの時間がかかると思います。でもって、この列車は、しばらく光源氏の星に停車する予定です。ご迷惑をおかけして、まことに申し訳ありません」
「やれやれ」
肩をすくめた宙太とは対照的に、星子、歓声を上げた。
「やったぁ!」
これで、光源氏サマのような超美形に会える。
なんて、フツーの女の子っぽい夢にわくわくの星子サン。
でも、まさか、本物の光源氏サマと恋をする羽目になるとは……思ってもいなかった。
(つづく)
追記 本日は、お雛祭り。娘も女の子の孫もいないワタクシには縁のない日だぜ、へっ!
なんてひがまない。星子というカワイイ娘がいるじゃないですか。
その娘が、光源氏と愛し合う?
ゆ、許さん! 絶対に、許さんぞ!
山さんよ、ただちに中止しろ!
ということで、ばれないように、こっそりと続けますので、よろしく!
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