星子&宙太yyy

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終着駅・三つの恋物語

終着駅・三つの恋物語   
 
第一話・終着駅青森
 
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「ったく、もう!」
 星子、ホームのベンチに座ると、唇をとがらせながらため息をついた。特急「つがる33号」はすべての乗客が降りたあと回送列車となってホームを離れ、赤いテールランプも夜の闇に溶け込んで、ホームには人影も見当たらない。
 それも、当り前だよね。「つがる33号」、この青森駅に到着する最終列車だった。一昔前だったら、青函連絡船に乗り換えて北海道へ向かう乗客でさぞかし賑わったと思うけど。そんな光景、想像も出来ない。今年の暮れには東北新幹線が新青森まで延長されるし、そうなればもっとさびれることだろう。
 ホームを吹き抜ける風はかなり冷たい。今年は猛暑だったけど、やっぱり、本州の北の果てだけあって、冬が来るのも早いようだ。ぶるるっと首をすぼめたとたん、お腹がキューっと鳴った。
 おっと、鳴ったのは星子のお腹じゃない。背中に背負ったリュックの中のゴンベエですからね。なんて、とぼけてもダメ。
「腹へったぁ、死にそう」
星子、まだ、晩飯を食べていないのだ。ほんとは、ハナ金の今夜、銀座の居酒屋の歓迎パーティで、たらふくご馳走して貰えるはずだった。
 誰の歓迎パーティかって? もちろん、
「わたしにきまってるでしょっ」
そう、星子が晴れて警視庁捜査一課の刑事になったお祝いを兼ねたパーティだ。配属先は、「紅薔薇チーム」。
はん? ふざけんなっ。お堅い警視庁にそんな名前の部署があるかって思うでしょ。もちろん、正式にはない。星子が配属された特別捜査班のチームの一つにつけられた愛称なわけ。
チーフは、美空宙太警部。にやけたタレメの超お調子者。その下に、超マジメの三日月マサル刑事。ステキなニューハーフの伊集院春乃介刑事。そして、ツッパリの剣小次郎刑事。皆さん、個性は強いけど、ま、なんとかガマン出来そう。 
ちなみに、特別捜査課にはもう一つチームがあって、そちらのほうは「白薔薇チーム」。
チーフは本庁婦警みんなの憧れの貴公子、十文字右京警部。その下に、右京警部の弟ですね者の左京刑事。影のある美形の立川圭一刑事。猟犬のようなタケル刑事がいる。
 え? 白薔薇チームまである? それじゃ、まるでタカラズカじゃないの。
ほんとホント。犯罪から市民を守り、命を賭けて悪と戦うサムライ集団にはふさわしくない愛称だ。こんな下らないネーミング、誰がつけたわけ?
責任者、出てこい!
って、その責任者がとんでもないヤツだった。
新井リツ子。
星子と高校同期の超リッチのお嬢様、しかも、超秀才で東大法学部に現役トップの成績で合格したとか。もともと友達関係なんかなかったし、高校出たあとは音信不通、リツ子がどこで何していようと、星子にはまったく興味なし。とにかく、自己ちゅうのかたまり、世界の中心は自分と思い込んでいるオメデタ人間だ。死んでも係わり合いにはなりたくない相手だった。
ところがですよ、所轄のミニスカポリスの活躍が認められて、晴れて抜擢された本庁捜査一課で、リツ子とばったり顔を合わせる羽目になるとは。それも、なんと、星子の上司、つまり、特別捜査班のリーダーとくる。リツ子の肩書きは、警視。キャリア組のトップで、しかも警視総監賞をいくつも貰い、異例の出世をしたんだとか。それに比べて、星子はヒラ。肩書きもタダの巡査。もう、月とスッポンの差どころの話じゃない。
愕然となった星子に、リツ子、にっこりと微笑んでこういった。
「待ってたわよ、星子ォ」
「は? 待ってた?」
 そう、リツ子、星子が捜査一課に配属されると知り、自分の部下にスカウトしたってわけ。
「高校時代の親友がそばに、いればあなたも安心して働けるでしょ。感謝してね」
 と、きた。
 もしかして、高校時代の借りを返すつもりで、いびってやろうと。けっこう、星子も高校時代、リツ子をコケにしてたしね。
でも、リツ子、そんな陰険な女じゃない。心底、星子のためを思っていると信じているらしい。だから、余計に始末が悪い。
今日、突然、青森へ出張するはめになったのも、そんなリツ子の思いやりってわけ。
じつは、今日の午後、ヨコハマの宝石店でピストル強盗があって、警備員が殺され、店員二人が重傷という凶悪事件が起きた。
 リツ子がいうには、
「ここ三カ月の間に、東京と大阪、名古屋で連続して起きた拳銃強盗事件、広域捜査事案1999に手口が良く似ているの。紅薔薇さん、出動お願いね」
「でも、その事案なら十文字クンのチームがすでに捜査をはじめてるじゃないスか」
 と、宙太がいったけど、
「だから、あなた達はサポートよろしくね。何が何でも、ぜったいにホシを挙げるの。絶対にね!」
 リツ子、まなじりを釣り上げていった。
「今回も、警視総監賞狙いってことかいな」
 宙太、肩をすくめたあと、星子にウインクした。
「んじゃ、ハニィ、キミの歓迎パーティの前に初仕事といこうか」
 ヒトを気安く呼ぶな、このォ。
 すると、リツ子、
「あ、流さんには別の仕事を用意してます」
「別の仕事?」
「広域事案3333の件で、今すぐ青森にいって貰います」
「そんなぁ」
 宙太、ムッとなった。
「広域事案3333のホシ・悠木忍(しのぶ)は、たんなるチンピラの車上荒らしですよ。しかも、ホシは先月俺達が逮捕した後、心臓の病気で入院中じゃないですか」
「それがね、今さっき連絡があったの。病院から脱走したって」
「脱走?」
「隣りのベッドに寝ていた患者の話だと、隠し持っていたケータイで誰かと連絡を取り合っていたって……今夜、青森駅で待ち合せようって。なんでも、相手は最終列車でくるらしいわ」
「だったら、地元の青森県警にまかせればいいでしょう。こっちから、わざわざ、出向くような事案じゃないですよ」
「そうはいきません!」
 リツ子、キッと睨みつけた。
「一度捕まえたホシに逃げられるなんて、うちのチームの恥です! 必ず、こちらで捕まえます! わかりましたね!」
「はいはい」
 宙太、やれやれという顔でいった。
「じゃ、ハニィ、いや、流クン一人じゃなく、僕も一緒に……」
「いいえ、相手は病人です。流さん一人で十分です! どんなドジなネコでも、弱ったネズミは捕まえられるものよ。でしょ、星子?」
「え、ええ」
 こ、このォ、ヒトをドジ猫扱いしおって。
 それをいうなら、背中のリュックの中のゴンベエにいっておくれっ。
 とにかく、ま、そんなわけで、東京駅へ直行。東北新幹線「はやて27号」に乗って終点の八戸へ。連絡特急の「つがる27号」に乗り換えて青森へと向かったわけ。
 あ、いっとくけど、拳銃は所持していない。相手の悠木忍はチンピラの車上荒らしだし、病人でもあるし、合気道初段の腕前なら十分、ってリツ子にいわれた。星子もそう思っていたけど、あとで取り返しのつかないことになるとは、その時は思ってもいなかった。
 で、青森には定刻の21時17分着。悠木忍が落ち合う相手は、青森に着く最終列車に乗ってくるという。そこで、ホームで張り込むことにしたわけ。
 ところで、最終列車というと、青森には東北本線の他に秋田弘前方面からくる奥羽本線、函館方面からくる海峡線、そして、海峡線と途中で別れて津軽半島の先端へ向かう津軽線がある。時刻表では、津軽海峡線っていうんだけどね。
 奥羽本線の上り最終列車は、特急なら新潟発「いなほ7号」、青森着22時01分。大館発の普通列車では青森着22時39分。津軽海峡線の最終列車は、函館発の特急「スーパー白鳥44号」22時20分着。
 星子、どの列車もしっかりとチェックした。でも、肝心の悠木忍の姿は青森駅のホームにはあらわれない。顔写真片手に懸命に探してみたけど、だめ。最後の望みを託して、東北本線の最終列車「つがる33号」の到着を待った。だけど、収穫はなし。
「ああぁ、なんだっていうわけ」
 まさか、リツ子のヤツ、星子をからかうつもりで、デタラメな情報をくれたんじゃないよね。
 星子、がっくりと肩を落とした。
 しゃぁない、明日の朝の列車で帰るとしますか。重い足取りで階段へ向かいかけた時だ。背中のリュックの中で、ゴンベエがフーッと低い声で唸り声を上げた。
「ん?……」
 ちらっと眼をやると、売店の陰に人影らしいものが見える。
 もしかして、悠木忍かも!
 星子の背中を、冷たいものが走った。
 
                     (つづく) 
 
 
 
 
追記  なんとか、はじめてみました。今回の第一話は、星子のミニスカデカ・シリーズです。前回のプロローグからはかなり時間がたっているので、整理を兼ねながら
再スタートさせてみました。
第二話としては、三四郎編を予定しています。やはり、終着駅からです。さて、どこの駅かお楽しみに。
そして、第三話は、銀河巡礼編ということになります。これも、終着駅スタートですが、はてさてどこの駅になるやら。
ま、時間をかけてじっくりといきますんで、よろしく。とにかく、スタートすることが肝心ですからね。
 

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