星子&宙太yyy

ファンの集う癒しの小部屋です。

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「ね、誰なの、あなんたッ。答えて!」
 星子の声のトーンが、上がった。
でも、宙太そっくりの男、たれ目顔でニヤニヤ笑っている。
「ちょっと! 人をバカにすると、ただじゃすまないわよ!」
 キッと睨みつけたとたん、
「うん、いいねぇ、その顔にしびれたんだよな、長崎で」
「ナガサキ?」
「ばってんナガサキ恋の街。忘れもしない、といっても、ほんの昨日の話だけどさ。麗しの姫君・流星子と、光源氏の再来といわれる貴公子・美空宙太が運命の出会いを果たしたってわけ」
「はぁ?」
 星子、目を白黒させた。
 わたしが麗しの姫君、っていうのは当たってるかもね、エヘヘッ、でも、このヒトが光源氏の再来だなんてよくいうわ。
ううん、そんなことよりもっとひっかかることが。
「美空宙太? あなたが?」
「そ」
「昨日、長崎で出会った?」
「そういうこと」
「ウソ! よくもまぁ、人サマの名前を……確かに、わたし、昨日、長崎で美空宙太って人に会ったわ。それも、ホンモノの宙太さんにね。だから、つまり、あなたはニセモノってわけ!」
 星子、きっぱりといった。でも、そっくり宙太は、
「シシシッ、そうか、やっぱり、カッコつけてるわけね」
「カッコつける?」
「うん、カマトトちゃんの姫としては、一目ぼれのカレに出会っても、わぁ、宙太さぁんって抱きつくわけにはいかない。そこで、とぼけてみせる。カワイイっ」
 そっくり宙太、軽くウインクした。
「いい加減にして!」
 星子、もう、真っ赤な顔で怒鳴った。
「じゃ、聞くけど、あなた、子供がいる?」
「コドモ?」
 そっくり宙太、のけぞりながら笑った。
「いるわけないだろ、ボクチャン、まだ華の独身オトコ。オコチャマには縁がないの」
「じゃ、やっぱり、ニセモノじゃないの。本物の宙太さんには、双子の子供がいるのよっ」
「フタゴ? そりゃ、また、ご奇特なことで」
「そんないいかたないでしょ! 宙太さん、イクメンで一生懸命、がんばってるのよっ」
「僕も君と結婚したら、イクメンがんばれそう」
 キィーッ。
 もう、ぶん殴って蹴飛ばして、ボロボロにしてやりたい。
 でも、そっくり宙太のほうは、けろっとした顔で、
「どう、こんな所で立ち話も何だし、我が家に寄っていかない? サイコーにおいしいコーヒーをご馳走するぜ」
「ケッコウです!」
「遠慮しなくてもいいの。僕のマンション、田園調布の近くでさ、テラスから多摩川の景色がよく見えるんだ」
「え?」
 やだ、もう。それって、宙太さんの住んでるマンションと同じだ。そこまで、ニセモノになりきっているんだ。
 よォし、こうなったら、本物の宙太さんに会わせてやろう。そうすれば、コイツの化けの皮をはいでやれるかもね。
 ということで、星子、
「いいわ、ご馳走して」
  と、いった。
「そうこなきゃ。ところで、ゴンベエは?」
「え? 知ってるわけ、ゴンベエを?」
「もちろん。姫にとっては最強というか役立たずというか、あれでも一応ボディガードだもんな。ボクチャンには、ただのオジャマ虫だけどね」
 そっくり宙太、ニタリと笑った。
 なぜか、わたしのことには、やたらとくわしい。
「ゴンベエなら、今、お留守番よ」
「そうか、そりゃよかった。これで、ゆっくりと姫とデート出来るもんね」
 そうはいかないわ。もうじき、ゴンベエの鋭い爪がこの偽男をズタボロにするから。
 ということで、星子、そっくり宙太と一緒に歩き出した。
 それにしても、このニセモノさん、性格は本物の宙太よりずっとお調子者でテンションが高いけど、姿かたちは、まさに宙太と瓜二つだ。もっとも、歳のほうはちょっと若そうだけどね。
 さて、東横線の線路伝いに戻っていくと、じきに、宙太のマンションが見えてきた。
「で、どこ、あなたのマンションって?」
 星子がとぼけ顔で聞くと、そっくり宙太、
「ほら、あそこ」
 と、宙太のマンションを指差した。
 なにを企んでいるのか知らないけど、リサーチだけは、ちゃんとしているらしい。
 そうこうするうちに、マンションの前までやってきた。
 さぁ、面白いことになりそうよ。本物の宙太さんに会えば、化けの皮がはがれるしね。
「ちょっと、待って。今、ドアを開けてもらうから」
 星子、そういいながら、正面ゲートのテレビモニターつきチャイムを押そうとした。
「おっと、その必要なし。キイなら持ってるから」
「はん?」
 宙太、ポケットからキイを取り出すと、センサーに押し当てた。
 すると、オートドアがゆっくりと開いたじゃないですか。
 なんとまぁ、このオトコ、合鍵まで持ってるんだ。
 唖然となった星子に、そっくり宙太、「さ、どうぞ、お先に」と、ポーズを作りながら促した。
 いいでしょ、これで、本物とニセモノの対決がますます面白くなってきたじゃん。
 星子、わくわくしながら先に入っていった。
 その直後、ホールのライトがチカチカッとまぶしく瞬いた。蛍光灯の調子がおかしいようだ。高級マンションなんだから、ちゃんと管理しなきゃ。
 目をこすりながらライトを見上げた時、
「星子さん、ケーキは?」
 ふいに、そっくり宙太の声がした。
「あ?」
 しまった。
「忘れちゃった。あんたがいけないのよっ。あんたのせいよ!」
「え?」
「調子のいいこと、ペラペラしゃべりかけるから、つい、忘れちゃったじゃないの。もう、サイアク!」
「ちょ、ちょっと、星子さん。何の話だい?」
「なんのハナシ? とぼけないでよっ。このニセモノ宙太!」
「ニセモノ?」
「そうよ、とぼけてもダメ! こうなったら、わたしがあんたの化けの皮をはいでやるから!」
 星子、相手の胸倉をグイッと掴んだ。
「ま、待って! 待てったら、星子さん! ハニィ!」
「ハニィ?」
 ちょっと、ヘン。そっくり宙太、星子のことを姫と呼んでいた。
 もう一度目をこすりながら相手を見ると、セーター姿の宙太だ。
「ちょっと、いつ、着替えたのよっ」
「着替えた? 僕は今朝からずっとこの格好だけど」
「はん?」
 あらためてよく見ると、宙太、イヤリングしていないし、髪型もそっくり宙太と少し違う。
「ま、まさか、宙太さん? 双子チャンのパパの宙太さん?」
「もちろん。ダーリンの宙太だよ」
「!……」
 絶句とはこのこと。
「いったい、どうしたんだい? ね、星子さん?」
 宙太、けげんそうに星子の顔を覗き込んだ。
「……に、にせもの……」
「ニセモノ?」
「ええ、宙太さんのニセモノが……」
「なに?」
「今さっき、自由が丘で声をかけられたんだけど、顔も姿も宙太さんにそっくりなの。わたしとは、昨日、長崎で会っているって……」
「昨日、長崎で?」
「デタラメよ、もちろん。わたしがあったのは、本物の宙太さんだけだし。だけど、あいつ、このマンションに住んでるって……合鍵まで持ってるのよ」
「合鍵?」
「ええ、今もそのカギを使ってオートロックを……わたしと一緒に中へ……」
 そういいながら、星子、あたりを見回した。でも、そっくり宙太の姿は見当たらない。
「あら? どこへいったんだろ?」
 星子、急いで外へ出てみた。でも、そっくり宙太は見当たらない。
 あとから出てきた宙太も、あたりを見回した。
「いないね、それらしい男は……」
「もしかして、逃げたのかも。きっと、そうよ」
「……」
「とにかく、気をつけた方がいいわ、あいつ、なにか企んでるかも知れないし。宙太さんにもしものことでもあったら、星丸くんや宙美ちゃんが……」
「うん、そうだね」
 宙太、頷いた。
「でも、考えてみれば、妙な話だよな。ハニィそっくりさんの君、そして、僕そっくりの男……単なるそっくりさんなのか、それとも……」
「え?」
 宙太が考え込んだ時だった。ドドドドッとオートバイのエンジン音がして、一台のナナハンが走ってくると、宙太の前で停まった。
「よぅ、君か」
 ヘルメットを取ったライダーの精悍な顔、どこかで見たような……そうか、アルバムに載ってたマサルっていう人だ。
 マサル、チラッと一瞬とがめるような視線で星子を見たあと、すぐに目線を外した。
 星子を許せない、といった顔だ。
「早いな、もう、来てくれたのかい、パーティに。有難う」
 宙太が礼をいったが、マサルの表情は硬いままだった。
「オレ、パーティにきたつもりじゃないから」
「ん?」
 マサルの冷たい口調、代理ママの星子にも辛く聞こえる。なんだか、自分がいけないことをしたような気分だ。
「じつはな、警部、例の事件だけど、ちょっとヤバイ展開に……」
「というと?」
 マサル、宙太の耳元に低い声で話した。
「えっ、右京君が!」
 宙太の口から、うわずった声が漏れた。
 
                   (つづく)
 
 
 
追記  なんとか、今月最後の日に間に合わせることが出来ました。この先、どういうことになりますやら。十一月も楽しくワイワイやりましょう!

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