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ーー銀河巡礼・孤独の星(1)ーー
――星の海……そんな言葉があるけど、ほんとにあったんだ。
星子が、車窓に広がる無数の星たちをうっとりと見ていると、
「まさに、ラブスポットのプレミアムシートだね、うん」
なんて、甘くささやく声が星子の耳元で聞こえた。
宙太だ。いつの間にか、右腕で星子の肩を引き寄せている。
「ちょっと、やめてよっ」
ったくぅ、どさくさにまぎれて、このオトコったら。星子、ピシッと宙太の腕をはねのけた。
「相手を間違えているんじゃないっ」
「ん?」
「いとしや、恋しや、ああ、星のマリア様、じゃなかった?」
「ムヒヒッ、ヤキモチをやく星子さんって超カワイイ」
「バカッ」
宙太の頬っぺたに、星子の平手打ちが。
でも、ひょいとかわした宙太、ニカッと笑った。
「誤解しないでほしいな、天地神明に誓って申し上げます。僕にとって、コホン、君はこの世にただ一人のサイコーの恋人さ」
「ふん! どこまで調子がいいのよっ」
「ま、ま、ま、お聞きなさいって。それに比べて、星のマリア様は、恋人を超越した僕の女神。永遠の憧れのミューズなんだ。おわかり?」
「わからないわっ」
「いいのいいの、今にわかるからさ」
「ぜったいに、わからないっ」
星子がムキになった時だ。通路のドアが開いて、濃紺の制服を着た車掌が入ってきた。帽子を目深にかぶり、手入れのいい髭をピンとはやした、ダンディな感じだ。
「先程お乗りになったお客様ですな。切符を拝見させていただけますか」
髭車掌、ちょっと気取った声でいった。
「はい、どうぞ」
宙太、髭車掌にチケットを見せながら聞いた。
「それで、この列車、どの駅で銀河鉄道と連絡するんですか?」
「さぁ、どこでしょうな」
「は?」
これには、宙太も星子もきょとんとなった。
「わからないって、おたく、車掌さんでしょう?」
「たしかに。しかし、銀河鉄道はダイヤ、つまり時刻表には載っておりませんので、我々にも皆目見当がつきかねます」
「そんなぁ」
「時刻表に載っていない?」
「はい、ですから、まぼろし銀河鉄道と呼ばれておりまして」
「まぼろし銀河鉄道……」
そういうことか。
「でも、この列車が停車するどこかの星の駅で、必ず出会えるはずです。ご安心ください」
「どこかって、停車駅はいくつあるわけ?」
「はい、八十八ありますが」
「八十八も?」
星子と宙太、唖然となった。
「八十八っていえば、お遍路さんがお参りするお寺の数と同じか」
「はい、左様でございます。じつは、この列車は、お遍路列車と呼ばれておりましてね。と申しますのも、この列車の旅そのものが、巡礼の試練と同じような思いをさせられるからだとか……」
「巡礼の旅、お遍路列車かぁ。ちょっと、ロマンチックな名前ね」
「とんでもない」
髭車掌、声をひそめた。
「私も長年この列車に乗務しておりますが、旅の途中でいろいろと危険でつらい目に会うことから、無事に巡礼の旅を終えられ、銀河鉄道に乗り換えられたた方は……まだ、お一人も……」
「えっ、一人も?」
「そんな!」
星子と宙太、こわばった顔を見合わせた。
「もし、旅の途中でトラぶったら、二度と帰れないとか、ね、そういってたよね、宙太さん?」
「ああ、そうらしいぜ」
銀河鉄道に会えない時は、その時は最悪の結果になるかもね。
星子、思わず身震いした。
そんな星子をちらりと見た髭車掌、やおらチケットを返して、
「お手数かけました。次の停車駅は、孤独の星でございます」
「こ、孤独の星?」
星子も宙太も、またもや唖然となった。
(つづく)
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