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「美剣士対決だっ」
「キャッ、宙太さんだっ」
『星子』も、宙太を見つけたのか、鼻にかかった声を上げた。
「おいしそーっ、この前はあなたに邪魔されたけど、今度はそうはさせないから」
そう、先日、湾岸有明にある宙太の愛の隠し部屋で、『星子』は宙太とベッドイン寸前までいったっけ。
もっとも、『星子』、星子の潜在意識っていうか、別人格が星子のかたちになっているだけだ。だから、宙太とエッチするといっても、星子自身がエッチしたってわけじゃない。でも、表の星子サン、恋には潔癖症だし、絶対に許せないことナノダ。
そんな星子の気持ちにはお構いなく、『星子』、
「さぁ、三四郎クンと宙太さんとどっちを先に食べようかな。なんなら、二人一緒に食べよかな。こういうのを3ナントカっていうんだよね! ふふふっ」
なんて、いんらん女丸出しで笑った。
「ちょ、ちょっと!」
星子、あわてて『星子』の口を押さえた。
――それにしても、宙太が、なぜ、この道場に……どういうこと……。
その宙太だけど、星子に目もくれず、三四郎を鋭い視線で見つめている。いつもの宙太なら、真っ先に星子を見つけて、「ハーイ、ハニィ、今日もステキだぜ」とかなんとか、愛嬌たっぷりのタレメ顔で声をかけてくるはずなのに。
どうやら、宙太、三四郎を特別な目で、ということは、刑事の目で見ているのかも……でも、なぜ。なぜなんだろう……。
星子が首を傾げながら見つめていると、三四郎の相手をしていた屈強なオジサマ剣士・加藤師範が怖い顔で三四郎にいった。
「おい、三四郎クン、何度注意されたらわかるんだ! これは、稽古なんだぞ。果し合いをやってるんじゃない!」
「……」
三四郎、目を伏せたまま無表情に床を見つめている。
「君、聞いているのか! おい!」
加藤師範、今にも噛みつきそうに詰め寄った。
「……」
ふと、三四郎が低い声でつぶやいた。
「剣の命は、戦うこと……」
「なに?」
「人を斬るのが、剣の道じゃないんですか」
三四郎、額にかかった長髪をかきわけながら色白のハーフっぽい顔を上げた。あらためて見てみると、宝塚の男役のスターのような甘さと精悍さが際立った美少年だ。
――ああ、もう、見ているだけで、体が熱くしびれてきそうな……。
でも、三四郎の睫毛の長い切れ長の目には、相変わらず殺気を帯びた暗く鋭い光りが漂っている。
まさに、平成の沖田総司そのものかも……。
その眼光にたじろいだように、加藤師範、一瞬、立ちすくんだ。
「き、君っ!……」
そのあと、どうにか、気持ちを整えると、三四郎を諭すようにいった。
「なぁ、三四郎君、君がこの道場に通っているのは、あくまで、今度の全国高校剣道大会に備えて、技を磨くためなんだろう。だったら、心技一体、剣道の基本に立ってだな……」
「よして下さい、下らないお説教は」
「な、なんだと!」
「でも、僕と勝負して勝ったら、お説教を聞いてあげてもいいですよ。でも、あなたに勝ち目はないですよね」
「き、貴様っ」
加藤師範の顔、怒りで真っ赤になり、今にも爆発しそうだ。
「うふっ、よくいうよね、三四郎クン」
『星子』、肩をすくめた。
「相手はこの道場の師範・加藤警視で、警視庁でもトップクラスの剣道五段のモサなのに」
「ほんと?」
「でも、いくら本気出しても三四郎クンには敵いっこないよ。ムリムリ」
たしかに、そんな雰囲気だった。でも、いきり立った加藤師範、新しい竹刀を掴むと、三四郎を睨みつけた。
「よし! それ以上、減らず口が叩けないように、貴様の鼻っ柱を叩き折ってやる! こい!」
「本当にいいんですね」
三四郎、不敵な笑みを浮かべると、オジサマ師範に対峙した。
その瞬間だった。
「ちょっと、待った!」
なんと、宙太がさっと二人の間に割って入った。
「ん!」
星子も、『星子』も唖然となった。
きっと、宙太、見かねて止めに入ったのかも……と、思った。
「加藤警視、どうもです!」
「おう、美空君か。きていたのか」
どうやら、宙太、加藤師範と顔見知りらしい。
「で、どうした、急に飛び出したりして」
「ちょっと、お願いが、ハイ」
「ん?」
宙太、にこやかなタレメ顔でいった。
「飛び入りで、師範代やらせてくれませんか」
(つづく)
追記 毎日毎日、ほんと、暑いですね。暑気払いに、ビヤホールでワイワイやろうぜ! 宙太音頭で、ソレソレ、ヨヨイノヨイ! とくらぁ。
なんか、近頃、やけにはしゃいでいるワタクシであります。
追記1 星子と『星子』の関係、少々訂正しましたので、よろしくです。
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2010年07月23日
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