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「コワいことしよっ」
「ね、ね、コワいことしよっ」って、お誘いがかかった。
「コワいこと」って、幽霊屋敷とかジェットコースターとか。それとも、自転車やバイクでぶっ飛ばすとか、さもなければ、万引きとか。オットトトッ、このセリフ、カットよろしくネ。 とにかく、 いろいろ、あるけど、と、思ったら、
「ふん、そんな子供だまし、どこがコワいのさ」
と、嗤われた。
だれが、嗤ったのかって?
ア、イ、ツ。
ほら、この前、わたしに化けて宙太さんたちにセクシィアタックをかけた、あいつ。先日の宙太との一件以来、姿を現すことはなかったし、こっちも安心していたのにね。まさに、不意打ちだった。
おとといの晩、お勉強疲れ(ウソ)の星子がバスタブにビーナスのような肢体を沈めてカラオケやってた時、なんと、そのバスタブの中に『星子』が忽然とあらわれた。それも、星子と同じ素っ裸の姿でね。
「あんた、痩せすぎ。もっと、セクシーにならなきゃ」
それが、第一声。
よくいうよね、わたしと同じ体格のニセモノの癖にさ。
え? ニセモノだなんて、ほんとは、『星子』、いんらん大好きなあんたの分身でしょって?
ち、違うわっ。わたしとは、全然カンケイない、そもそも、ワタクシ、あっちのことなんかにまったく興味は……ない……というと、嘘になるけど……とにかく、わたしのイメージにはそぐわないのっ。
ハイハイ、いいから、で、話の続きはどうなったわけ?
うん、でね、あいつに、
「何の用よっ。あんたなんかの顔も見たくないわ。とっとと消えて!」
そういいながら、ザバッとお湯をかけてやったら、 『星子』、平気な顔でいった。
「ね、ね、コワいことしよっ」
「コワいこと?」
星子、ちょっぴり気になって、幽霊屋敷とかジェットコースターとか、いくつか並べてみた。ところが、あいつ、
「ふっ、そんな子供だまし」
と、せせら嗤ったあとで、いたずらっぽい目で星子を見据えた。
「きまってるじゃん、食べちゃおってこと」
「なにを? わたし、夜食はしない主義なんだけど。ダイエット中だし」
「バカね」
『星子』、再びせせら嗤った。
「いいおんなが食べるものといったら、きまってるじゃん。オ・ト・コよ」
「オトコ?」
「そう、マヨネーズかけて、なんて、それはないない。つまり、オネンネしちゃうってこと」
「睡眠薬のはなし?」
「このぉ、わかってるくせに」
ま、たしかに。でも、マジメな恋の求道者といたしましては、汚れなき聖少女であらねば。
そう心に誓う星子を無視して、
「カッコいい男の子を誘惑して食べちゃうのって、すっごくスリリングでわくわくぞくぞくするじゃん。つまり、こんなにコワいことってないわけよ」
『星子』、目をキラキラさせ、濡れた紅い唇を舌先でチョロっとなめて見せた。
ああ、もう、なんて言い草だろう。こういうのを、不良って呼ぶのかもね。
「で、誰を食べちゃおうか。宙太さんはこの前、あんたの邪魔で失敗したけど……」
『星子』、バスタブの中でシャボンの泡をフーッと吹きながら、
「今回は、がらりとメニューを変えて超マジメなオトコにしようか」
「ちょっと、わたし、付き合わないから」
「たとえば、右京サンとか、マサルさんとか……」
「よしてよっ」
「そうか、この前アタックしちゃっているし、今回は気分を変えて別のオトコの子がいいよね。そうなると……」
「もう、やめなって! やめないと、ぶっとばすから!」
星子がゲンコツを振りかざしても、『星子』、平然と、
「そうだ、あの子がいいよ。ほら、愛三四郎クン」
「え?」
星子、けげんそうに『星子』を見た。
「誰、その愛三四郎クンって?」
「きまってるじゃん、沖田総司の生まれ変わりといわれる超美形の高校生剣士、愛三四郎さ」
「!……」
(つづく)
追記 突然、例のいんらん『星子』がらみで新シリーズをはじめちゃいました。スンマセン。ま、ほんのオアソビと思って適当に付き合って下さい。
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