星子&宙太yyy

ファンの集う癒しの小部屋です。

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        第二話・終着駅・たまステーション
 
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「な、なん……なんなの、これ!」
 星子、大きな目をパチクリさせた。
「ゴンベエ! ちょっと、ね、見てごらん! ゴンベエったら!」
 リュックの中でのんびり昼寝をしていたゴンベエ、星子のどなり声に目を覚まし、やれやれとリュックから顔をのぞかせた。
 どうせいつものように大したことじゃないぜ、ほんと、困ったご主人様だ。なんていいたそうな目で下界を眺めたとたん、
 フニャッ。
 しゃっくりが飛び出し、長い鼻毛がブルルッと震えた。
 な、なんと、目の前には巨大な猫の頭がデーンと聳え立っているじゃないですか。その巨大な頭のてっぺんには、大きな文字で、こう書いてある。
「ねこステーション」
 あ、ゴンベエに字が読めるかどうか、そこんところはおまかせ。
「ねこステーション」という名前でわかるように、巨大な猫の頭は、じつは駅舎なのだ。それも、どこかの遊園地の乗り物の駅舎なんかじゃない、れっきとした私鉄の終着駅に建っているんですよ。
 場所は、みかんと梅で有名な和歌山県の貴志駅。和歌山市から貴志川線というローカルな電車に乗って、約三十分ほどで着く。普段ならどうってことのない地方の小さな無人駅なんだけど、この駅、結構有名なんだよね。
 その理由は、ねこの駅長さんがいるから。
 そう、ねこファンの人なら知ってるよね。マスコミにもかなり取り上げられているし。廃線になる寸前のローカル鉄道を救った招き猫、ねこ駅長ってことで。
 星子、別に猫ファンってわけじゃないけど、ゴンベエとの付き合いはあくまで旅の用心棒という関係だし。でも、ま、旅マニアとしては、ねこ駅長の話題はニュースで聞いたことがあった。だけど、いくら好奇心のかたまりみたいな星子でも、わざわざ出かけていく気持ちにはならなかった。
 その理由は、ごく単純、つまり、いい恋に出会える確率はあまり高くないと思ったから。だって、ねこ駅長見にくる男の子って、つまり、ネコ好きなわけでしょ。ネコ好きタイプは、マイペースの勝手気ままな遊び人、そんな先入観があったからだ。
 え? 自分のことだね、って?
 おだまり! お仕置きだよッ。
 その星子が、なぜ、貴志駅まではるばるやってきたのか。
 そう、そこだよね。
 じつは、愛三四郎という男の子がからんでいるからだった。
 眉目秀麗、沖田総司の生まれ変わりといわれる高校生剣士。女子高生の間でモテモテで、とくにリツ子は超の字が幾つもつく熱狂的なファンだ。でも、だからなんなの。あまのじゃく的性格の星子としては、超モテ男には返って反発してしまう。
 ところが、とんでもないことになった。というのも、星子の分身『星子』が、三四郎に入れ込んでしまったのだ。それも、ミーハーなんて次元じゃない、「食べちゃお」、「グルメしたぁい」。
 『星子』のグルメ、お料理じゃないからコワイ。本家の星子とは正反対、まさに、いんらん少女、そのもの。つまり、グルメの対象は、「オトコ」。そのスペシャル・メニューに三四郎が選ばれたわけ。
 おっと、スペシャル・メニューはもう一品ありました。それは、宙太。星子にいわせれば、なにがスペシャルよ、ただのゲテモノじゃん、ということ。でも、『星子』のほうは、目をエッチ色に染めて――どういう色じゃい――宙太を食べようと狙っている。まさに、サイアク。
 しかもですよ、そのスペシャル・メニュー同士が剣道で試合することになった。
「飛び入りで、師範代やらせてもらえますか」
 宙太、タレメのにっこり顔でいったけど、宙太に剣道が出来るなんて聞いたことがない。相手の三四郎は、端正な顔から殺気が今にもはじけそうな感じだ。見ているだけで、背筋がゾクッと――それがたまらなく、いい……。
 ちょっと、ハナシが違うよッ。
 とにかく、宙太、メタメタにやられるに違いない。出しゃばりには、いい薬かもね。そう思ったけど、読みが違った。
 まず、宙太の剣道着姿の凛々しくカッコいいことったら。三四郎にひけを取らないとくる。さらに、試合が始まると、互角に戦うじゃないですか。
 そう、なに、これ、の世界。
「うーっ、シビレル。さすが、宙太さん、花鳥風月一刀流免許皆伝の腕前ねっ」
 『星子』、うっとり顔でいった。
「は? なんでそんなこと知ってるわけ?」
「この前、宙太さんの部屋に忍び込んだ時、壁に学が飾ってあったのよ」
 『星子』、にんまりと笑った。
 なんてヤツだ、自在に姿を消せるのをいいことに、宙太の部屋に忍び込むとは。
  ま、そのことはあとできびしくいってやるとして、試合のほうは、あれっていう展開になった。宙太、裂ぱくの気合いで三四郎と激しく竹刀で打ち合っていたのに、突然、
「まいった!」
 ガラッと竹刀を投げだし、床に手をついたのだ。
「お見事! まいりました! さすがは高校剣士ナンバーワン、じつに鮮やかな竹刀さばき。恐れ入りました!」
 これには、三四郎も唖然となったのか、竹刀を構えたまま、戸惑ったように立ち尽くしている。
「なにさ、もう! だらしないの、宙太さん」
 『星子』は顔をしかめたが、星子、いまいち、腑に落ちなかった。
 なんか、ワケがありそうだ。きっとね。
 そこで、宙太の様子をうかがっていたところ、マサルがあらわれ、宙太に小声で話しかけた。立ち聞きしようとしたけど、ちょっと近づけそうにもない。すると、『星子』が、「わたしにおまかせ」って合図すると、スイッと二人のそばへ。
 そうか、自在に姿を消すことが出来るんだよね。で、そのあと、話を立ち聞きして戻ってきた『星子』から話を聞くと、
「宙太さんはね、三四郎クンの太刀裁きを調べるために、一芝居打ったらしいよ」
 なるほど。そういうことか。
「でも、なぜ?」
「きまってるじゃん、捜査のためよ」
「捜査って?」
「なんでも、最近、日本のあちこちで辻斬りがはやっているんだって」
 そのニュースなら、星子もテレビで見ていた。
「ということは、つまり、三四郎さんに疑いが……」
「らしいよ」
「で、どうだったわけ?」
「グレーゾーン、つまり、怪しいってこと」
「ほんと!」
「でも、相手は未成年だし、これといった証拠もないし、当分、泳がせて様子を見ようってわけ」
 そういうことか。
 星子、意外な展開に茫然となった。あの超美剣士・愛三四郎に、辻斬りの疑いがあるとは。
 すると、『星子』が、
「ウソ! ありえないよ!」
 ホッぺをふくらませながらいった。
「宙太さん、どうかしてる! 絶対に、あり得ないから!」
「でも、太刀裁きが似てるって」
「そんなこと、証拠にならないの! あんな綺麗な顔した子に、人殺しが出来るわけないじゃん! 私のこの目に狂いはないから!」
「そんなぁ……」
 そういう理屈は通用しない、と思うけど。
「お黙り! こうなったら、わたし、三四郎クンを守ってやる! しっかりと守って見せるからね!」
 そういって、『星子』、パッと体を翻した。
 やれやれ、わたし以上に思いつめちゃうんだから。といっても、あいつもわたしの分身ではあるんだよね。
 そうなると、ほってはおけない。『星子』がバカな真似しないように、しっかりと見張らないと。でも、自分で自分を見張るなんて、おかしな話だけどね。
 そして、その翌日、三四郎は全国高校生剣道選手権に出場するため、三四郎、会場へ向かった。会場は大阪のシンボル、大阪城近くの体育館だ。
 試合は明日からだし、さぞかし練習で大変だろうなと思ったら、三四郎、途中でこっそりと抜け出してお出かけだ。もちろん、『星子』も姿を見せないまま、三四郎にピタリと付き添っている。一体どこへいくつもりなんだろう。
 ということで、たどりついた所が、ここ、ねこステーションだった。
 なぜ? なぜ、ねこステーションへきたわけ?
 星子、そう思いながら、三四郎の姿を目で追った。
 
 
                         (つづく)
 
 
追記  ネットのニュースで知ったんですが、今月十二日に貴志駅で不審火があったとか。幸い、ボヤ程度でねこ駅長も無事だったとか。やれやれでした。
 ところで、一応、第二話の三四郎編をスタートさせてみました。この先、どうなることか、ニャンともわかりませんが、よろしくです。
 
 

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