星子&宙太yyy

ファンの集う癒しの小部屋です。

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            第四部

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 ――亜利沙さんから電話が……。
 亜利沙さんは右京さんのフィアンセだ。しかも、宙太さんの話だと右京さんがからんだ殺人事件に関係があって、現在、行方知れずになっているとか。 
星子、汗がにじんだ手で携帯電話を握り締めたまま、茫然と立ち尽くしていた。
 その星子を、春之介がけげんそうに見た。
「星子ちゃん、どうしたの? 電話、誰から?」
「亜利沙さんって人……」
 星子、そっと耳打ちした。
「えっ」
 春之介の表情が、サッとこわばった。
星子、乾いた唇をなめると、携帯電話を握り直した。
「そ、それで、あのぅ……」
 声がかすれて、うまくしゃべれない。
 すると、
「ごめんなさい、突然、電話をかけたりして……」
 亜利沙の声が、ためらいがちに聞こえてきた。
「あなたの電話番号、右京さんのケータイの電話帳にのっていたから……ほんとは、あなたに電話をかけたりしたら、右京さんに叱られるかもしれないけど……でも、どうしても、あなたに助けて欲しくて、それで……」
「助ける?」
 思ってもいない言葉だった。春之介も聞き耳をたてるように顔を近づけた。
「どういうことですか、それって?」
「それが、右京さん……じつは……死にそうなの……」
「えっ」
 亜利沙の声、最後は涙声になっていた。
 星子、春之介と顔を見合わせた。
「死にそうって……」
「体の具合がひどく悪くなって、食べるものも全然受けつけなくて……それでも、ピアノを……あなたのために弾くんだって……」
「!……」
「でも、これ以上つづけるのは、無理なんです。このままでは、命が……でも、いくら、あたしが止めても、右京さん、聞いてくれなくて……」
 亜利沙の声、最後のほうは泣いていた。
 ――この前、ケータイから聞こえてきたピアノの調べ……あれは、右京さんが命を削りながら弾いていたんだ……星子ママ、ううん、三年後のわたしのために……。
 そこまで星子のことを愛してくれている右京。そして、その右京を探し求めて、家族を捨ててまで旅に出た星子ママ。
 星子、胸の中が切ない思いでいっぱいになった。でも、正直、今ひとつ、実感がわかない。なぜ、そこまで激しく愛し合うのだろう。いくら三年後の自分のことだといっても、他人事のようにしか思えなかった。
「でも、助けるといっても……」
 星子、戸惑い気味にいった。
「わたし、どうやったら……ね、どうしたらいいんですか?」
「ピアノを……とにかく、ピアノを弾くのをやめさせて欲しいの。それには、あなたが右京さんに会うしか……」
「わたしが?」
「ええ、それしかないのよ。お願い、星子さん、会ってやって!」
「……」
「右京さんだって、ほんとはあなたに会いたいはずよ。でも、宙太さんや双子ちゃん達との暮らしを壊すわけにはいかないって、それで、あなたへの想いをせめてピアノに……」
「……」
 なんてやさしい人なんだろう、右京さんって。あの貴公子然とした端正で冷たい顔立ちからは、想像も出来ない。
「ね、お願い、星子さん、今すぐ会いにいってあげて!……」
 亜利沙の少し上ずった声が、携帯電話から流れた。
「あなたの気持ちも考えないで勝手なことばかりいってごめんなさい。でも、あなたしか右京さんを救えないの。あたしには、どうすることも……」
「……」
 亜利沙の声には、悔しさと悲しさがこもっている。たしかに、フィアンセなのに右京を助けられず、星子に代わりを頼むなんて、きっと、つらいことだろう。その気持ち、わかってあげたい。助けにいってあげたい。でも、はっきりいって、それは無理だ。
 だって、右京さんに恋しているのは、三年先のわたし。今のわたしは、右京さんに特別な気持ちは抱いていない。たとえ右京さんに会っても、形だけの看病で、心を通わせることは出来ない。
 だったら、一刻も早く星子ママを見つけて、右京さんに会いに行かせるしか……だけど、光の壁に閉じ込められた星子ママをどうやって助け出せるわけ。
 それにですよ、右京さんは殺人事件の容疑者の可能性もあるし、下手にかかわると、とんでもないことになりそうだ。
 無理、絶対に無理ですっ。
 星子、きっぱりと亜利沙にいった……つもりだった。だけど、声にはならなかった。それどころか、まるで、反対のことを口走っていた。
「わかりました、わたしでよければ」
「星子ちゃんっ」
 聞き耳を立てていた春之介が、ハッと星子を見た。
「ほんと? ほんとにいいの、星子さん?」
携帯電話から、ホッとした亜利沙の声が流れた。
「は、はい」
「有難う、星子さん!」
「いいえ、当然のことですから」
 なんて、いっちゃって。  
ああ、わたしって、どうしてこうなのっ。
おせっかいのオッチョコチョイ。もう、サイアク。
ちょっと自己嫌悪になったけど、困った人をほっておけないのが、わたくし、星子のトレードマークとでもいいますか。考えてみれば、未来っていうか、自分の将来がからんだ話ときては、なおさらだよね。
それにね、この際、ハッキリいっておきますけど、わたしとしては、星子ママの生き方には、絶対ハンタイ!
さっき、わたしを星子ママと思って笑顔で迎えてくれた双子ちゃんを見て、わたし、はっきりとわかった。
そりゃ、愛とか恋は大事よ。わたしの生きがいだもんね。だからって、宙太さんのようないいご主人と双子ちゃんのようないい子たちを捨ててまで右京さんのもとへ走るなんて、しかも、亜利沙さんというフィアンセもいるじゃないの。亜利沙さんが今どんなにつらい気持ちか、電話の声を聞いているだけでもよくわかる。その声で、もっとはっきりと気持ちがかたまった。
右京さんを恋するなんて、いけないこと。
というより、許せないっ!
もう一度、いいます。ぜったいに許せません!
恋していい人と、恋してはいけない人がいる。我慢しなきゃいけない時は、歯を食いしばっても、大泣きしても、大食いしても、はん? とにかく、ガマン、我慢だぜ、星子ォ!
ゼェゼェ、ハァハァ。
なんのこっちゃ。
ま、それはともかく、右京さんを救うことは、亜利沙さんのためでもあり、結果的には星子ママのため、わたしの将来のためにもなる。
だって、亜利沙さんと右京さんの仲がもとに戻れば、星子ママも光る壁の中から出られるかも……そんな気がする。
だって、この前、春ちゃんがいってたよね。
星子ママから、春ちゃんのケータイに、「恋してはいけない人を恋したために、バチがあたったのかも」って、いってたそうだし。
もし、そうだとしたら、星子ママも右京さんのことをあきらめて、宙太さんや双子ちゃんのもとへ帰れるはず……ううん、絶対に、帰らせてみせる。
きっとね。
「それで、右京さん、今どこにいるんですか?」
 星子が聞くと、亜利沙、
「電話じゃいえないわ。あたしが案内するから。待ち合わせ場所は、新宿駅の10番ホームで、時間は今夜の七時五十分……」
「えっ」
 星子、腕時計を見た。今、六時四十分だ。急げば間に合うけど、パーティには出れなくなる。双子チャンがあんなに楽しみにしているのに。また、すっぽかすことになるかも……でも、これも双子ちゃんのため。あとで謝ることにして、
「分かりました、すぐ、いきます!」
 そういって、ケータイを切ると、春之介に、
「春ちゃん、お願いっ」
「……星子ちゃん……」
 春之介、一瞬ためらったけど、水晶玉を手に頷いた。
「あなたの気持ちは、読ませて貰ったわ。そうよね、それしかないわねぇ」
「春ちゃん」
「いいわ、あとのことはうまくいっておくから、すぐ出かけて」
「有難う! でも、宙太さんにはホントのことを……」
「ダメダメ、宙太さんは刑事よ。今、マサルさんと一緒に、容疑者の右京さんを探している最中じゃないの!」
「!……」
 そうか、そうだった。
 いくら宙太さんでも、仕事は仕事。星子の思うようにはさせてくれないだろう。
 ごめんなさい、宙太さんっ。
 星子、心の中で宙太に詫びながら、パッと飛び出していった。


                (つづく)



追記 やっとこさ、第四部の始まりです。よろしくお願いします。それにしても、毎日寒いですね。くれぐれも、体調管理には気をつけて。

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