星子&宙太yyy

ファンの集う癒しの小部屋です。

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「いやぁ、宙美さんが来ているとは思わなかったよ」
 古賀、笑みを浮かべながらいった。
 外科レジデント、古賀采女。29歳。
 国立医大で開校以来の秀才という肩書きにふさわしく、気品と知性にあふれた顔立ちだ。背丈は185センチほど、白衣を着た姿はスーパーモデルのようにスリムで、アスリートのように筋骨がたくましい。男も一目惚れするほどの美形タイプだった。
 星丸もスリムな貴公子で秀才タイプの美形だが、采女には星丸にない明るさと積極性、そして、社交性があった。
「あ、どうも……」
 ちょっと妖しげな雰囲気のところへ、いきなり入ってこられて、星丸も宙美も一瞬うろたえてように視線を泳がせた。
「ん? どうした、二人とも。いたずらを見つかった子供みたいな顔をして」
「あ、いえ、ちょっと……」
 星丸、メガネを直しながらいった。
「宙美のやつ、明日の結婚式がうまくいくかどうか、心配だって……なんせ、もの凄い大物が大勢お祝いに来てくれるわけですから……」
 それは、事実だった。宙太パパの関係者だけでも、警視総監にはじまって、警察関係、検察庁関係、弁護士関係、それに、もちろん、マサルや春之介をはじめとする星子ファミリーの面々、さらに、宙太の親族、星子の親族等々、ずらりと勢ぞろいだ。
 でも、采女のほうはもっとすごかった。医大関係者は勿論のこと、采女の父が全国展開で病院を経営する、いわゆる医療法人のトップということもあって、医療、薬剤関係、そして、政財界のトップクラスが列席する予定だ。
 その顔ぶれをみると、さすがの星丸もびびりそうだった。
「大丈夫、その心配は無用だ」
 采女、宙美に近づくと、やさしく宙美の肩を抱いた。
「僕がついているから。君は、ジャガイモ畑にいるような気分で、のほほんと……あ、ジャガイモはいい過ぎかな」
 ふっと笑った顔には、明るさと自信が満ち溢れている。
「でも、ちょっと意外だったな」
「え?」
「君には星子ママ譲りの度胸と好奇心とバイタリティがあると思っていたし、そこに僕も惚れたわけだけどね。案外、普通のお嬢さん的なところもあったわけだ。ま、あらためて、惚れなおしたってところかな」
「あ……」
 宙美としては、そうはっきりといわれると、照れてしまう。 
 星丸には、思ったことをズバズバといえる采女が羨ましかった。
「そうそう、新婚旅行だけど、やっぱり、宙美さんがいきたがっていたシシリー島にもいくことにしたから」
「でも、日程が無理だったんじゃ……」
「それがね、早乙女教授が特別に時間を下さったんだ。結婚プレゼントだって」
「ほんと!」
「そのかわり、うんと君を可愛がってやれってさ」
 そういいながら、采女はさらに強く宙美を抱きしめた。
「どうせ、帰国したら、難しい手術がいくつもあるし、病院に缶詰だしね。ちちゃんと考えてくれてるんだ、教授もさ」
「うれしい!」
 宙美、はしゃぎながら采女に抱きついた。
 さっきまでの宙美とは、まるで別人のようだ。見ている星丸には、ちょっと戸惑う一方で、寂しいような気持ちになる。
「もうじき家に帰るけど、よかったら送っていこうか」
「ええ、お願い。兄は今夜、徹夜になるみたいだし。そうよね、お兄ちゃん?」
「あ、うん、そう、送って貰え。お願いします、センパイ」
「オーケー! あ、そうそう、肝心なこと忘れてた。な、美空、お前、早乙女教授のチームに入れることになったから」
「えっ、ほんとですか!」
「よかったわね、お兄ちゃん! これも、古賀さんのお陰ね!」
「うん! 有難うございました、センパイ!」
「なぁに、お前の実力なら当然さ。とにかく、頑張れよ。いいな?」
「はいっ」
「じゃ、いこうか、宙美さん」
「ええ!」
「お先に」
「お疲れです!」
 宙美の肩を抱いたまま、采女は出ていった。宙美も、采女に甘えるようにしなだれかかっている。その後ろ姿には、もう、星丸のことなど眼中にないようだった。
「……」
 見送るうちに、星丸、ふいに寂しさがつのってきた。
 ……なんだったんだ、さっきのことは。「お嫁なんかに行きたくない、ずっと、お兄ちゃんのそばにいたい」っていっていたはずなのに……。
「ま、いいか」
 星丸、気持ちを払いのけるように息を吐いた。
 これでいいんだ。所詮、兄妹の関係だし、それ以上、踏み込むことは許されない。
 とにかく、宙美が幸せになってくれれば、それでいい。それに、僕は古賀さんのお陰で、あこがれの早乙女教授のチームに入れる。世界でもトップクラスの外科医である早乙女教授のチームに。
 そう思って、何とか気持ちを前向きにしかけた時だった。星丸のケータイに着信があった。
 相手は、外科病棟の若い看護師・河合好恵からだ。何度か、研修の際に一緒だったし、顔も名前も覚えていた。大人しくて目立たないが、真面目でよく働く看護師だ。
「もしもし、河合さん? どうしたの、こんな時間に?」
「ごめんなさい、ちょっと……」
「ん?」
「あ、あの、古賀先生、まだ、そちらに?……」
「いや、今さっき、帰ったけど。用事があるんなら電話したら?」
「いえ、いいんです。それより、美空先生に大事なお話が……」
「僕に大事な話? どんなことだい?」
「……」
「もしもし?」
「……明日の結婚式、やめさせて……やめて下さい!」
「なに?」
「さもないと、先生の妹さんが……」
「宙美が?」
「ええ、だから、絶対に、やめさせて! お願いです! お願いします!」
 ケータイから、河合好恵の必死に叫ぶ声が流れてきた。
「!……」


                        (つづく)



追記  どうも、とんでもない展開になってしまいました。あと、よろしくです。それにしても、今夜は本当に冷えますね。
 

 
  

 

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