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「……」
星丸、ケータイの画面から視線をそむけた。とてもじじゃないが、まともには見られない写真だ。
尊敬する古賀先輩が、しかも、可愛い妹の宙美のダンナさまになってくれる人だ。その古賀さんが、男ナースの山田とボーイズラブを……信じられない、古賀先輩に限って、絶対にあり得ない、絶対に!
人違いか、それとも、細工されたものじゃないのか。そうであって欲しい。
でも、河合好恵が送ってくれた写メールは一枚だけじゃなかった。他にも、夕暮れの海岸で古賀先輩と山田が抱き合っている写真とか、キスしている写真など何枚もあった。
「古賀先生が付き合っていたのは、山田さんだけじゃないんです」
河合好恵の声が、ケータイから聞こえてきた。
「他にも、何人も……ゲーバーの男の子とか、製薬会社の営業の人とか、医大の学生さんとか……」
「……」
「でも、その中で山田さんが一番、古賀先生のことを……でも、その先生が結婚するとわかって、先生と大喧嘩に……山田さん、泣きながらこういってました。絶対に、結婚させない、みんなに僕達のことをばらしてやるって……その日の夜遅くです、山田さんが死んだのは……」
「……」
「きっと、古賀先生が口封じのために山田さんを……きっと、そうです!」
「……」
「そんな恐ろしい人が、妹さんの御主人になるなんて……あたし……」
「や、やめろ!」
星丸、声を震わせながらいった。
「もう、たくさんだ! 聞きたくない! 僕には、信じられない!君の話もこの写真も、みんな、出鱈目だ。きっと、そうだ!」
「先生っ」
「それより、君、自分が何をいってるのか、なにをやっているのか、わかっているのか! 人をそしり、おとしめようなんて、人間として最低のことじゃないか。そうだろう!」
「……」
「おい、君! 聞いてるのか! 河合君!」
「……愛してますっ……」
「なに?」
ケータイから、河合好恵のすすり泣く声が聞こえた。
「あたし、美空先生のこと、ずっと以前から……大好きでした。死にたいくらい……」
「君っ」
思いもかけない告白に、星丸、茫然となった。
「あたしを嫌ってもいい、無視しても構いません……どうせ、先生には不釣り合いな女ですから……でも、先生のことを想う気持ちに嘘は絶対に……ほんとです、信じて下さい……だから、先生の妹さんが不幸になるのを、みすみす黙っていられなくなって、古賀先生のことを調べていたんです……それだけですから!」
「君……」
「ごめんなさい、もう、二度とこんなことしません、許して下さい……許して……」
そういって、好恵の電話は切れた。
「……」
急に息苦しくなって、星丸、窓の前に走った。
窓を一杯に明け放って夜風に当たっているうちに、やっと五感が戻ってきた感じだ。
――河合好恵のいっていたことも、送られてきた写メールも、すべて本当だ。間違いない……。
そうなると、結論は一つしかない。
宙美を、結婚させてはいけない! 人殺しなんかと、絶対に結婚させるわけにはいかない!
星丸、キッと顔を上げた。
――でも、どうやって? 宙美はあんなに古賀を愛している。それに、パパやママだって、いや、みんながこの結婚を祝福してくれているんだ。
どうする? どうしたらいいんだ?
どうしたら!
(つづく)
追記 いやはや、もう、なんともおぞましいことに。続きを書くのが、恐ろしいです。
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