星子&宙太yyy

ファンの集う癒しの小部屋です。

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「……」
 ――甘い薫りが……香水かな、すごくいい薫りだ……。
 星丸の朦朧とした意識が、次第にはっきりとしてきた。
 ――この香水の薫り、どこかで嗅いだような気がするけど、思いだせない。頭の中が石を詰められたように重いし、時々、針を差し込まれるように痛くなる。
 ――もう少し、寝ていたい、もうちょっとだけ……。
 いや、それどころじゃないぜ。ボクは、今、とんでもない目に!
「う、うわーっ」
 星丸、大声を上げながら飛び起きた。
 ん! 声が出る。それに、体も自由に動く。気を失うまでは、声も出ないし、石膏で固められたように指一本動かなかったのに。
 裸のままだが、毛布がかけられている。
 ベッドの隣りには、古賀の姿はない。赤いローソクの火も消えている。
 まさか、すべてが終わって、つまり、思いのままにいたぶり、弄び、凌辱のかぎりとやらをつくしたあと、満足しきってベッドを離れたのでは……。
 星丸、あわてて下半身へ手をすべらせた。
「……」 
 指先は乾いている。乱暴された形跡は、ない。それに、痛みもまったくなかった。
――どういうことだ、あの時、失神しながら、もう駄目かと思ったのに。古賀先輩、途中で気持ちが変わったのか……。
 星丸が首をかしげところへ、
「気がついた、星丸クン?」と、背後で声がした。
「!……」
 春之介の声だ。でも、まさかそんな、と、思いながら振り向くと、間違いない。春之介が微笑みながら立っている。金髪の髪と真っ赤なルージュ、全身真っ黒なレザースーツ、編上げの黒の長靴がぴたりときまっていた。
 年齢と共に、一段と妖艶さが増したその肢体から、妖しい薫りが漂ってくる。
 ――そうか、さっきの甘い薫りは春ちゃんのつけてる香水だったっけ……。
「危ないところだったわね」
 春之介、星丸の服や下着を差し出しながらいった。
「もうちょっとで、あいつの餌食になるところだったわ」
「じゃ、春ちゃんが?」
「ええ、間一髪、助けたってわけ」
「そうか! ありがと! ほんとに、有難う!」
 星丸、春之介の腕を掴んで涙ぐんだ。
「礼なんか、いいのよ。あたしの一番大事な仕事は、あなたと宙美ちゃんを守ること。昔も今も変わらないわ」
「春ちゃんっ」
 そう、春之介は星丸と宙美がまだ幼い頃から、星子ママや宙太パパに代わっていつも守ってくれてきた。
「でも、春ちゃん、どうしてここがわかったんだい?」
「きまってるじゃない、同類のカンってやつよ」
「同類?」
「つまり、古賀センセとあたしは同じ趣味だってこと」
「!……」
 そういえば、そうだ。春之介はその道のベテランだった。
「あたし、一目古賀センセを見た時から、ピーンときたの。このヒト、相当なもんだって。それもよ、星丸クンを見つめる時の目の輝きったら。こりゃ危ないなって、ずっと気をつけてたの。そうしたら、案の定、今夜オオカミさんに早変わりして牙をむいた……ってわけ」
 そうだったのか。
「で、古賀先輩は? 今、どこにいるんだ?」
「ここよ」
 そういうと、ベッドの下から、シーツでしっかりと全身を巻かれた古賀を引っ張りだした。口にはガムテープが張られ、目は怯えきっている。
「き、貴様ぁ!」
 屈辱と怒りが一気に込み上げ、とびかかろうとした。
「あ、ダメダメ」
 すかさず、春之介が星丸を制止した。
「お持ち帰りなんだから、このヒト、あたしのね」
「え? お持ち帰り?」
「そうよ、うちへつれていって、とことん、可愛がってあげるの。大先輩のラブ・テクニックをフルコースで使ってね。絞って絞って、ミイラになるまで、しっかり吸い取ってやるわ。そのあと、警察に送り届けてやる。うふふふっ」
 春之介、意味ありげに唇をすぼめながら、艶然と笑った。それこそ、夜叉のような顔だ。こんなに凄味のある春之介の顔を見るのは、初めてだった。
 古賀のほうは、恐怖で今にも泣きだしそうだ。
「さ、あとはあたしにまかせて、あなたは宙美ちゃんのところへ帰ってあげて。心配して待ってるから」
「でも、宙美もショックだろうな……」
 明日の結婚式は中止になるし、古賀は殺人の罪で逮捕だ。
「大丈夫よ。宙美ちゃんには、ステキな花婿さんがいるんだから」
「花婿? だ、誰のことだい!」
 聞き捨てならない、話だ。
「きまってるでしょ。それはね……」
 春之介、星丸を見据えた。
「あ・な・た・よ。星丸クン」
「え、えっ」
 星丸、ムッとなった。
「こんな時に、からかわないでくれよっ」
「からかってるんじゃないの、ほんとの話」
「でもね、僕と宙美は血のつながった双子の兄妹なんだぜ。結婚出来るわけがないだろう!」
「そう思う?」
「なにが?」
「血を分けたほんとの兄妹だと、本気で思ってるわけ?」
 春之介、瞬きもしないで、じっと星丸の目を覗き込んだ。

                         (つづく)


追記  お騒がせしております。次回は、とんでもないエンディングが待っております。よろしくです!
 
 ほんとに、寒い一日でした。どうか、風邪などひかないようにね。
 

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