|
圭一さん、今年もお彼岸参りの日がきました。お中日の今日、わたし、お供え花と檸檬を胸に抱きしめて、海が見えるお花畑に佇んでいます。
ほんとはあなたのお墓にお参りしたい、墓前にお花を飾り、檸檬をお供えしたい。そう、あなたは檸檬が好きだと言っていた。
酸っぱくて、口の中がしびれそうな檸檬。トパーズのように光り輝く檸檬。
二人で北の大地を旅している時、あなたは真っ青な青空を背に、まっ黄色な檸檬に齧りついていた。何かを、じっと耐えているように、黙々と、ただ、齧るだけ。
檸檬には、きっと、あなたの魂がこめられているんだなって、わたし、あなたの横顔を見ているうちに泣いてしまった。
その檸檬をあなたの墓前に、と思っても、あなたのお墓がどこにあるのか、わからない。あなたの遺骨は誰にも引き取られず、無縁仏となって共同墓地に預けられたとか。でも、半年後、小雪と名乗る女の人が引き取りにきたそうですね。
宙太さんが一生懸命調べてくれたけど、小雪という人の行方はわらずじまいとか。
でも、あなたのお墓が見つからない方がい。だって、まだ、あなたが生きているような気がするから。
あなたが、彼岸の国へいってしまったとは思いたくない。こうしてお花畑に立っていると、今にも、あなたがのっそりと現れるような気がする。
「星子さん」って、私の名前を照れくさそうに呼びながら……。
……逢いたい、もう一度……圭一さん……。
宙太より
ここだけの話、ふと、思う時があるんだ。星子さんって、ほんとは、右京君よりも圭一君を愛しているのかもって……でも、違うかな……。
僕の名前が出てこないのは寂しいけど、星子さんのためなら、僕は、恋の黒子に徹しよう。
恋するチャップリン宙太!
一人泣くピエロ……宙太……。
でも、幸せさ、愛する人がいるんだから。何よりの不幸は、愛する人がいないことだ、と思うから……。
追記1 星子は、ほんとは宙太から圭一の墓に案内されている。でも、圭一に甦って欲しいという思いが強くて、墓の存在を否定し続けるうちに、墓の場所の記憶が消えてしまった……そう解釈して下されば幸いです。
追記2 川べりの桜の蕾が、ほんの少し桜色に……のどかな、お彼岸のお中日でした。
|